表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

魔弾の悪魔狩り カミラ・ワシントンの復讐の物語

魔弾の悪魔狩り カミラ・ワシントン


職業·銃士ガンナー

種族·人間ヒューマン

MBTI:INTJ

アライメント 混沌·善


運命を弄ばれた幼少期の親友、アリスに辛酸を舐めさせた悪魔に復讐を誓う赤髪の女性銃士。

対象を確実に討つ魔弾と悪魔対策の道具、そしてマスケットを用いて活動している。

普段は自らの感情を表に出さず、日々淡々と悪魔狩りに奔走。

しかし悪魔や悪魔と通じる者に対しては言葉を荒らげ、熾烈かつ人道を無視し行動することも。

フィリウス・ディネ王国の冒険者が一夜にして大量殺戮された事件を耳にし、悪魔を狩り人々の世に平和をもたらす為、仇を探し復讐を果たす為、彼の地へと足を踏み入れる。

雨の降りしきる鈍色の曇天をマスケット銃を手に、黒の帽子に黒コートを纏う女性が、ウェーブのかかった赤の長髪を振り乱す。

隙間なく細長い木々の生えた林の隙間を、駆け抜ける2つの影。

彼女はとある1人の青年を、ひたすらに追跡する。

衣服には血が滲み、虫食いのように銃痕が貫く。

傍からみれば彼は野盗か狂人に襲われた、哀れな人間だろう。

しかし彼女の双眸だけはその正体の本質を、真実を見据えていた。


「……ハァハァ、い、嫌だ、助けてくれぇ……!」

「人をのうのうと喰らいながら、人に紛れて人に縋るとは。なんと哀れな怪物だ……案ずるな、すぐに引導を渡してやる」


青年を冷徹に追いかける狩人は顔色1つ変えず、背に向けて発砲した。

反動で大きく仰け反った彼女は銃弾に並々ならぬ殺意を込め、当たれと懇願する。

しかし木々が壁になり上手く狙いが定まらず、思わず舌打ちし、間隔を置かずに発射し続けて熱を帯びた銃を強く握り締めた。

銃砲身内に螺旋状の(ライフリング)がないがために空気抵抗を受け、気紛れに動く銃弾は命中させることさえ困難を極める。

動きながらとなれば尚更だ。


(村にでも逃げられると面倒だな。ここで仕留めるか)


撃鉄を引いた悪魔狩りは固めの紙製カートリッジを噛み千切り、中の火薬を火皿に注ぎ入れた。

次いで筒の下の細長の槊杖かるかを取り出し、銃弾を銃身の奥に詰め込むと鳥の頭―――コックと呼ばれる燧石(すいせき)の部分を引く。

……迅速な決着を。

逸る気持ちを抑えられずに撃鉄を起こすと、鳥の頭が当たり金にこすれた瞬間、彼女の視界が紅に染まるほどの火花が飛んだ。

発射の反動で思わず銃口は天を仰ぎら森が燃えたかと錯覚する煙が立ち昇る。

……やったか?

硝煙の匂いに彼女は目を細め、悪魔の出方に備えるも


「ギャハハ、悪魔狩りが獲物にみすみす逃れられるとはなぁ! 無能が相手で命拾いしたぜ!」


しかし敵はピンピンしており、さらに視界に映る先は木の柵に囲われた村。

人間の中に紛れれば逃げようなど、いくらでもある。

勝利を確信したような悪魔の嘲笑が響く中、彼女が放ったのは悪魔を確殺する執念が込められた魔弾。


「……なるべくこれは使いたくなかったが。もういい、去ね、外道め」

「ハハッ! まともに当てられもしねぇ悪魔狩りの癖に、口だけは達者だな!」


間近に村が迫っており、慣れた手つきで発射された渾身の一発は、悪魔の顔の横を逸れる。

風をも切る速度の銃弾が、もし命中していれば……悪魔の余裕は消え失せ、瞬きを繰り返した。

頬を掠め、肉が抉れた傷を触った悪魔の顔面からは大粒の汗が垂れ落ち、死神が音もなく背後に忍び寄ったのを両者が肌で感じた。

だが悪魔は一世一代の大勝負を勝った、乗り切ったのだ!


