第6話「おままごとセットで村を救え!?~女児のリアル再現力が試される~」
ゼフィルと並んで歩くこと半日、私たちはとある村にたどり着いた。
森の中にひっそりと存在する、小さな集落。
けれど、その表情は暗く、元気がない。
「……何があったんだろ」
村の広場に足を踏み入れると、子どもたちがぐったりしているのが見えた。
「遊ぶ」というより「耐えてる」感じ。お腹を押さえてる子までいる。
「ゼフィル、あの子たち……」
「この村、数日前に商隊が来なくなったと聞いた。どうやら物資が届かず、食料不足らしい」
なるほど、それで元気がないのか。
けれど、今の私に“食べ物”を作れる能力なんて――
「……あるじゃん」
ランドセルの中から取り出したのは、平成女児なら誰しも一度は遊んだであろう、
『カラフルおままごとキッチンセット(マジックテープ式)』。
「え、それ……まさかの神具か?」
「いや、これはおもちゃ。だけど……」
私はそれを地面に置いて、魔法少女モードで変身しながら起動する。
ミラーからピロリン♪と音が鳴る。
《お料理ごっこ、はじまるよっ♡》
「ごっこ遊びじゃ……意味ないんじゃないのか?」
ゼフィルが不安そうに言ったそのとき。
――ふわあっ、と湯気が立ちのぼる。
えっ、なにこれ、本当にできてる!?
まな板の上には、マジックテープでくっついてたハンバーグが、本物のハンバーグに変わってる。
「これ……ごっこじゃない、“再現”だ」
私は次々に調理を進めていく。目玉焼き、カレー、スープにプリン。
見た目は可愛いのに、味も香りも本格的。
「……“平成のおままごと”って、子どもなりの完璧な再現遊びだったんだよね」
まな板の置き方、スプーンの並べ方、いただきますの挨拶まで。
全部、私たちは真剣に真似していた。
――だから、ごっこでも、愛情は本物だった。
「みんなー!ごはんできたよ!」
子どもたちが集まってきて、恐る恐るスプーンを手にする。
一口食べて――ぱあっと顔が明るくなる。
「おいしい……!」「あったかい……!」
わあっと広場に歓声が広がる。
おままごとキッチンの横には、小さな食堂が生まれていた。
「……信じられん。魔法でも錬金術でもない、“再現の魔法”だ」
ゼフィルがぽつりとつぶやく。
違うよ、それは――“お母さんの真似”なんだ。
私はランドセルを背負い直し、子どもたちに笑いかけた。
「また来るね。今度はホットケーキ焼くから」
「うん、またね、魔法のおねえちゃん!」
振り返ったとき、ゼフィルがじっとこっちを見ていた。
「何?」
「いや……やっぱり、お前はこの世界にとって“魔女”だよ」
「平成女児って、そんなにレアかぁ?」
「この世界に、“優しさ”を魔法のように使える人間は少ない。だから、すごいんだよ」
照れるからやめてくれ、ゼフィル。
でもその言葉が、ちょっとだけ私の背中を押してくれた気がした。
次回:「筆箱の中から精霊が!?~文房具で召喚術やってみた~」
女児の筆箱には、秘密がいっぱい。今、シャーペンが世界を救う!?