第四十四話 炸裂毒
―――走馬灯はどういう時に見るのか。
たいていの場合は、その死の間際に見ることが多い。
そして今、異土もまたその走馬灯を見…
「って、そんなことになってたまるかぁぁ!!エリーゼお手製道具『炸裂滅菌玉』!!」
ドボォォォォォォンン!!
【ギノッゴォォォォウウ!?】
…ばくんっと、音を立てて、何か巨木のようなものに、飲み込まれかけた。
だがしかし、こういう手を使ってきてなおかつ、この状況下であればやってきた相手はパラサイトノッコリスであり…本人が、いや、本モンスターが直接喰らおうとしているのであれば、事前に対策として仕込んでおいた、この極悪な滅菌兵器…本来はしつこいカビも根絶させるという強力な薬をたっぷりと周囲に炸裂するようにしたお掃除道具ではある。
とはいえ、掃除道具用からさらに濃厚なものにしているので、モンスターではあるが同時に寄生するキノコ…菌類のために、効果は抜群だったようだ。
「ごえっふ、げほっつ…でもっつ、ぎっづ…!!」
周囲の空間は確保できたとはいえ…それでもどうやら、この場所そのものを壊滅させることはできなかったようだ。
きっついカビ〇ラーのようなにおいや、この場所に広がる胞子のような何かでせき込みつつ、異土は見渡して確認する。
…見渡す限りぶよぶよとした気色悪い物体で、空気自体も淀み過ぎている。
いや、恐らくはパラサイトノッコリスの中なので…この内部には、まともに人が呼吸できるような場所はないと考えたほうが良い。
(…このローブに、酸素ボンベあって良かった)
水中戦を想定…いや、配信用に水中撮影はそうないとはいえ、それでも用意してあって助かった。
少なくは無い胞子の吸引をしてしまい、中で発芽されているような気がしなくもないが、状況の悪化を避けるのならばまだ良い方と言うべきか。
(エリーゼ…サクラ‥‥後他の皆とは違って引き剥がされたのを見ると、狙われたか)
お世辞にも、異土の容姿だけを見て強者とは思えず、弱い相手と見て狙った可能性はある。
はたまたは、パラサイトノッコリスが何らかの手段で情報を収集し、エリーゼたちに指示を出している者を見て、頭を狙ったと考えても…他にも様々な可能性が出てくるが、考え込んでいてもきりはない。
今はこの場所から脱出するためにもどうにかしなければいけない。
異土が内包されている状態なのは、既にわかっていることだろう。
だからこそ、外部からの攻撃がやりにくくなるのは目に見えており…早めに出たほうが良い。
だがしかし、そうたやすくは進ませてくれないのもわかっている。
【ギノゴゴゴゴゴ!!】
【ギノゴリアァァンッツ!!】
「っ…内部にも、寄生キノコを生やして押しつぶそうとしてくるか」
寄生することを生業にしている者にとって、自身の中にも自分自身を増やすような真似は容易い事であり、内部で暴れようとする異土を抑え込もうとして手駒を差し向けるのは当たり前のことだろう。
寄生キノコを異土自身に生やして無力化させてくる可能性もあるが…幸い、先ほどぶちまけた滅菌道具の効果が残っているせいか、すぐに寄生されることもない。
時間の問題かもしれないが、それでも抗えるのならば抗えるだけ、やってしまえばいい。
「…寄生生物の中なら、毒をぶちまけてじわじわと狙うのもありか」
あのアラクネが残したドロップアイテム…タラテクトナイフを構え、異土はそうつぶやく。
毒のエンチャントや糸による遠隔操作の効果は、大きな相手にとってはそこまで効果が見込めない。
それでも0ではなく、じわりじわりとわずかながらでも影響を残すことができれば儲けもの。
【ギノオオオオオオ!!】
「えい!!」
一体が飛び掛かってきたところで、ブーツの加速装置を稼働させ、瞬時に切りつけ、まずは一体消し飛ばす。
【ギノッボツ!?】
「…あ、ドロップアイテムも出てくるのか。巨大シイタケ…キノコのモンスターだからかな?」
倒せばボウンっと、ドロップアイテムがでてくるようなので、この寄生キノコ一体一体が別々のモンスターにでもなっているのだろうか。
でも、そうだとすると別の嫌な可能性も浮かんでくる。
「…ドロップアイテムだらけにして、身動き取れないようにする狙いもありそうだな」
キノコのドロップアイテムに埋もれての、圧死の危険性…それも警戒しなければいけない。
先日の、エリーゼの胸に挟まれての乳窒息死のような事態とはまた違うが…うん、あれは考えるのをやめておこう。
サクラもでかいので二人の間に挟まれての可能性も無きにしも非ず…いや、本当に無いほうが良い。そのために、このフードに水中戦以外の目的も含めた呼吸機器関係の道具を仕込んでもらったのは黙っておきたい。
とにもかくにも、エリーゼたちがこのパラサイトノッコリスの元へたどり着いて、何も考えずに攻撃できるように、この中からの脱出を異土は目指すのであった…
キノコの中、体内ステージ的な…
いや、どうなんだろうか、その言い方は
そう考えつつ、次回に続く!!
…情けない死因を作りたくはないので、色々作ってもらっていたりする




