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第十二話 コボルドーン

…コボルトの群れと言うのは、警戒したほうが良い。


 いかに初級ダンジョンのモンスターだとしても、彼らとて野生の獣。


 二足歩行をした狼のような姿を持つからこそ、その獣の頭を持つがゆえに、罠や敵の接近に関して臭いですぐに感じ取りやすく、群れを成して襲撃をかけてくる。


 それなりに場数を踏んだ配信者たちならばいざ知らず、まだスライム相手すらも脱出できないような初心者であれば、避けるべき相手ともいわれているが…







【ギュアァァァア!!】

【ギャァァァァッヅ!!】

【ゴェェェェヅ!!】


…その群れは今、その初心者なはずの配信者の手によって襲撃を受けていた。




 いるのは()()()()()()()のはず。


 それなのにこの群れがこうも容易く蹂躙されるのはどういうわけか。


【ギュアァァ!!ギュァァァ!!】

【ギュェェェ!!】


 声を張り上げ、敵の確認を急ぐ。


 小さな獲物、されどもその動きは素早く、捕えづらい。


 そう、今こうやって連絡を取っている間にも…


「ーーーこれで12体目」

【ギュッ…!!】


 背後から聞こえた、小さな声。


 気配を察して振り返ると、そこには一人の少年しかおらず、その手は既にコボルトの身体を…











「…ふぅ…15体目…これで、この群れは全滅かな、エリーゼ」

【ええ、そのようデス。鳴き声が広がったため、新たな群れが来るのは少し時間を要するでしょうが…ご主人様の動きが良かったおかげですネ】


”いや、大分ホラー寄りだった気がしなくもない”

”何この、油断したら襲われて全滅しているって。アサシンか何か?”

”エリーゼちゃん、暗殺者教育メイドだった‥?”

”>10,000円 スパチャされました。 ガチでやべぇけどいいもん見せてもらったわ…”



…初級ダンジョンの一つ、ウルフリアンズ。


 主にコボルトが湧き出てくる中で、一つの群れの壊滅を、異土とエリーゼは配信していた。


「エリーゼお手製、隠密装備…と言いつつ、全身の気配をできるだけ隠すための、足音を無くすブーツと、防護服代わりのローブ…まぁ、これでも十分やれるのはすごいか」

【速さと回避に鍛えたとはいえ、ご主人様の負傷はできるだけ避けるようにしたかったですからネ。流石にデータ上に存在しうる理想の糸はなかったのですが…代わりに、私のメイド服とほぼ同質の素材で作成いたしまシタ】


 異土に装備されたのは、エリーゼお手製の防具一式。


 ブーツに手袋、ローブ…それに、武器としての小さな短刀。


 軽く小さく、それでいて鋭く…


「…適切に、モンスターの弱点…『魔石』と呼ばれる部分を確実に破壊できるだけの威力があるしね」

【流石に硬すぎる相手は無理ですが、コボルトは大丈夫なようデス】




 魔石、それはモンスターの命の結晶ともいわれている部位であり、体外のどこかに浮き出ているもの。


 ダンジョンに出現するモンスターは誰もが持っているものであり、それを破壊してしまえばすぐに絶命し、体が瞬時に消え去り、ドロップアイテムだけが…コボルトの場合は、通常は牙や歯が残されるのだ。



 とはいえ、全てのモンスターが単純に魔石を破壊すれば絶命するわけでもなく、一つだけじゃなくて複数存在していたり、強度が半端ないものや、実体がないものなどもいるようで、単純に通用するのは中級までと言われているほどだ、


【実体がないものに関しては、手段も一応ありますが…それでも、このコボルトぐらいなら大丈夫みたいですネ】

”このメイドお手製の装備一式か…これ、全部マジックアイテム?”

”メイドが作れるマジックアイテム…うん、下手したらやばそうな気がしなくもない”

【大丈夫ですよ、コメントの方々。今回のご主人様の装備は、普通の貴金属を用いてますからネ】


 さくさくっとエリーゼが作ったものなのだが、一応多少は自重してなのか、集められないことはない素材で作っているらしい。


【欲を言えば、モンスターのドロップアイテムからも作りたいところですが…私の理想的な素材は、今のところないみたいですしネ】

「どういうのが理想的なの?」

【ご主人様を完全無敵で守れるような素材ですネ。希望を言えばこう、きらきらと無敵で光り輝いたりするような…】


”どこのスター状態の配管工のおっさん?”

”そんなのになれる素材があったら、今頃公表されているような…おっさんになるのはあるっぽいが”

”いや、ピンクの悪魔のキャンディの方かもしれんぞ。そんな都合のいいモノ、合ったら人が殺到するがな”


 人を何にしたいんだろか、このメイド。



「それでも、気配消しに関しては無理やり体で覚えさせられた方法だけど…んー、エリーゼみたいに、完全にはできないか」

【これに関しては、実戦で数をこなさないとつかみにくいですからネ。一応、ご主人様に教えたのはメイドの嗜みで得られる方ではなく、別の流派の方法ですが…それでも、コボルト相手に探知のされにくさを考えると、上達はしていたようデス】

”メイドの嗜みでの気配消しって何?メイドは隠密なの?”

”メイドって何なのか、この配信で考えるのはマジでやめとけ”


「そういわれるほど、エリーゼのメイドの嗜みって一般常識から乖離しているんだよなぁ…」

【…ノーコメントでお願いしマス】


 そっとそのコメントから目をそらすエリーゼを見て、多少は自覚していたのかと思う。


 それならもう少しだけ自重しても良いような気がしなくもないが、たぶんできないだろう。



「でも、とりあえずはコボルトを討伐は出来ているから良いか…あと2~3個ほどの群れを、狙えばいいかな?」

【ドロップアイテムも出てきますが、こちらは無事に回収できておりマス。私のメイド服に詰め込めるだけ、詰めておきましょウ】


 順調なコボルト討伐の配信だが、油断をする気はない。


 こういう時に、下手に気を抜けばひどい目を見るのは、配信者のお約束だともいわれているからである…
















『それにしても、エリーゼのほうが全く気が付かれないか…本当にヤバいな』

『こっそりご主人さまが攻撃しやすいように、魔石の個所を書いたりしたのですがネ』




「…なるほど、位置的には後数十分もあればここに来るか」

「ああ、配信光景を見れば大体の把握ができるが…良いのか、仕掛けて」

「問題は無いとは思うが…」


【グルルルルルルル‥‥!!】


「っと、やべぇやべぇ、紛れるためのコボルドーンが、目を覚ましかけているか…さっさとずらかるぞ。試すだけとか言っていたが…さてどうだか…」


…異土たちの配信光景を見つつ、その場に何かを残す者たち。


 この階層にいたコボルトたちは、その異様さに気が付き、既に逃亡している。


 ゆえに、この場にあるのは…コボルドーンと呼ばれた怪物だけであり…悪意の、試しの牙はゆっくりと開かれるのであった…


しっかりと成果は出ている模様

しかし、その裏で何かが密かに悪意を向ける

それに対してできるのは…

次回に続く!!



…微妙に体調不良が多い、皆水分を取ろう

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― 新着の感想 ―
こんばんは。 異土くんの防具、エリーゼさんからしたら「まだまだだね(某テニヌプリンス並感」みたいですが…その辺の斥候や暗殺のお仕事担当の方が見たら、「それで十分な性能だから一着ください」ってレベルな…
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