第13話「トラブルは街角から☆~ギルド登録と謎の追跡者~」
ギルド――それは、冒険者たちが情報を得て、依頼をこなし、報酬を受け取る拠点。
エル=フェリアの中心広場からほど近い場所に、重厚な木の扉を構えたその建物はあった。
「いよいよ冒険者デビューってやつじゃん? あたしたち、ユニット名決めないとじゃない?」
「ユニット名?」
リナはノリノリで、私はちょっと戸惑いながらゼフィルに目をやった。
「冒険者登録には名前が必要だが……ユニット名まではいらないぞ?」
「えぇ~、でもテンション上がらない? こう、平成魂が疼くっていうか」
私とゼフィルが顔を見合わせて苦笑いした瞬間、受付の女性がすっと立ち上がった。
「登録希望の方ですか? こちらの用紙にご記入を」
手際よく渡されたのは、羊皮紙に書かれた登録用紙。名前、得意分野、連絡手段(←どうやって連絡すんだコレ)、といった項目が並ぶ。
「ペンじゃないんだ……羽根ペンって、マジで使うのね」
リナはキャップを忘れたリップを握りしめながら、感心していた。
「名前は……“平成再臨”。どう?」
「絶対やだ」
「即否定かよ」
そんなやり取りを経て、無事に登録を終えた私たちは、ギルドカード(木製!)を受け取り、依頼掲示板を物色していた。
「とりあえず簡単なのから……ゴブリン退治、素材収集、荷物運び……」
「荷物運びは、まじ平成っぽい! 地味だけどバイト感あって好き」
そこへ、受付の女性が再び声をかけてきた。
「一件だけ、気をつけてください。“冒険者狩り”が最近現れ始めていて……」
「冒険者狩り?」
「登録したばかりの新参者を狙って、依頼中に襲う者たちです。盗賊のようなものですが……腕利きも多く、過去に命を落とした者も」
空気がピンと張りつめる。
「そんなやばいのいるの……?」
リナが一歩後ろに下がる。
私はギルドカードを握りしめた。
「でも、止まるつもりはないよ。私たちはこの世界で、生きてくって決めたから」
その言葉に、リナが笑う。
「そっか。じゃああたしも、平成の意地、見せるしかないか~」
と、背後で物音。
誰かが――扉の外から、こちらを見ていた。
黒いフードの人物が、じっと、じっと私たちの方を。
視線が交錯する。
瞬間、ぞくりと背筋が凍った。
「……今の人」
「感じたな。気配、ただ者じゃない」
ゼフィルが言う。
こうして私たちは、初めて“この世界の闇”の一端に、触れることになる。