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プロローグ「私たちはあの時、世界を信じていた」
私たちは、世界を信じていた。
シールを貼れば願いが叶うって本気で思ってたし、ステッキを振れば何かが変わるって信じてた。
真っピンクのランドセルを背負って、プリンセス気分で通ったあの坂道。
ドレッサーの鏡に映る自分は、いつだって“主人公”だった。
――平成。
それは、魔法がまだ“存在してる気がした”時代。
夢も希望も、キラキラした嘘も、全部まとめて信じられた最後の時代だったのかもしれない。
でも、いつの間にか私たちは大人になって、
あの頃の宝物を押し入れの奥にしまい込んだ。
「現実を見ろ」って言われて、
「可愛いものは子供っぽい」って笑われて、
「魔法なんてない」って知って、それでも――
それでも、私は、忘れたくなかった。
そして――目が覚めたら、そこは異世界だった。
ファンタジーみたいな森の中、背中にはピンクのランドセル。
手にしていたのは、かつて何度も夢を叶えてくれたハートのステッキ。
もう一度、魔法を信じていいって言われた気がした。
平成女児、22歳。
この異世界で、もう一度、“私の物語”を始めよう。