第2話「シール帳が封印アイテムだった件」
ステッキで魔物を撃退してから数時間。
私は、ランドセルの中身を改めて確認していた。
・シール帳(厚紙の表紙、コラージュ済み)
・ごほうびシール(星型、キラキラ加工)
・ペンケース(フルーツ匂いつき)
・折りたたみミラー(ヒビ入り)
・アクセサリー(指輪・ネックレス・なんかの王冠)
「……うん、冷静に考えて戦えないラインナップだなこれ」
そう思っていたのに。そう思っていたはずなのに。
「グルァァアアッ!!」
また出た。魔物。今度はさっきのよりでかい。
黒い体毛、二本の角、ヨダレ垂らして全力でこっち見てる。
無理! 今回ステッキの充電切れてるっぽいのに!
「え、えっとえっと……!」
私はランドセルを開き、何も考えずにシール帳を取り出した。
ふわっ――。
その瞬間、シール帳が淡く光り出す。
中に貼りつけた“ごほうびシール”が、一斉に浮かび上がり、空中で円を描いた。
《術式起動:拘束結界――「ごほうび★ぱにっしゅ」》
「なにそれ初耳!!??」
叫ぶ間もなく、星型のキラキラが弾丸のように魔物へと向かい、ズドン! ズドン! と命中。
最後には金色のシールがぺたりと魔物の額に貼られた。
\よくできました!/
魔物はそのまま、ぴたっと停止。硬直。動かない。
「……シールで封印した……?」
言葉にするとギャグみたいだけど、現実はもっとおかしかった。
私のシール帳、魔法アイテムだった。
というか、“この世界ではそういう扱い”らしい。
「なんで“ごほうびシール”で魔物を止められるの……平成、強すぎない?」
私は魔物に近づき、おそるおそる封印シールを剥がしてみた。
……すると、魔物はふわっと白い光に包まれ、まるで浄化されたかのように消えていった。
まるで「悪い子にお仕置き」された感じ。
――そう、これは「よくできましたシール」じゃない。“成長を促す魔法の刻印”なんだ。
「平成女児グッズ、マジでなんなんだよ……」
手の中のシール帳が、ぴかっと一瞬光った。
そして頭の中にまた声が響く。
《解放された神具:星之帳。レベル:1》
「いや名前、かっこよすぎない!?」
思わず叫んだ私は、もう一度ランドセルの中を見つめた。
もしかしたら、これ全部が“この世界での神具”……?
魔物退治して、封印して、神具の力を解き放っていく――。
「うわ、なにそれ、めっちゃプリキュアじゃん……」
こうして私は、平成の記憶とともに、異世界を生きていくことになった。
魔王討伐? 世界の運命? 知らないけど――
シールで世界が救えるなら、私に任せてよね!