第4話「転生勇者がやたらキザだった件」
世界樹の苗が空に向かってぐんぐん成長したせいで、私は完全に「謎の賢者」みたいな扱いになっていた。
いやいやいや、私、ただの元・平成女児なんですけど?
そんな私の前に、突然現れたのは――
「……ふ。貴女か。この神気、まさしく“運命の導き”だ」
銀髪。長いマント。胸に十字の装飾。背中にはやたらデカい剣。
そして何より、圧がすごい目つきの青年。
「……どちら様?」
「名乗るまでもないが、まあ聞け。我が名は、ゼフィル=ルクス=レグナード・アインズベルク。選ばれし転生勇者――通称“漆黒の閃光”だ」
「長いッ!!」
しかも自分で通称言うやつ初めて見た。
目の前の彼、中二病の化身みたいなテンションである。
「それにしても……そのステッキ、ただ者ではないな。貴女、何者だ?」
「あ、えっと……元・平成女児です」
「……へいせいじょじ?」
こっちの世界には“平成”も“女児”も存在しないらしい。
当たり前だけど、説明がつらい。
「えっと、小さい頃、魔法少女になりたかった普通の人間、です。たぶん」
「……なるほど。つまり“真なる魔女”か。気に入った」
「解釈の飛躍がすごいな!?」
ゼフィル(以下略)は、なぜか私を完全に魔女ポジションで認識してしまったらしく、勝手に仲間認定してきた。
「この世界には七つの“神具”が存在すると言われている。おそらく貴女の持つそれも、その一つ……!」
「ごほうびシール帳と、朝顔の苗……ね」
「……やはり、只者ではないな」
うん、そう受け取る?って思ったけど、異世界では“可愛い”=“神聖”らしいのであながち間違いでもないらしい。
「ならば、我が旅に同行してくれないか。漆黒の閃光と真なる魔女の共闘――悪くないだろう?」
「すっごいアニメっぽいノリだなぁ……」
正直、彼のテンションについていけるかは不安だけど――
この世界に関わっている“神具”の謎を知るには、情報が必要だ。
そして彼は、妙に詳しそうだった。
「……わかった。一緒に行こう。でもステッキの充電、毎回持たないからあんまり無茶はできないよ?」
「了解した。我が命、貴女に捧げよう」
「いや捧げなくていい!!」
かくして、平成女児と漆黒の中二勇者による、奇妙な旅が始まった――!