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第十九話 記念配信は進みつつ

―――記念配信の中で、当然見せられない映像はあるだろう。


 特にエリーゼの場合は、マジックアイテムとはいえメイド…女性の身体と一見大差ないような姿をしているため、中身の詳細を調べる際に脱がせる姿は、どう考えても配信規約に引っ掛かってしまうため、簡単に配信できるものではない。


 それゆえに、女性職員たちと別室で、メイド服を脱いでの詳細情報を確認しているらしいのだが…




「…えっと鄭亜夢(てむりあ)さん、他の女性職員の方々が凄い意気消沈しているんですが」

「ふふふ…あれですよ、マジックアイテム相手に、女として負けてしまったという感覚がね…」

【私、これでも量産モデルの方なので、完全受注タイプなどに比較すると劣る方なのですガ】

「「「ぐはあぁぁっ!!」」」

”職員の方々が血反吐をはいたりぶっ倒れたぁぁぁあ!!”

”むごい無自覚の一言が、容赦なく突き刺さった!!”


…案内を務めている職員含む、検査に立ち会った方々がぶっ倒れた。


 どうやら配信映像に残せない部分で色々と調べたようなのだが、何かと敗北気分を味わってしまったらしい。



「量産でこれって…本当に、このマジックアイテムが作られていた世界はどういう魔境なのよ…!!」

「そこまで声を出すほどでしたか…」


 何はともあれ、衣服も脱いでの検査の結果、様々なデータが取れたのもまた事実。


 メイドとしてのマジックアイテムと言う時点で色々不明点も多かったが、これで多少なりは情報が得られたのであれば、ギルドにとっては利益は得られているはずである。



「本当であれば、安全そうであればマジックアイテムの複製や一般へ降ろせるような応用品などもこれから開発されるようになるんですっけ?」

「え、ええ、そうなります。使用されている技術は大抵ほぼ魔法と言えるレベルのマジックアイテムが多いですが、完全に再現しきれないところがあっても、他に活かせるのもありますからね。例えば、マジックバック…あの大容量の収納具のようにいかずとも、見た目以上の収納能力を保持したカバンの開発や、水を出せずとも水質の強制変換で安全な飲み水を発展途上国に供給しやすくなるなど、様々な面で使用可能になりますからね」


 マジックアイテムがここで検査を経て、その技術の完全解明とまではいかずとも、人々の生活に役立てる方向で利用することができるところもあるらしい。


 もちろん、今回の検査でエリーゼに使用されている技術も例にもれず、同型のメイドを作成するとまではいかずとも…



「…量産型とおっしゃられているのもあってか、今の技術でも多少はメイド服の使用されている構造を元にして、強靭な制服が作成できたりしますね」

「そこの再現か…あの、やっぱりエリーゼを増やすとかは」

「絶対無理です」


 断言された。


 まぁ、人の手で複製されるエリーゼと言うのも…その能力を考えると、一歩間違えたら危うい気がしなくもない。






 それでも、これで色々な検査も終わったようで、後はマジックアイテムの持ち主の元へ返却となるようだ。


 もちろん、ただ返却するのではなく、得られたデータに関しても確認のために様々な資料も付属しており、モノによっては辞典サイズになることもあるそうだ。


「検査で得られたデータも合わせつつ、ギルドで唯一の完全複製に成功している鑑定板というマジックアイテムで測定できたデータもまとめて、説明書の形で所有者になられる方へ提供されます。…エリーゼさんの場合は、測定できない部分が多すぎたので…単純に身体データ等だけになりましたが…」

「あ、本当だ。身長に体重、メイド服の強度やガーターベルト仕込みのナイフの本数、他にスリーサイズまで…使用可能な機能もいくつか出て…」

”ちょっと待て、いまさらっとスリーサイズとか出たんだが”

”さらっと物騒な暗器を仕込んでないか?”

”マジックアイテムに出していい数値なのか…いや、公開を頼む!”

【そこは、乙女としての秘密でお願いしマス】


 他の機能のほうが…腕の変形機構やマジックアイテムの作成能力に関してのデータも記載されているようなのに、そっちのデータよりも求められる記録。


 なお、マジックアイテムから得られたデータは次回、同種のものが存在した時のために、可能な限り公開されるのだが…当然、迂闊に触ってはいけないような代物となれば、制限もかけられる。



「配信で色々出しているとはいえ、それでも一部ギルドから非公開にしてほしいデータもあるけど…なに、こっちの完全非公開願いリスト」

「それは、持ち物検査にてエリーゼさんがそのポケットから出された数多くの道具でして…」


 以前提出した分以外にも、この検査の機会にもっと提出したらしい。


 とはいえ、一度に多くを提出するのも分析が大変そうだからと言うことで、まだ一部に過ぎないようだが…うん、確かにこれらは不味いか。


「と言うか、そのメイド服のポケットもマジックバックのようになっているというか…この量だと某青猫型ロボと同じと言って良いなぁ…」

【あの方は、ある意味敬愛すべき先輩ですネ】


 うんうんとうなずきながら、そう口にするエリーゼ。


 色々と違い過ぎる部分があるとは思うが、相手を見守るような部分に共感を覚え…


「…子守ロボットだった記憶があるんだけど、まさか俺のことも同じように子守的に考えてないよね?」

【それは…ええ、無いデス。私はメイドにして、ご主人様に忠実に仕える身ですからネ。たしかに、ご主人様は年齢に反して可愛らしいというか小さいというべきか、データ等で理解しているとはいえ未だにちょっと考えてしまう部分もある幼げな姿から少しばかり考え…いえ、失言でシタ】

「ボロボロ本音がこぼれすぎなんだけど!?」


”このメイド、唯一の欠点と言うべきか、隠し事が下手過ぎる…同意するけど”

”うん、確かに配信年齢を考えるとそうじゃないと分かるけど、思っちゃうのは仕方がないよ”

”だから異土君、君には合法ショタ配信か男の娘配信が似合うと思うんだけど、やってくれないかな”

”いっそのこと、受け入れて開き直って、ヤッテクレナイカナァァァ”


「ひぃ!?邪悪感あふれるコメントが!!」

【ご主人様に強要はさせないように、お願いいたしマス。その気持ちは、ご理解できてしまいますが…似合う服を作りましょうカ?】

「身内にも敵が!?」



…記念配信だというのに、最後に少し訪れた恐怖のコメント。


 それでもどうにか、無事に成し遂げることができたのであった。



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