表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/30

第十五話 裏で蠢く哀れな者ども

「ーーーあの馬鹿ども、捕まりやがった!!」


…とあるホテルの一室、モニターで現在行われている配信のうち、一つの映像を見て叫ぶ者がいた。


「未知数だからこそ、まずはどこまでやれるのかを確認したかったが…その前に捕縛されるとは」

『くすくすくす、やはりケチったのが良くないですなぁ』

『もう少し金をかけて、もっと万全なところから雇えばよかったものを』

「黙れ黙れぇ!いや、まだここがばれたわけではない!!今すぐに切り捨てて、逃げねば!!」



 その様子を見ていた者たち…焦る男に誘われて面白半分で見学していた者たちの嘲笑に怒鳴り返すが、今はそれどころではないことを理解している。


「せっかくここまで成長してきたんだ…このドドスコンファミリーが、裏を牛耳る他の者たちを蹴落としてのし上がるだけのチャンスを、ここで失ってたまるか…!!」







…ダンジョンが世界各地に出現し、マジックアイテムや未知のドロップアイテムなど、もたらしたのは利益ばかりではない。


 その利益を求めて争う者たちもおり、そして裏の世界でも様々な組織が乱立し、敗れ、再興し、滅亡し、復権し…入れ替わりが色々と激しくなっていた。


 その中で、この男が立ち上げたドドスコンファミリー…いわゆるやくざとかマフィアなどの一種である組織もまた、ここ数年の間にダンジョンから出る様々な物を活かした裏の商売に手を出して成長していたのである。



 そして今回、裏社会にも出回ってきた未知のマジックアイテムの情報…メイドのエリーゼに関して、彼は目を付けた。


 マジックボックスのような大容量のポケットに、人の身体を意志のままに操るマジックアイテムの作成など、その用途は全て彼女がご主人様とやらのためにしているようだが、使い道を変えれば裏社会の覇権を握れるほどの力を秘めている。


 だからこそ、手中に収めて一気に躍進を目論んだが、世の中そうたやすくはいかないもの。


 あのメイド…マジックアイテムを収めるためには何が必要なのか。


 見る限りでは、あの少年が主となっているようであり、その登録をどうにかしたほうが良いような感じもするだろう。


 マジックアイテムの特徴的には、ゴーレムやホムンクルスと言ったものと似ており…それらのマジックアイテムもまた、使用者を登録して扱えるようになっているため、その登録をどうにかできればよく、その手の道具は裏社会には様々な物がある。


 

 けれども、扱うためにはやはりあのエリーゼとやらを連れてくる必要があるが…最初の方の配信で出てきたワームを消し飛ばす姿を見れば、その戦闘能力は未知数。


 どれほどの人数を連れてきたとしても、ただの人間であればあっという間に消し飛ばされるのが火を見るよりも明らかである。





 とはいえ、それでもあきらめる気はなく、出資者を募ってまずは実力確認のために少しだけ手を出したのだが、思いのほかそこまで運んだやつらが馬鹿だったようだ。


『ふむ、彼らがここまであのコボルドーンを持ってきたもののようですネ』

『分かるの、エリーゼ?』

『ハイ。…やはり、懐の方に入ってましたか。ご主人様の特訓のためにダンジョン情報以外にも様々なものを確認していたのですが…違法マジックアイテム「キャプチャリゲージ」ですネ。対象よりも強くなければ扱えないものですが、モンスターを捕らえて手に持てる小さな檻サイズで運ぶことができる代物デス』

『そんなのがあるんだ』

『ただし、捕獲者以外の者が扱うと三日で役に立たないボロボロの檻になるのだとか…この様子ですと、裏で金を積んで、捕縛させた人がいたのでしょウ』

「そこもバレたか!!」



 あれを用意するのに、どれだけの金を支払ったと思うのか。


 コボルドーンはいったんの様子見としては良い強さを持つはずだと思ったのに…結果を見れば、赤子の手をひねるよりもあっさりと対処されてしまい、大損をこいたともいえるだろう。



「とりあえず今は、そんな事よりも逃亡だ!!」




 今ならばまだ、逃げることはできる。


 手下の一人や二人、この程度で失うだけで、また後で補充は可能だ。


 このタイミングでならばすぐに追いつかれることはないだろうし、まだどうとでもなる。



 逃げ足だけは、この逃げるための勘だけは、捨ててはいけないもの。

 

 ゆえに、この時ばかりは確実に最適な回答を引けていたと彼は思っていたが…それは甘かった。





 メイドの実力を、見誤っていたのだ。


 惜しいとすれば、そのメイドはまだ発展途上であり、この段階で彼の手下を捕まえなければ、もっと早くに捕らえることが出来ていただろう。


 だがしかし、いずれにしても時間の問題であり…後日、彼が作り上げたドドスコンファミリーは壊滅することを、この時はまだ知らないのであった…





『ああ、それにしても切り捨てて潰せるとはいえ‥これはこれで、面白いものを見せてもらった。生半可なものではやはり、手中に収めることもかなわないか』

『下手に手を出さなければいいだけで、勝手に出す者が破滅する…これはむしろ、支援すれば我々にとって邪魔な馬鹿どもたちを一掃するいい機会になるのでは‥?』

『裏社会の規律を乱す者たちへの、見せしめにか…ふむ、だが近寄り過ぎればこちらも巻き込まれない諸刃の剣だが…それでも、価値があるか』


…その一方で、しっかりと潰されていく愚か者たちを見て、彼女の動きに対して裏社会でも注目が集まっていくのであった…





「…わぉ、エリーゼ、見てよコレ。登録者が一気に増えてきているんだけど」

【おや?…ふむ、良いことではないですかネ。ご主人様の配信が世間一般に認められてきたのでしょウ。ええ、善悪表裏関係なく、純粋なファンが集うのであれば、それはそれで良いのデス】



 それを彼女が理解しているのかは…わからない。

良い見せしめがここに追加

こういうのを生贄の羊とかと言うのだろうか

そんな事情はさておき、そろそろまた動きも…

次回に続く!!



…さてさて、少しづつ人目もついてきたところで…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