第11話「スマホは魔導書!?~平成ギャルのアプリ召喚~」
朝、森の空気は冷たく澄んでいて、どこか神聖な気配すら感じた。
私は火の残り香を感じながら目を覚ました。リナはブーツを脱いで横になり、スマホを胸に乗せて爆睡している。眉毛は寝ても完璧だった。
「……ほんとにこの子、異世界来てもブレないなぁ」
ゼフィルは早起きだったようで、焚き火の残り火に手をかざしながら言った。
「昨夜の話、悪くなかった。あんな風に誰かと気を抜いて話したの、久しぶりだ」
私はうなずいた。
「リナは変なとこ多いけど、頼れるよ」
そのとき、ピロリン♪という場違いすぎる電子音が、森に響いた。
「んぁ……何……アプリの通知……?」
リナが寝ぼけまなこでスマホを開く。
その瞬間、スマホの画面が眩しく輝き――
ぶわっっ!!
突然、リナのスマホからカラフルな光が噴き出し、空中に魔法陣が展開された!
「え!? スマホから!?」
「何これ何これ!? なにこの演出、超プリズムって感じ!!」
リナがキャッキャしてる間に、魔法陣の中から何かが浮かび上がってきた。
――それは、ピンク色のコンパクトミラーだった。
「召喚、成功だって♡」
スマホに文字が表示された。
ゼフィルが一歩引いて言う。
「今のは……魔法か?」
「多分、アプリ召喚? “変身メイクアプリ”入れてたから、なんか反応したっぽい」
リナはコンパクトを手に取って嬉しそうにくるくる回した。
「……で、何ができるんだろう、これ?」
パカッと開くと、ふわっとラメが舞い、リナの顔に自動でキラキラメイクが施された。
「ギャル魔法・ファビュラス☆エフェクト! ついでに、周囲の敵の目をくらませる追加効果付き!」
「ほんとに戦える魔法だった!?」
私とゼフィルは、同時にツッコミを入れた。
「てかさ、これって……平成女児アイテム、どんどん武器になってくじゃん?」
「うちら、平成魔法少女パーティー?」
「略して、“平マ法”!」
笑いが広がる中、リナのスマホが再び光る。
今度の通知は、「次のアプリインストール可能です」と表示されていた。
「……まだまだ、いけるっぽいわね♡」