セカンドゲーム
次に優が目を覚ましたとき、そこには知らないのにどこか懐かしさを覚える天井が広がっていた。
ここは…
ぼんやりとした頭で直前までの記憶をゆっくりと思い出す。
そうだ…いきなりゲームだっ言われて…周りは銃を撃って…僕はナイフで……
ガバッと完全に目が覚め起き上がる。ひっ、と悲鳴が聞こえた。
「お、おはよう、ございます……」
震えた声でなんとか言った様子の少女は、優達がいる教室の、教卓の前で震えていた。自分と同じ赤い変なスーツの様なものを着ている。
優もまた混乱しながら辺りを見回した。どこか懐かしさを覚える木の床や背後の掲示物。机や椅子はどこにもなく空間が広く感じる。見たことの無いはずなのに、初めての場所なのに地元に帰ってきたような懐かしさ。前にある黒板には『ようこそ第2ゲームへ』と白いチョークで、機械が書いたようにゴシック体の綺麗な字が並んでいた。
少女は教卓の前でペタンと座り込んで、何かを胸に抱えている。びくびくと怯える姿は、何かした訳じゃないのに罪悪感を感じるほどだ。
「あ、あの…」
「あ!は、はい!」
優は近づこうと立ち上がるが、肩を跳ねさせた少女はぎゅう、とその場で縮こまる。強く胸に何かを抱えたまま、動く気も無さそうだ。陰キャのコミュ障にはダメージがデカい。
「な、なんでしょうか……」
「あなたも…巻き込まれた人?」
勇気を振り絞って少女に尋ねる。
「わ、分かりません……。いっぱい銃を、撃って、撃って、うって。気がついたら、ここにいて」
少しずつ近づくと、10代くらいの髪の毛の短い少女だと言うのが何となく分かった。恐らく高校生くらいだろうか。ストレートの前髪が俯いた顔を隠してどんな表情をしているのかよく分からない。ただ、震えた肩からは酷く脅えたように見えた。
「気が付いたら、ここにいて。しばらくしたらビーってゲームみたいに光って、あ、あなたが」
少女の説明になるほど…と呟く。
顔を上げた少女が怖がらないように眉尻を下げて優しく笑う。
「僕も……あなたと一緒なんです。何も分からないうちに巻き込まれて……。でも二人ならここから出る方法がもしかしたら分かるかもしれない」
そう言って安心させたかったのは大人の意地のようなものだった。でも何も考えずに言っておいて、二人ならどうにかなるかもしれないと思う。初対面の脅えた少女。同じ境遇の二人なら、ここからどうにか。
宛などあるはずもなく、希望をただ見ているだけ。
それでも良かった。
……ただの願望だった。どうにかなると、そう思っていたかった。
消える前に最後に見た男の姿が、まぶたの裏に残っていた。訳が分からないままこんな所に来て、真っ白になりそうな頭をずっと誤魔化して回していた。だから彼女が何を抱えていたかなんて分からなかった。
『プレイヤーのみなさん、おはようございます。ようこそ、セカンドゲームへ』
希望を打ち砕くように無慈悲にアナウンスがスピーカーから流れ出す。
『セカンドゲームのルールは簡単。一対一の対戦です。どちらかが戦闘不能、または死亡するまで戦闘を続けてください』
少女が耳を塞いで俯いた。
『武器は事前に配置済みです。エリアは各教室の範囲内。窓ガラス等の破壊は問題ありませんが、エリア外への移動は禁止とします』
淡々と低くもなく高くもない声が教室に響いた。
『それでは、ゲームスタート』
ブーーーーと、低い開始を告げるブザーが鳴る。
「い、いや……死にたくない……」
少女が泣きそうな声で言ったのが、妙にはっきりと耳に残っていた。
ページ替えられないのにビックリしました