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解説

お待たせしすぎてしまい申し訳ありません

人類居住可能惑星bt-448-3、通称「セントエルモ」には謎の攻撃メカニズムがあり、探査船アルゴー号内ではこれを「魔法」と名付け、調査を進める中で情報提供者の村長から驚きの発言があった。


「…魔法、ですか。私が使えますが。」


「なんですって!?…あ、いえ、失礼しました。」


思いがけず魔法の使用者と遭遇できたことで興奮してしまった。

だが、本当に目の前にいる老人が魔法を使用することができるのだろうか。


「ええ…もしやポホヨラの軍勢に魔法士がおりましたかな。だとするとやはり運がない。今は昔ほど魔法士の数が多くないのですがな。」


「そうだったのですか。私達の世界には魔法がなかったもので、もしよろしければ魔法というもののことをお教え願えないでしょうか?」


この老人の言うことが全て正しいと決めつけるのは早計だが、少なくとも聞き出せるだけ聞き出さなくてはな。


「……魔法を教えるということは、私が今まで積み上げてきた研鑽を全て教えるということです。そうおいそれとお教えするわけにはいきませんな。」


村長の顔には強い警戒が浮かんでいる。


「いえ、我々が魔法を使えるようになりたいわけではなく、魔法がどんなものかをだけ教えていただきたいのですが…。」


「魔法について教えるということが、どのような形であれ私の魔法の知識は経験からきている以上、なんの対価もなく親切から教えることはできませんな。」


村長は私達に魔法の知識を渡すことに強い拒否感を覚えているようだ。ここで無理強いして情報源を失うわけにはいかないな。


「でしたら、魔法を使っているところを見せていただくわけにはいきませんか?それについて解説をしていただかなくても結構です。ただ、見学だけさせていただきたい。」


魔法を使うところを情報科の持つ機材で計測できれば解析ができるかもしれない。


「………よろしいでしょう。では。」


そう言って村長が立ち上がったとき、外から住人が血相をかえて家の中に駆け込んできた。


「村長、大変だ!ポホヨラの連中が!」


「なんだと!?お客人、申し訳ないが少しここでお待ち願いたい。」


「承知しました。」


どうやら懸念していたポホヨラとカレワラの戦闘に巻き込まれる可能性が高そうだ。


「自衛科隊員は各自携行している武器の点検を行え。」


「「了解。」」


自衛科隊員達は万が一に備えて武器を取り出していじり始めた。


「揚陸艇警備班、敵性勢力が近づいている可能性がある。警戒を厳にしろ。」


<了解。>


揚陸艇の方も警戒を強めるらしい。


「自衛科としては撤収の判断か?」


「いえ、もしこの集落を包囲されているなら、それを突破して撤収するのは難しくなります。村長とポホヨラとの交渉次第ですね。」


自衛科も無理はしたくないのだろう。



戸の外から村長と誰かが言い争う言葉が聞こえてくる。


「我々に逆らいたいということなのか?」


集落の入り口に立って村長に高圧的な態度で声をかけている人物がいる。

今は降りているようだが、馬がそばに控えていることから騎士のようだ。

前回の調査の際に出会った騎士と顔つきが違うので別人だろうか、鎧は同じに見える。


「滅相もありません。我々はポホヨラの民と違い冬に向けて蓄えをしなければならず、食料をお渡ししてしまえば冬を越せぬ者が出てしまいますので。」


「ふん、カレワラの貧乏人が何人死んだところで知ったことではないわ。」


村長は越冬のために食料を供出するのはなんとしても拒否したいようだ。

だが、ポホヨラの騎士はお構いなしに食料を徴用するつもりでいる。


「そうおっしゃられるな。ポホヨラの方々なら自国で食料も賄えますでしょうに。」


「…賢者とよばれたドルイドが惨めなものだな。」


騎士はそう言うと侮蔑の表情を浮かべた。

村長はドルイドという名前らしい。それに騎士が名前を知っていることからそれなりになの知られた人物なのかもしれない。


「いやはや、今はしがない村長風情ですからな。」


「ふん、昔からそうだが相変わらず小賢しいな。」


騎士の口ぶりからもしかすると個人的な知り合いなのかもしれないな。


「だが、それも今日で終わりにさせてやろう。」


騎士がそう言って右手を上げると、周囲にいる部下と思われる人達が武器を構える。


「不味いですね。ポホヨラは最初から武力行使するつもりです。」


自衛科隊員が話しかけてくる。


「どうする。村民に味方してこちらでも武力行使するのか?」


「身を守るためにやむを得ない場合はそうです。ですが、基本的に戦闘の混乱に乗じて揚陸艇まで撤収しましょう。ここに留まることは無理です。」


「そうか、彼らを連れて行くことはできるか?」


「村人達を、ですか?数人ならともかく全員となると相当難しいですね。」


自衛科隊員は村人を連れて行くのは難しいというが、できれば情報源として村人は保護したい。


「そこをどうにかしてくれ。」


「…了解。」


自衛科隊員達は少し不満そうだが、仕事はこなす連中だ。なんとかするだろう。


「自衛科諸君!これより村人を保護しつつ揚陸艇まで撤収する!Aグループは女性と子供を優先して保護しろ。Bグループは外に出ている男性と村長の保護。Cグループは敵性勢力へ攻撃を加えて牽制を行う。揚陸艇警備班はパルスレーザーの暖機を開始。」