「ヒ、ヒヒッ! ……大一番で殺そうとするなんて。どうやら人間を舐めすぎたな。それは認めてやるさ。だが結果が全てさ! 村の連中の魂をたらふくたいらげたら、すぐにでもテメーを喰ってやる!」

「……」


悪魔狩りを制したという虚勢、生き延びた安堵が混じり合い、語気を荒げ悪魔は告げた。

だが彼女の相貌は絶望に満ちた顔でも、悔しさに歯噛みした形相でもなく、悪魔の想像だにしない―――心を見透かす冷笑を浮かべていて。

底知れぬ人の悪意を垣間見た悪魔は冷静さを取り戻し、〝まだ策がある、戦いは終わっていない!〟との焦燥を感じたのか、一目散に大地を跳ねた。

とにかく村へと着いてしまえば、悪魔狩りの行動は抑制できる。

オークの木を駆け抜け、目と鼻の先にまで村に接近し、思わず相好が綻んだ刹那


「ゔがぁおぉ……!!!」


悪魔の絶叫が周囲に木霊し、彼は地面に倒れた。

何をしたのだ、あの人間は……死神の鎌が首に食い込んで死が差し迫る中、悪魔が霞む瞳をこじ開ける。

すると胴と繋がっていた脚が吹き飛んでいるではないか。

迂闊だった、まずい……獅子に相対した兎が逃げ回るように、悪魔の脳内を逃走の二文字が占める。

それは悪魔のみならず、人にも根差す生存の本能。

もはや勝敗は決し、後はどちらかが生くるか死ぬかの状況だ。

とはいえ脚が動かないのだから、どうしようもない。

村人は変身さえしていれば、いくらでも誤魔化しが効く。

……こいつさえどうにかして撃退できれば、生き延びる可能性も。

苦悶に顔を歪めた悪魔が勝機を探ると、地面に落ちた鉛玉が視界に入る。

マスケットの銃弾を成す部分だ。

ただでさえ命中が難しいのに、あれほど精確な射撃。

―――獲物の生命を刈り取る魔弾に違いない。

しかしあれほど出し惜しみしていたのだ。

即ちもう装填する魔弾はないと考えて、問題はなさそうだ。


勝つ、勝てる!  

魔弾なき悪魔狩りなぞ恐るるに足らず!

村についた暁には治癒を早急に済ませ、悪魔狩りの準備が整う前に確実に殺す!

この恨み、必ず果たす!


「……グヒッ! ヒャハハハッ!」


這いずって村へと向かう悪魔は激痛に耐えるべく、歯を強く食いしばるも、隙間からは勝利の高笑いが漏れ聞こえた。

あと数10cmで願いが果たされる……かと思いきや、落下したその銃弾は烈しく回転し、魔物の無防備の腹を抉る。

予想の範疇を超えた攻撃に油断し、口から吐血して悶絶する怪物が目を血走らせた。


「ギザマァァ……ッ! ナニヲォォッ!」


最後の抵抗を試みた悪魔は刀の如く鋭利な爪を出すも、悪魔狩りが瓶に入った無色透明の水を浴びせると、それが皮膚に触れた瞬間に悪魔の肌は紅に焼け爛れ、言葉にならぬ叫びを上げだした。

悪魔が忌み嫌うアクア・エテルの聖水。

神聖な地には悪魔が立ち入らぬよう、必ずといっていいほど、各地で聖水を洗礼の儀式に用いている。

暫くすると人の形をしたモノは山羊の角を生やし、黒の翼膜を広がらせ、本来の姿へと戻り始めた。

物言わぬ遺体を調べるも、彼女の求めていた品はなく。


「……こいつも違うか、あの子の手掛かりは得られず終いだな。だが絶対に諦めはしない。もう1人で泣かせないよ……アリス……」


瞳を閉じるとどしゃ降りの雨が、彼女の頬を濡らす。

マスケットが使い物にならなくなる、早く村に入らねば……

思いとは裏腹に両脚は動かず


(……私は泣いているのか。悪魔を殺す悲願が果たされたというのに)


明確な答えのない自問自答を繰り返す。

けれどもアリスを救い出し悪魔を討ち滅ぼす日まで、この双眸に涙を浮かべ、欷歔(ききょ)するわけにはいかない。

袖で眼を拭うと騒ぎを聞きつけた村人が彼女に、悪魔が横たわる状況を見て悟ったのだろう。


「もしかして悪魔狩りの方ですか? 王国が今、大変なようで……どうぞ、歓迎します」

「はい、悪魔狩りカミラです。悪魔でお困りのようなら、私が協力致しますので」


目深に帽子を被り直すと胸に秘めた闘志を隠し、案内されて村へと入っていく。




続きは完成次第、noteにて有料で販売します。

興味のある方は、作者を応援してくださる方はぜひご購入くださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=120787461&size=88
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