第十八話 マジックアイテムとその検査場
―――本来、ダンジョンで出土したマジックアイテムは、ギルドの方でいったん回収されるもの。
この世界にはない魔法のような力を持つからこそ、下手なものが扱えば、世界に仇をなす可能性も有しており、だからこそどのようなものなのか、調べる必要があるのだ。
「とはいえ、その全てを解析しきることは叶わず…それでも、どのような性能を持つのかなどを調べたりするために、きちんと提出していただく必要があるのです」
「なるほど…ただ、一応は拒否が可能ですよね?」
「ええ。ダンジョン内で折角手に入れたマジックアイテムを、すぐに提出したくない、紛失されたくはない、奪われたくはない…様々な理由をもって、それが適正であれば可能となっております」
”なるほどなぁ、強制的な提出とかじゃないんだ”
”苦労して手に入れたものを、下手に預けて無くされたら困るしなぁ…”
「ああ、紛失対策に関してはしっかりと対策をしておりますので、そこもご理解いただければ幸いですね”
…登録者1000人突破記念動画、異土が撮影する映像に視聴者からコメントが寄せられる中、本日のギルドのマジックアイテム関係解説者の鄭亜夢さんは微笑みながら回答をしていく。
「提出されたマジックアイテムは、まずは紛失防止のために、このマイクロチップが入ったシールをいったん張らせていただきます。GPSなどの機能があるため、どこにあるのかがすぐにわかりますからね」
【剥がしやすくもあるようですが、それでもしっかりくっつきますネ】
シールが張られた手を見せながら、そう口にするエリーゼ。
様々な情報を圧縮した特殊な道具であり、マジックアイテムを参考にして改良を加えられ続けているものでもあるようだ。
「マジックアイテムの持つ、魔法のような力…それはたとえ、今の科学でも再現ができない部分があります。それでも、多少はどうにかできる部分があれば、人は創意工夫によってたどり着こうとあがけますからね」
”うんうん、人の持つ可能性もまた大きいからね”
”マジックアイテムの再現か…実際に完全にできたらすごそうだがな”
”てか、これからエリーゼさんがその解析対象となるわけだけど、彼女が再現出来たら量産できたりするのかな…?”
エリーゼ量産ライン…想像しただけで、色々カオスな結末を迎えそうなご主人様であふれそうだと、コメントにも漏れ出している。
【あの、私元居た場所だと量産型なので間違ってないですヨ】
”間違ってないのかよ”
”このメイドを量産する世界…え、どういうところなの”
とにもかくにも、マジックアイテムの提出後の流れに関して、進めることにする。
多少強引ではあるが、そのまま話してもらったらそれはそれで阿鼻叫喚なことになりそうなので、今は記念すべき動画を続けるのだ。
マジックアイテム提出後は、どこでどうやって手に入れたのか、配信をしていれば何分あたりかなどの細かい資料も記載しつつ、マジックアイテム側の方にも動きはある。
カシャッツ!カシャシャッツ!!
【ふむ、どうやら四方八方、撮影するようデス】
「マジックアイテムの外見の確認や、後は中身の解析のためにX線照射などがここで行われるようになっています。マジックアイテムの中には、また別のマジックアイテムや、他の世界からの危険物が入っている可能性も秘めていますからね」
「空港のテロ対策みたいなもの?」
「はい。そのとおりです」
よくある爆弾や麻薬検知のようなものが施されるようで、外からではわからないような危険物が潜んでいないのか確認する必要があるらしい。
「全体写真を撮ることで、その形状やおおよそのサイズ測定、その他スキャンが行われてより精密な情報をここで獲得し、どのようなマジックアイテムなのか詳細な情報を記録していくようになっています」
”ほー、そういう感じなのか”
”あれ?てことはエリーゼさんの中身が見えたりも…”
「…残念ながら、映ってないです」
”ふあっつ!?”
【ああ、そういえば私の場合、簡単に解析できないようになっていたんでしたっケ。確かに、外装だけですネ】
ジーっと音を立てて印刷されて出てきたX線画像…エリーゼの中身が見えるはずだったものなのだが、確認してみれば骨が見えたりするようなものではなく、外側しか映っていない。
内部にもっとこう、メカメカしいものが映っていたりしないかなと、ちょっとだけ期待していた部分もあったが…どうやらそう簡単に見ることはできないようだ。
【一応、メイド服の方は透過されたようですが…こっちはそこまで防ぐようなものはないですしネ】
「ああ、それと先ほどの全体確認のための写真も出来上がりましたが、スカートの真下からの写真はしっかり除外させていただきました」
【仕事が早いですネ】
”ぐわぁぁ!!予想していたけどそうなるかあ!!”
”まぁ、無理もないか”
納得の声もあるが、悲鳴も聞こえてくるようである。
どさくさに紛れてみようとしていた人もいたようだが、その希望は見事に粉砕してくれたようだ。
「その他の検査には、鑑定板での測定や、マジックアイテム鑑定者による検査、実際に使用してみての性能テストなどもここでは行われますが…最後の方の性能テストに関しては、現在エリーゼさんは除外されております」
「え?…ああ、そうか。ダンジョンぶち抜ける時点で、やらかしたら不味いと」
「はい。…いや本当に、過去の配信映像で壁を貫通した記録を見せていただきましたが、ダンジョンの壁って場所によっては岩や岩石でも、その強度は自然界の普通のものよりもはるかに強度があるはずなのに…見事に破壊してますからね。ここの性能テスト検査室では耐えられないのが確定しておりますので…修理代もただではないので」
”最後ぽろっと本音が出たな”
”破壊されるのが前提な時点で、色々おかしいような…でもエリーゼさんだとおかしくないような”
”頑丈な部屋がぶち壊される可能性がある時点で、十分おかしいと気づけよお前ら”
色々とツッコミどころや、まだまだ検査するには足りない部分が多いようだが、それでもマジックアイテムの調べ方に関しての映像は、中々高評を得ているようではあった…
「なお、衣服を脱いでの精密検査もありますが、こちらは女性職員だけかつ、中での撮影はできないのはご了承ください」
”ぐわぁぁぁ!!慈悲はないのかぁあ!!”
”いや、そうだろ。当たり前のことだろう…残念な自分もいるが”
…色々とエリーゼのあられの無い姿も見て見たかったらしい欲望を持つ視聴者よ、ごめんね。
でもそうでもしないとBANされかねないというのも…配信とは難しいなぁ…