「「了解。」」


自衛科の連中が撤収に向けて動き始める。

さて、こうなってしまうと私の仕事はないな。


「部隊長、これから揚陸艇に撤収するまで一切の権限を君に委譲する。好きにやれ。」


「…了解。」


彼は意外そうな表情を浮かべるが、私とて好き好んで移譲する訳じゃない。



情報科の調査チームから指揮権を移譲されるのは予想外だった。頭の固い連中だとばかり思っていたが、話の分かる奴もいるにはいるみたいだな。


「よし、まずはここにいてもしょうがない。B、Cグループは俺と一緒に外に出るぞ。Aグループはここに留まり、合図とともに情報科と女性、子供を連れて脱出だ。」


「「了解。」」


そういうと俺と部下達は騎士と村長のところまで出てきて身を晒す。


「…ん?お前たち何者だ?見たことのない服装をしているようだが。」


「お客人?!何故出てこられた!?」


騎士は俺たちの白色ボディアーマーが気になるようだ。それに村長は俺たちが出てきたことにかなり驚いているようだ。


「いやなに、この村には少しばかり世話になっていてな。あんたらの振る舞いが目に付くようだから居ても立っても居られなくなってな。」


「ふん、剣も持たぬ貴様らに何が出来るというのか。」


騎士は俺たちが剣を持っていないことでかなり侮っているようだ。


「さて、それはどうかな?…Cグループ!射撃用意!」


俺がそう号令を下すとCグループの隊員達が一斉にライフルを構える。


「なんだ、それは?何をしようというんだ?」


「これは最後通告だ。今すぐこの村から立ち去って貰おう。」


「は!そのような魔法杖ですらない物を構えられてもなんとも思わんわ!すっこんでいろ!」


騎士は我々の銃器を理解していないようだ。だが最後通告をしたことでアルゴー号の規則上、制約なしで火器の使用が可能になったな。


「Cグループ!射撃開始!」


俺の合図とともにCグループが射撃を開始する。射撃時に発生する熱を吸収する際に発生した重金属の蒸気が銃の隙間から排出され、さまざまな色を放つ。


「うわぁ!?」「ぐあ!!」「なんだ!?」


Cグループの光学銃が放ったレーザー弾に被弾したポホヨラの軍勢から悲鳴が上がる。


「Bグループは村長及び住人を保護しながらAグループと合流!CグループはA、Bグループを守りつつ徐々に後退!」


「「「了解!!」」」


普段は実弾を用いていた訓練は行えていないが、連携を行っていた成果が出ているのか行動に迷いはない。


「くっ…面妖な。一度退却して体勢を立て直す!」


騎士は退却の指示を出している。口調だけは勇ましいが、言っていることは逃げの一言だな。


「Cグループは深追いするな!この隙に揚陸艇まで退却する!」


隊員達が射撃を中止すると、ポホヨラの軍勢は揚陸艇とは別の方向に退却していった。


「よし、撤収!」


「「「了解。」」」


そう号令を出して撤収を準備していると村長が歩み寄ってきた。


「お客人、我々もいかねばならぬのですかな。」


「おそらく彼らは再度攻撃を仕掛けてくるでしょう。我々とともに来ていただければ、お守りすることができます。」


そういうと村長の表情が曇った。


「そうは言いましても、避難とは生活を根こそぎ捨てることを指します。老いぼれのこの身だけならまだしも、村の者全員というのは難しいでしょう。」


「しかし…」


まさかここまで村長が渋るとは…


「…では、こういうのはどうですかな。村の者達の説得は私がいたしましょう。ですが、避難し状況が落ち着いたら、この村の奪還をあなた方に依頼したいのです。」


「それは…申し訳ないが我々の一存では決めかねる。揚陸艇に戻りアルゴー号に確認を取る必要がある。揚陸艇自体はここから近い場所にある。ひとまずそこまで着いてきてもらうことはできないだろうか。」


村の奪還ということは下手をするとポホヨラとカレワラの戦闘に巻き込まれる可能性が高い。撤収後にポホヨラがこの村を占領していないならば村人の護衛程度だろうが、もし占領していたなら確実に戦闘になる。


