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第九話 代休・沼地へのいざない

…本来、学内にマジックアイテムの持ち込みに関しては、禁じられているものもある。


 ものによってはかなりの高額だったりするのだが、過去にはマジックアイテムを利用したカンニングや、ハーレム及び逆ハーレムのようなものを築こうとするものなど、人の欲望がぶっ飛び過ぎて混沌とした時期があり、それゆえにいくつかの禁足事項が各国の学業関係施設で盛り込まれたのである。


 たとえ、一介の生徒が容易くできないようなものだとしても、やらかした前例があるのならば、それに対応していくしかない。


 それゆえに、メイドではあるがマジックアイテムであるエリーゼも例外ではなく、学内に来ることはないはず…だった。




【…ですが、ご主人様が全身レベルアップ痛で動けなくなったので…保護者代理として、お休みすることをお伝えしに伺いにきまシタ】

「そりゃまぁ、ありえなくはない話だが…生徒の安全を見守る以上、配信も確認しているが…大丈夫なのか、異土は」

【お医者様曰く、成長痛ともいえるもので、体が大きくなるとかではなく、神経系や血管系などが強靭になる際の細胞への圧迫作用による…分かりやすく言えば、成長痛と筋肉痛のダブルラリアットに襲われた状態だとのことデス】

「盛大に痛そう」

「そりゃ、休むわ…配信者で似たような症状を起こした生徒の前例もあるし…でも」


「「「あの配信を見た以上は、仕方が無さすぎる納得感が強くてなぁ…」」」

【…本当に、申し訳ございまセン。スポンジのように、しっかりと動きを吸収してくれるご主人様の成長ぶりに嬉しくテ…】



…職員室、その場所で全員がはぁぁっとため息を履く中、エリーゼはしょんぼりした表情を浮かべながら、異土の代わりに来て、休むことを伝えていた。


 前日に、ダンジョン内でやった異土の魔改造強化策…ある程度はうまくいったのだが、その反動まで計算に入れることを、彼女はうっかり抜けていたのである。


 そのせいで今、全身激痛で悶えて異土が動けなくなってしまったので、本日は学業に専念できないようなのでエリーゼが彼の代わりに伝えに来たのであった。



【マジックアイテムである私が、学内に身を運ぶのはどうなのかと思うところもありましたが、動けないので…いや本当に、ご主人様に申し訳ないのデス】

「それが分かっているなら、もう少し工夫できたんじゃ?」

「スーパーロボットのような…いや、それが無理だとしても、人の身体をどうにかできるのなら、より効率よく僅かな運動で鍛えられるようになる肌着とか用意出来れば…」

【今度から、そうしていきまス…】





 とにもかくにも、健康的な問題での休みに関しては、受理された。


 ほっと一息安堵の息を吐くエリーゼだったが、その彼女の反応に対して、周囲からの目はまた違ったものもある。


(…寮内の自室に保管した状態でって許可したけど…今更ですが、未成年の部屋にメイドはいかがなものでしょうか)

(悪い人…ひと?ではないが、それでも綺麗なメイドさんが謝りに来られると、こっちが申し訳ないな)

(あの配信を見た後だと、保護者とかメイドというよりも鬼師匠…精神的な部分よりも、肉体的な部分でのしっかりとしたトレーニングを指導したほうが良いかと。いや、むしろ人じゃないマジックアイテムだからこそ、まだ理解できない点もあるのでは…?)


 異土がマジックアイテムとして、メイドを連れ帰ってきているのは皆が知るところ。


 それでもこうやって実際に見ると、聞いていたものや想像していたものとはまた違う彼女の姿に、色々と思うところはあるだろう。


 ただ、一つだけ全員の心が一致したことと言えば…



「…ところで、エリーゼさん。せっかくですので、このままおかえりになられる前に、少しは見学されたほうが良いのではないでしょうか」

【と言いますト?】

「私たちも、今日として生徒たちの配信環境を…相当ひどいことをしでかしていないか、人様に迷惑をかけていないのかなど、チェックするのですが、先日の配信を見て思ったのが…エリーゼさん、貴女は人のことを理解しきれていないのではないかなと思いましてね」

「よろしければ、今日は少しだけ構内を見学されて、普段の異土…彼が普段過ごす学内の様子を見て、人の営みを学んでいただくのもどうかなと」

(((と言うか、わかってくれないとこの先絶対にやらかす可能性が非常に大きい…!!))


