第12話「異世界初☆街ブラツアー!~ギャル、文明の違いにキレ散らかす~」
森を抜けると、そこには想像以上に大きな街が広がっていた。
「うわ~、なんか…中世ヨーロッパ風!てか、マジで異世界っぽ~!」
石畳の道にレンガ造りの家々、露店からは香ばしいパンや焼き菓子の匂いが漂ってくる。
「ここは《エル=フェリア》という街だ。旅人も多くて、情報も集まりやすい」
ゼフィルの説明を聞きながら、私はわくわくが止まらなかった。
だけど隣のリナは、腕を組んで不満げな顔をしている。
「Wi-Fi飛んでないじゃん」
「当たり前だよ!!!」
私が叫ぶと、通行人がこっちをちらちら見てきた。
「てか、カフェないの? スタバとかコメダ的なとこ」
「ないよ!!!」
露店で焼きリンゴを買って渡すと、リナはしかたなくそれをかじった。
「……うん、美味しい。でも平成味じゃない」
「どんな味だよ…」
私たちは市場通りを歩き、広場へ出た。
そこでは大道芸人が火を吹き、子どもたちが駆け回り、旅人が旅の話を酒場で語り合っていた。
「こういうのも、嫌いじゃないけどさ……」
リナがぽつりとつぶやく。
「地図アプリないと不安になるんだよね」
私は笑って答えた。
「じゃあ、私たちが地図になってあげるよ」
リナは少しだけ笑った。
「……まじで言ってんの? そーゆーとこ、けっこう好きかも」
そのあと私たちは、宿屋を探し、街の掲示板を見てみたり、ゼフィルに案内されて冒険者ギルドを見学したりと、一日をめいっぱい使って歩き回った。
リナは途中、露店で「謎の透明液(たぶん怪しい美容水)」を買ってテンションを上げ、ギルドの受付嬢に「盛れるフィルターで写真撮らせて♡」と頼んで怒られた。
でも、どこかその姿が、街の空気と馴染んで見えた。