「…分かりました。では、村の者達に話をしてきましょう。」


そう言うと村長は村の住人達が集まっているところへ向かって歩いていった。

本来ならこのまま我々だけで撤収したいが、情報科からの要請は無視できんしな。


「おい、本当にそんな条件を呑むつもりか?」


情報科の調査チームのリーダーがこちらを睨みながら話しかけてくる。

元はと言えばこいつの発言が元なのに随分偉そうだ。


「呑みませんし呑めませんよ。上もそんな条件は許可を出さないでしょうし、ポホヨラの軍勢が撤退したことを確認するまで揚陸艇で匿う程度が関の山でしょう。」


「それもそうか。ひとまず揚陸艇に戻るまでは君に指揮権は預ける。我々と村人達を無事に連れて行ってくれ。」


「了解しました。」


今後の展開の予想を伝えると、リーダーは納得したのか離れていった。


「住人達の説得が終わり次第、揚陸艇に向けて撤収する!Aグループは先導、Bグループが殿だ!Cグループは双方を支援できる位置で住人達の護衛だ!各グループともグループ内のポジションを確認しておけ!」


「「「了解!」」」


自衛科隊員達が準備を進めると村長が話しかけてきた。


「村の者達の説得が終わりました。我々の命をお預けいたします。」


「分かりました。では早速ですが出発しましょう。」


俺が合図を出すと集団は揚陸艇に向けて歩き始める。

子供もいるし進むスピードも上がらない。こんな事になるなら揚陸艇に移動車でも積んでくるんだったな。


揚陸艇に向けてそれほど歩きやすいとも言えない道を歩いていると揚陸艇の警備をしている連中から無線連絡が入る。


<こちら揚陸艇警備班。後方約800メートルより接近する音源を探知。相対速度はおよそ5m/s。>


不味いな。このままだと揚陸艇に到着する前に追いつかれる。おそらくポホヨラの軍勢だろうし最低でも揚陸艇で迎え撃つ形にしなければな。


「了解。全グループ行進速度を上げろ!」


「「「了解!」」」


そのまま少し行進速度を上げて揚陸艇に向かって歩いていると、後方で草をかき分ける音が聞こえる。


「来るぞ!急げ!」


そう叫ぶと同時に揚陸艇が視界に飛び込んでくる。


「揚陸艇警備班、Bグループより後方は接近してくる集団だ!光学解析でポホヨラと判断したら射撃を開始してくれ!」


<了解!>


揚陸艇まで後200mを切ったところで揚陸艇の設置型パルスレーザーの蒸発重金属のスペクトルが瞬く。

後方で叫び声が上がるが、そのまま走り抜けるしかない。


「振り返るな!そのまま走り抜けろ!」


集団全体が一気に揚陸艇まで駆け抜ける。


「Aグループは揚陸艇に到達次第、後続の援護射撃!」


そう号令を下すとほぼ同時に先頭のAグループが揚陸艇に到達する。


「村の住人と情報科はそのまま揚陸艇に駆け込め!Bグループ最後尾が到着後、Aグループは交代で揚陸艇に退却!」


なんとか全員揚陸艇に駆け込めそうだな。


「Aグループ退却開始!」


Aグループのリーダーが退却を伝えてくる。


「設置型パルスレーザーはメインゲートが閉まるまで射撃を続行!」


そう言うと同時にゲートが閉まり始める。Aグループの射撃による圧力が減ったからか弓矢を番えている兵士がいる。


「弓矢を撃たせるな!射手を狙え!自衛科隊員はゲートから離れろ!」


それでも全ての射手を制圧することはできなかったのか何本かの矢がゲートに当たる音がする。

幸い揚陸艇内に矢は届かなかったものの、閉まりかけたゲートの隙間から乗り込もうとする人の影が見える。


「クソッ!」


俺が銃を構えようとすると村長が声を上げる。


「Valo, tunkeutuminen.≪光よ、貫け≫」


そう言うと村長の手から光弾が発射される。光弾に当たった人影は吹き飛ばされる。

これが魔法か…抵抗は難しいんじゃないか?

そう呆然としていると揚陸艇のゲートが閉まる。


「全員いるようだな。ここからは私が指揮を取るぞ。」


情報科の調査チームリーダーが声をかけてくる。


「ええ、指揮権をお返しします。」



自衛科の誘導で調査チームと村の住人達が全員、揚陸艇に戻ることができた。

普段は日の目を浴びるようなことは無い連中だが、セントエルモについてからは役に立つようになってきたな。


「リーダー!アルゴー号から通信です!」


先程簡単にまとめた報告を受けてアルゴー号から何か指令が来たのだろう。

十中八九、安全を確保して村人達を村まで送り返せと言われるのだろう。

なんとか猶予をもぎ取って情報を集めなければ…



「こちら、調査チームリーダーです。」


アルゴー号の通信に応えると、艦長直々に通信をしているようで、たまにしか聞かない艦長の声が聞こえる。


<コンタクトした村人達を、村長を含めてアルゴー号まで連れてきてくれ。>

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