第1話「転生したらランドセルとピンクのハートステッキが最強武器だった件」
目が覚めたら、知らない森の中だった。
木々はやたらメルヘンチックにねじれてて、空はパステルピンク。ふわふわ浮かぶ雲も、どう見てもマシュマロ。
これ、夢……? いや、違う。夢ならランドセルが重すぎる。
「……って、えええ!? なんで私、ランドセル背負ってるの!?」
私の名前は結城ひなこ。22歳、都内在住の地味なOL。平成女児ど真ん中で育ち、今でもたまにプリンセスごっこ用ドレスを捨てられずに実家に隠してるレベルには、未練たらたらな元・女児。
でも、目が覚めたら――
■ ランドセル(ピンク、刺繍あり)
■ ハートのステッキ(電池入り。光る)
■ キラキラのシール帳(当時物)
■ 鉛筆キャップセット(果物の匂い付き)
……など、平成女児グッズ完全装備で異世界に転生してました。
「ちょっと待って? なんでランドセル? OLだったよね私!? 転生ってそういうこと!?」
パニックの中、茂みからガサガサと何かが現れた。
出てきたのは、全身が黒くて牙が異様に長い……まさにファンタジーに出てくるような魔物、ってやつ。
「え、え、うそ……やばいやばい、こっち来ないでえぇえ!!」
とっさに、私はステッキを振った。
\キュピーーーン☆/
心の中で間違いなくそう鳴った。実際には「ブーン」て音だけど。
でも、次の瞬間――
ズドォォン!!
魔物が、ピンク色の光線に貫かれて、煙になって消し飛んだ。
「………………えっ?」
信じられない。ステッキ振っただけなのに、魔物消えた。
小さい頃に買ってもらった、某アイドル魔法少女風おもちゃのステッキが、今、明らかに“攻撃魔法兵器”として機能した。
「……これ、チートじゃん。」
呆然と呟いたその時、頭の中に聞き覚えのない声が響く。
《祝福されし者よ。貴女は“旧世界の遺物”を操る者。神の遺産使いとして、この世界の運命を変える者――》
「いやいや、レリックって……これ“プリティ☆ハートステッキDX”だよ!? 電池交換式だよ!?」
思わずツッコまずにはいられない。けど、現実はもうツッコミきれないところまで来ていた。
異世界転生。しかも、武器は平成女児グッズ。
帰り方もわからないけど……生き延びるには、これらを使うしかなさそうだ。
「……やってやろうじゃん。平成女児の底力、見せてあげるよ」
平成のキラキラと乙女心を武器に、ひなこの異世界サバイバルが今、幕を開ける――!