第三十七話 不快度数はどれほどか
―――中級ダンジョン『アルゴニア』。
ここは本来であれば、蟲が…主に蜘蛛の類のモンスターが巣食うダンジョン。
そのため、中に入れば蜘蛛の巣ばかりのはずだが…
「うえぇぇ…じっとりしている…」
【不快度数80%越え…かなり高いですネ】
「おかしい、やけにここまで湿度があるとは」
「蜘蛛の糸も、ばらばらと言うか…」
中に入り込んで早々、じっとりとした感触が満たされていた。
単純な湿り気とは違う、粘り気の溢れるような不快感。
こんな場所だったのかと思ったが、何度か入ったことがある他の経験者…特に戦隊ものの衣装を色々と作っているらしいモンドランズの者たちからしても、まったくの別物と言う感覚があるらしい。
「蜘蛛怪人は戦隊ものの定番の一つ…それゆえに、何度か潜ったことがあるが、そのときはまだすきっとした感じの空気だったぞ」
「蜘蛛系モンスターは罠を張る都合上、実は結構周囲の環境を気にするからね。手入れをして風通しが良かったりするんだよ」
「それなのに、この湿度はおかしいと…」
行方不明者が出ている場所だが、もうこの時点で怪しさしかない。
だがしかし、どうもギルドの方で手に入れた行方不明者が出るまでの間の状態を見ると、この湿度に関しての報告もないようで、急激に上がったと考えるほうが良いだろう。
【…うぇ、暖かい方が戦いやすくもあるが…不快なのもきつい】
「アイアンナーガ…蛇の類ならこの暑さも強さそうだけど」
「それでも、湿気の不快さはきついか」
気温が高いのならばサクラの動きが向上するらしいが、この不快感だと逆にダウンしているらしい。
と言うかむしろ、これはただの不快な湿度でもないらしい。
【…ちょっと嫌ですネ。ご主人様、計測したところ、この湿度…もとい、ダンジョン全体から、私たちにデバフ効果がかかっているようデス】
「ヴぇっ!?」
「デバフ!?このダンジョン、やっぱりおかしくなっているよね!?」
「デバフ効果は何だ?」
【全身体能力のダウン…微弱ですが、影響は出るかト。マジックアイテムの私でも、影響を受けているようですネ】
「「「なんだって!?」」」
エリーゼの言葉に、全員の顔が険しいものになる。
人間だけではなく、マジックアイテム自体にも影響が出るデバフ…それをまき散らす元凶が、より一層厄介なものだという可能性が非常に高いのだ。
「デバフ付きの魔改造ダンジョン…そりゃ、行方不明者が出るような要因があってもおかしくはない」
「そうなるとより一層、周囲の警戒が必要だな」
「皆、バラバラにならずに固まって移動したほうが良いか」
固まって移動することで、不測の事態に備えてすぐに対応できるようにする。
一網打尽にされる可能性も無きにしも非ずだが、サクラの鉄壁の防御や、エリーゼの遠距離砲撃、他にも戦隊の人たちの連携やゴリラ魔法による範囲攻撃などの手段があるので、容易く捕縛されることもない。
「いや、ダイケンジャリアさん、ゴリラ魔法って何ですか?」
「そうねぇ、一つわかりやすいのだと、ゲリラ豪雨ってあるじゃない?アレ全部、マウンテンゴリラを降らせるようにするとか…」
「「「えげつねぇ」」」
キングコングとかそのレベルではないにしても、どういう魔法なのか。
どうやら配信者の中には、レベルアップすることで魔法を使えるようになる人もいたりするらしいが、魔法の取得手段の中には魔導書と呼ばれるマジックアイテムを使用することで、特殊な魔法を獲得する人もいるらしく、このゴリラ系魔法少女事ダイケンジャリアさんも偶然入手した魔法としてそのようなものを発現したらしい。
…何をどうしてそんな魔法を出したのか、その魔導書。誰が作ったのか不明だが、ろくでもない製作者が関わっている気がしなくてならない。
とにもかくにも、異常が起きているからこそ、油断できないダンジョン内。
そこを慎重に、異土たちは進むのであった…
【うぇっ…帰ったら風呂に入りたいほど、不快すぎる湿度デス…】
「エリーゼが珍しく、音を上げるほどなのがヤバいな…」
【主殿、彼女に限らずに誰もが思うのだが…風呂はもう少し、広いのが良いな…】
明かな異常をきたすダンジョン
何が起きているのか、その謎へ迫っていく
うまく解決できればいいが…
次回に続く!!
…ゴリラ魔法、本当に一発ネタの没った作品だったりするんだよなぁ…




