第三十六話 寄せ集めでもまともには
―――アルゴニア、行方不明者捜索部隊。
ここ最近の行方不明事件を受けて、ダンジョンを管轄するギルドは緊急募集をかけ、すぐにその調査に乗り込む配信者たちを呼び寄せた。
通常であれば、救助隊のようなものを用意する方が望ましくはあるだろう。
だがしかし、場所はダンジョンであり未知の場所…何が起きても不思議ではなく、生半可なものが向かうことはできない。
可能ならば上級ダンジョンに挑めるような者たちのほうが良いだろうが…いかんせん、配信者たちはそれ一本で食っているわけではなく、色々と事情があって都合がつかないこともあったのだ。
なおかつ、この異常事態に対応できるだけの万能性を求めるのであれば、単純な強さよりも他のことで色々とできる者たちを…異常事態に強そうなものたちのほうが良くて…
「…その結果として、諸君らが今回の行方不明者捜索のために呼び寄せられた」
中級ダンジョンアルゴニアの、最初のフロア。
そこに集ったのは、四組の配信者たち。
各々が異なる特徴を持つが、今一度再確認を行っていく。
「5人組編成の戦隊配信者…『渇望戦隊モンドランズ』!!」
「「「「「我ら、モンドランズ!!」」」」
ドォォンッツ!!っと爆発の背景が配信では合成されている配信者グループモンドランズ。
元々は一人の配信がうっかり戦隊もので熱弁をふるったことをきっかけに集い、相手がモンスターであればいっそそれっぽくやったほうが受けるのではないかと言うことで、行った結果大当たりを引き当てた特殊な配信グループ。
もちろん、赤青緑黄色ピンクの王道カラーに合わせて、しっかりと各々の特徴を持っているため、臨機応変にどのような状況でも対応できることはわかっているのだ。
「続いては、ゴリラ系魔法少女?配信者ダイケンジャリアさん!!」
「はい!!精一杯、がんばりまっす!!」
むきぃっと、魔法少女風の意匠を着こなしたゴリラのような外見であるがれっきとした社会人であるゴリラ系魔法少女ダイケンジャリア。
魔法少女と言うだけあって、それに憧れたが、今の姿では程遠いはず。
それでも、強い意志をもって貫き通した結果、むしろそのギャップがすさまじいのが良いと人気を獲得し、実はこの面子の中で登録者が1万人越えの大配信者でもある。
「あとは、モンスター系の研究者…蟲関係のモンスターに強い、虫博士さんに、異土エリチャンネルの方々で、このダンジョン内の行方不明者の捜索に当たってもらいたい」
「「いや、思いっきり他に比べて、雑に扱われていない!?」」
【…まぁ、年期で言えば私たちのほうが素人と言うか、圧倒的に新参者ですシ】
【虫博士殿は、この面子内だと一番、今回挑むダンジョンで解説に適していると思うのだが…】
…モンスター系研究者は様々な種類がいるようで、今回同行されるのはその中でも蟲系のモンスターに特化した研究者の配信者でもあるらしい。
他の配信者たちとは違ってまともそうなツッコミが入ったが…うん、まぁ…その見た目がその、何でか巨大カブトムシのコスプレになっている点に関して言えば、ツッコミを入れないほうが吉だろう。
と言うか、他の面子濃いなぁ…え、将来的に俺たちも下手すると、こんな風に濃い恰好する羽目になったりしないよね?
【私を連れて今更と言う気がしますガ】
【考えたらオレも恰好的にはそうなるのか‥‥?】
…考えてはいけない、ツッコミがあった気がする。
とにもかくにも、この四組の配信者が、今回の中級ダンジョン内で、行方不明者捜査に当たる面々。
強力なマジックアイテムと従魔を引き連れていても、素人である異土が参戦して大丈夫なのかと思ったが…それを補うだけの経験を持った、実力はしっかりとした配信者のようだ。
「特に、渇望戦隊は他行方不明事件や殴殺不審死事件など、数多くのダンジョンで起きた事件に対応したプロでもあるからこそ、今回は一番期待したい」
「任せてください。我々は間違いなく、戦隊として、皆のためのヒーローとなって」
「「「「確実に、全て救い出して見せましょう!!」」」」
赤い戦隊服を着たリーダーの人が告げると同時に、他の仲間も決めポーズを取る。
少なくとも、素人が入ったとしても実力さえあれば、どうにかできそうな面子でもあるのだった…
【あ、こんな時に何ですが、可能でしたらダイケンジャリアさん、後でサインいただけたらありがたいデス】
「ん?別にかまわないっすよ!」
「え、サイン欲しいの?意外と言うか…」
…魔法少女に、興味でもあったのかな?メイドな彼女が興味を示すのは珍しいような…
戦隊、魔法少女(?)、博士、後追加主人公。
この面子の実力であれば、色々対応しやすいのかもしれない
後は、どういう事態なのか…出来れば、ダンジョンが牙をむかなければ…
次回に続く!!
…ゴリラ系魔法少女、実は没った話から来ていたりする。やろうと思ったけど、どう考えても欲望戦隊より短命な未来しかなくてね…




