第四十三話 奪う者
…ゴリラの進撃、炎での焼き払い、菌糸を排除する除菌…状況一つで色々とカオスなものなのだろう。
「でも状況としては、好転していないか」
「くっ、向かえば向かうほど…マザータラテクトだけに、重要なモンスターの元にはその分手下も多いか…!!」
「ゴリラたちも、無限じゃないし…ちょっとやばいかもね」
【うぇぇ…ベッドべとする粘液の糸が気持ち悪い…】
アラクネの託した情報をもとに、異土たちはアルゴニアの奥へと進んでいたのだが、道中出てきたのはパラサイトノッコリスの手によって寄生されまくったモンスターたち。
数が多く、油断すれば胞子をまき散らして寄生を狙い、その対処に手間取らされていたが、それでもどうにかここまでやってきた。
「そしてこの大扉が…」
【間違いないでしょウ。ダンジョンの最奥部にある、ダンジョンを形成する核となるダンジョンコア…その守護を任された『ラストガーディアン』がいると呼ばれる階層の印デス】
ダンジョンが形成されゆく中で、確認されているダンジョンコア。
モンスターの魔石同様に、ダンジョンにとっての命と言われているような代物であり、破壊すればそのダンジョンは崩壊するもの。
しかしながら、そう簡単に破壊されないようにするためにか、ダンジョンコアの守護者と言うべき強大なモンスターが常駐しているとされる…ラストルームと呼ばれる場所が、この大きな扉の向こう側に存在している。
なお、ダンジョンから出土する様々な資源の影響で、基本的には破壊しなくなっており、配信者たちでもダンジョンが飯のタネになっている人もいるせいか、ここまで来るような輩はなかなかいない。
強さを求めるだけの、配信者であれば挑む者もいなくはないというが、ダンジョンの命と言うべき場所を守るからこそ、桁違いのやばい強さを持つラストガーディアンと呼ばれるモンスターたちが、容赦なく叩き潰すからこそ、その情報も少ないが…
「よりにもよって、そのラストガーディアンにあたるマザータラテクトに寄生しているとなると…生半可な方法で討伐は厳しいか」
「絶対に面倒な状態になっているのが目に見えるな」
寄生生物が、強い生命体に寄生すればその力を利用するのは明らかすぎる。
アラクネの話ではすでに大木と化しているらしいが。そこまで成長したパラサイトノッコリスを撃破できるものなのだろうか。
「一応、寄生キノコとは言え、モンスターの分類は間違いなくあって、魔石があるからそこを狙えればベストだけど…」
「たいていの場合、寄生対象の心臓部に潜り込んでいると聞く。特に巨木となれば」
「その深さまでに刃が届くかと言えば…」
かなり無理に近い。
だがしかし、やれないこともない。
「最終手段がエリーゼのカノン砲…だけどダンジョン崩壊のリスクが大きいから」
「我々戦隊の最終必殺技も手だろう。今こそ魅せるフェニックス…」
「いや、単純に火力をぶつけるのは不味くないか?」
「虫博士、何か懸念でも?」
パラサイトノッコリスに対しての攻撃手段に関して話し合う中、ふと出てきた意見。
火力でのごり押しならば、この面子だと結構いけそうだが…それが危険な可能性もあるのだとか。
「粉塵爆発…もしもやつが大量の胞子を蓄えていたのならば、着火時に…いや、単純に爆発しないかもしれないし、この湿度では不発するかもしれないが、下手な刺激を与えない方法も模索したほうが良いのではないか」
「言われてみれば確かに、その可能性もあるか」
アラクネの話の時点で巨木のようになっているというが、その分大量に寄生用の胞子を蓄えている恐れもあるのだ。
「エリーゼ、胞子が爆散した時の対策で、全部吸い込む掃除機の機能とかはないのか?」
【えっと、確かこのあたりに某星の戦士ばりの吸引掃除機は…】
【あるのかよ】
ごそごそとそんな該当するものがまさかあるのかと言わんばかりに、ポケットを探るエリーゼ。
これで一応は、万が一の対策を立てられるかと思っていた…その油断がいけなかった。
ひゅんっ
「ぐえっ!?」
【ご主人様!?】
ぐいっと何かに引っ張られて、異土の体が宙に飛ぶ。
何事かと思い、直ぐ様エリーゼが手を伸ばすが、あと一歩で届かない。
【なんの、こっちの尻尾で!!】
距離を稼ぐのならば、サクラの蛇の体のほうが向いている。
素早く体の向きを変えて伸ばすが…
【っ!!】
【ギノゴグモォオオオオ!!】
どこからともなく、天井から降り立ったのか大きな蜘蛛のモンスターが間を遮り、邪魔をする。
「体引っ張られ…糸か…!!」
空中ではなすすべもなく、まるで蜘蛛の糸が服に縫い付けられたように引っ張られて、そのまま異土の身体は宙を舞って扉の先に先へ入り込む。
見ればその室内には大量の蜘蛛たちと、巨木よりもはるかに大きなキノコが生えており、その一部が割けて糸がつながっている。
「まさか、このまま飲み込む気かよ!!」
あの中へ、引きずり込む気なのが目に見えてわかるだろう。
どうにかナイフを使って糸を切ろうとしたが、間に合わず‥
―――バクンッツ!!
‥キノコは捕らえた、獲物を
メイドは奪われた、主を
さて、それがどのような結果になるかは…
次回に続く!!
…乾燥ぴりぴりする




