好きな子の好きなタイプ聞いたら地雷系だったので黒髪マッシュの黒マスクにしたら実は聞き間違いだった話
俺 塒 徹には好きな女子がいる。
立花 美咲。
俺の幼なじみである。
ある日、俺は思いきって美咲に聞いてみた。
「美咲って好きなタイプとかあるの?」
「急だね」
「いいから」
「んー、やっぱり地雷系かなぁ」
「ふーん」
そんな風なやり取りをしたのが確か中学3年生の時だった。
それから1年後___。
「どしたん、話聞こか?」
「あんたさ、話しかけてくるたび第一声が毎回それなのどうにかなんないわけ?」
「あー、それは俺が悪いわ」
「話聞け」
そう、俺は地雷系になっていた。
別に地雷系をよく知っているわけではない。
ネットで適当に漁って出てきた情報を頼りに自分なりに真似しているだけだ。
「あんた、なんか変わったよね」
登校中、隣を歩く美咲が俺のほうを見ながらなにやら複雑な顔をしている。
確かに俺の見た目はかなり変わった。
ボサボサの伸びっぱなしだった髪は綺麗に切りそろえられてマッシュになったし、涙袋の無かった目の下には化粧によって巨大なナメクジが張り付いているし黒マスクを付けている。
どこからどう見ても地雷系のはずだ。
「あんたさ、クラスでめっちゃ浮いてるの自覚してる?」
「え、別にフツーっしょ」
嘘である。
他の生徒が制服で生活している中、俺だけ丈の長い黒のTシャツに、何のために存在しているかよく分からないジャラジャラした鎖が付いているズボン、歩く度にガポガポ鳴る厚底のブーツを履いていて目立たないわけがない。
教師にも何度か注意されたが
「どしたん話聞こか?」
「あー、それは俺が悪いわ」
「先生は妹みたいなもんやし手出すわけないやん」
「じゃ、挿れるで」
と言っていたら呆れられたのか露骨に無視されるようになった。
正直、皆から白い目で見られるのは良い気はしない。
だが俺は美咲に振り向いて貰えるならなんだってするつもりだ。
まぁそんな感じで、地雷系が板についてきて多少自信のついた俺は美咲に尋ねてみることにした。
「なぁ、俺って地雷系だよな?」
「……どちらかといったらイタイ系じゃない?」
「おい! 美咲が地雷系好きって言ったんじゃねぇか!」
「え、私そんなこと言ったっけ?」
「言っただろ、中3に好きなタイプ聞いた時」
「え?」
「え?」
少しの間。
「私、地雷系が好きなんて言ってないよ」
「じゃあなんて言ったんだよ」
「"未来系"が好きって言ったの。ミ・ラ・イ系」
「………………は?」
俺は現実を受け入れられずにその場に膝から崩れ落ちる。
全ては聞き間違い?
……じゃあ俺が毎日頑張って地雷系になってきた日々は無駄だったって、、、コト?
てか未来系ってなんだよ。
「もしかして私の好きなタイプになるために毎日地雷系にしてたってこと?」
俺が絶望していると美咲が俺の傍にしゃがみこんでニヤニヤしながら覗きこんできた。
カァーッと顔が熱くなる。
「ちっ、ちげーよバカ! そんなんじゃねぇし!」
「いいって、いいって、もう分かったから♪」
「全然分かってない!」
クルッと背を向けて歩き出す幼なじみを追うために俺は立ち上がる。
追いついて顔を見ると笑顔で鼻歌を歌っていた。
……やっぱりめっちゃ可愛いなこいつ。
惚れたほうの負けとは言うが、もう負けでもいいからずっと傍に居たい。
「はぁー……これはお前が悪いわ」
「ん?」
可愛いお前が全部悪い。
こちらを向いて疑問符を浮かべている幼なじみと一緒に俺は学校への道を歩き出すのだった。
《二郎系に聞き間違えていた場合の世界線》
「おはよー美咲ー!」
「クッサ!! あんたニンニク臭すぎんのよ近づかないで!!」