…教育者として、きちんと生徒の身と心の安全を守るためにも、エリーゼには人を知ってもらうほうが良い。


 美人な彼女に邪な心を抱かないわけでもないが、あの配信を見てどちらかと言えば教育者としての心のほうが動かされて、学んでもらいたい。


 そう思い、親切心と今後の不安の払しょくのために、教師陣はそう語りかけた。


【ふむ…可能であれば、ご主人様が学んでいるときに見たかったのですが…ええ、ならばお言葉に甘えさせてもらいまして、構内を少し見学させていただきまショウ。幸い、ご主人様は今、激痛で苦しまれぬように、回復するまで眠ってもらってますからネ】

「では、見学者用の手続きをしますので、こちらの用紙の記入を…」


(…()()()()()()()()()?眠っているじゃなくて、寝かせたの?)

(何故だろう、それはそれできちんと見ているような、そうでもない別の不安もあるような)

(うん、絶対に人とは何か、理解してもらわないと駄目な奴だコレ)









「…おい、あれ見ろよ」

「何だ?廊下に…メイドさん?」

「まさか、あいつの…異土のやつにいるメイド!?」


…ざわざわと廊下で生徒たちがざわめくが、エリーゼにとっては関係ないモノ。


【なるほど、普段ご主人様はここで学業を…ふむ、こうしてみる機会が得られるのは良いですネ】


 やろうと思えば、構内にある監視カメラ等にハッキングを行い、自分の目を通して直接見ることができないわけでもない。


 しかし、それは流石に色々アウトだろうということで自重はしたのだが、こうやって普段の主の学び舎を見るというのも、メイドとしては良い経験になるだろう。


【惜しむらくは、ご主人様がいる時に、陰から見たくもありましたネ】


 構内を色々と見て回りつつ、その機会を得られなかったことに惜しむエリーゼ。


 もしも可能であれば、異土が復帰したらどこかでまた見学を申請できないかと考え…その一方で、周囲の生徒たちの目も、また色々と集まっていた。



「やべぇ、本当にメイドだ。あの首が取れておっぱいでかくてホラーもばっちりなドS教官メイドのような…」

「色々盛り過ぎだけど、あながち間違っていないのが酷いな…と言うか、あのメイドと配信…くっそうらやましいなぁ!!」

「心の声が漏れ過ぎだ。…かと言って、虐めるかと言えば良くないことだし、出来るわけがないよなぁ」

「ワームを消し飛ばせるマジックアイテムなメイドを敵に回したくはないが…女子からの反感もなぁ」

「良くわかっているじゃない、男子諸君」

「いつか必ず、彼に女装かガチショタっ子お姉ちゃん呼びしてもらったりするまでにやらかせば、あんたらの金〇を叩き潰すからねぇ」

「「「怖い女しかないのか、ここは…」」」


 異土がメイドと配信していることに、嫉妬や怨嗟を覚えない同級生がいないわけではない。


 しかし、それ以上に敵に回した方のデメリットが大きすぎるがゆえに、下手なことをしでかす気もないのだ。


 これはある意味、彼の容姿的な部分で助かっているというべきか、それとも別の意味で潰したほうが良いのではないかと思われそうなものに狙われているとも言えなくもないが…彼が知ることはない。


 何故ならばすぐに…



「あのー、そこのメイドさん、もしかしてですが、異土君のメイドさんですか?」

【ん?…ハイ、そうですが、なんでしょうカ?】

「私たち、彼のクラスメイトなのですが、少々お話を伺いたくって」

「せっかくなので、色々と情報を共有しましょう」



…大きな障壁を取り除こうと、動いた者たちの努力が押し通ってしまうのだから。


将を射んとする者はまず馬を射よ

間違っている気がしなくもないが、引きずり込めればいいモノ

人であろうと何であろうと、沼と言うのは…

次回に続く!!



…良い影響を受けると良いね

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