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夏のホラー2022【ラジオ】

※この作品は公式企画「夏のホラー2022」の投稿作品になります。

達彦「いやぁ、始まりました! 深夜の僕たちのラジオ放送」

昭雄「そうですね! 今夜は特番の夏のホラーになります!」

達彦「改めて! メインパーソナリティーの達彦タツヒコと!」

昭雄「永遠のアシスタントの私、昭雄アキオがお送り致します!」


都内のラジオ放送局のスタジオ──そう、何も変わりはない普段通りの放送が始まるのだった。


達彦「いやぁ、今の時間は蒸し暑いですからねぇ!」

昭雄「えぇ! そこで私たちがリスナーの皆さんの身体も心も冷やそうという定番の企画ですね!」

達彦「でもね! 昭雄くん! 今回は凄いよー! 全国のリスナーから怪談話を集めて選りすぐりの1作品をここで読み上げちゃうんだ!」

昭雄「それは怖そうですねぇ! リスナーの皆──君の作品が読み上げられちゃんじゃないかな?!」


ハハハ! とスタジオの外のスタッフ達の笑い声が聞こえて来るのだった。


達彦「えーと……あぁ! これだこれ!」

昭雄「へぇー! これは血糊ですかね!?」

達彦「クンクン──いやぁ! でも血の匂いはしませんね!」

昭雄「達彦さん! 血はもう既に固まってますからね! 匂いなんてしませんよ!」

達彦「それはそうか!」

達彦・昭雄「「ハハハ!」」


そんな中──スタジオの外では……。

プロデューサー「あー……君!」

スタッフ「あっ! はい!」

プロデューサー「あの手紙──番組で選考して決めたものとは違うと思うのだが……」

スタッフ「あれ……確かに。確か──選考したのは可愛い封筒だったような?」

プロデューサー「うーむ……」

スタッフ「プロデューサー……どうしますか?」

プロデューサー「番組は始まってしまってるからな……止める訳にも行かん」

スタッフ「確かに」

プロデューサー「彼らも、もう既にベテランだ。任せようじゃないか」

スタッフ「そうですね!」


そして、達彦と昭雄は血糊のされた手紙を開けるのだった。


達彦「えーと……何々?」

昭雄「どうしたんですか? 達彦さん?」

達彦「ほう! 面白い! この手紙の内容は怪談らしくて丁度僕たちが読み上げる回が記念すべき100回目みたいだ!」

昭雄「それはホラーですね!!」

達彦「いやぁ! こういうのが良いんですよ!」

昭雄「ラジオ冥利に尽きますね!」


そして、達彦と昭雄は手紙の怪談を読み上げるのだった。


達彦「これは……ある一家の話になります」

昭雄「おや? 何か達彦さん……写真が落ちて来ましたね!」

達彦「ふむ──同封されている写真は一家が最後に遺していた写真になります……との事みたいだ!」

昭雄「わお──バッチリ4人の家族の後ろに長い濡れた黒髪の女性が映ってますね!」

達彦「何々……この写真は家族が夏の時期に海に出掛けた際に撮られた最初の一枚目との事みたいだ!」

昭雄「ホラーですねぇ。 なんだか私身体が冷えてきましたよ!」

達彦「ハッハッハ! 昭雄くんは怖がりだねぇ!」

昭雄「でも、話は何故か気になりますねぇ! 続きをお願いしますよ!」


そして、達彦と昭雄は手紙を読み上げていく。

家族たちの最初の一枚目にこの女性が映り込んだこと。

そして……海水浴場について宿にも泊った事──。


達彦「その宿がとても良い眺めの海の見える宿だったらしい!」

昭雄「良い宿だったんですねぇ!」

達彦「でも、それが仇となるらしい」

昭雄「どういうことです?」

達彦「いや──待て待て昭雄くん。僕も気になってるんだ、さぁ読み上げていくよ」

昭雄「えぇ! お願い致します」


そして、その日の夜──。

突然子どもたちが起き上がり、無意識に近いように宿から海へとフラフラと歩き出すのだった。


達彦「そして両親はお手洗いに行きたく目を覚まして──外を見てみたら……」

昭雄「ゴクリ──」

達彦「なんと子どもたちが海へとその身を沈めて行ってるではないか!

昭雄「大変じゃないですか!!」

達彦「あぁ──大変だ! 親たちは一心不乱に海へと向かったらしい」

昭雄「らしい……?」

達彦「そうみたいだ──手紙にはそれは宿の従業員の想像も含むと書かれてるからな」

昭雄「それはある意味ホラーですねぇ」

達彦「あぁ! 僕もこれは……創作──的な意味合いを感じてホラーかも知れない」

昭雄「でも、私そういうの嫌いじゃないですね! 続きは?」

達彦「そうだね! さぁ──クライマックスだ!」


そして、子どもたちを追いかけた両親たちは何とか海中で静かに溺れ沈んでいく、子どもたちを抱きとめるのだった。


昭雄「へぇー! それで助かったのですね!」

達彦「いや──! 違うらしい」

昭雄「と、言いますと? 達彦さん?」

達彦「その後が問題らしい」

昭雄「…………」

達彦「なんと親たちも静かに溺れ始めて──海の奥底へと静かに沈んで行ったらしい」

昭雄「なんですと?」

達彦「ここに宿の従業員が見た光景が書いてある」

昭雄「ゴクリ────」

達彦「海の向こう側に大量の黒い何かを携えた黒い長い髪の女性が居たらしい」

昭雄「あぁ──この写真に繋がるわけですね!」

達彦「あぁ! そうらしい! その従業員いわく、助けに向かったら自分も取り込まれると感じたらしい」

昭雄「それでその一家はどうなったのです?」

達彦「後日──水死体として発見されたらしい」

昭雄「それは──」

達彦「そして、その水死体にはおびただしい程の人の手の痕が付いていたみたいだ」

昭雄「ひえー! 怖いですねぇ! 私、遂に心までも冷えてしまいましたよ!」

達彦「あぁ──僕もだよ! これで100回目の記念すべき怪談は終わりみたいだね!」

昭雄「ラジオ冥利に尽きますねぇ!」


そんないつものスタジオの──いつもの達彦と昭雄が居たのだった。

居たのだったが達彦と昭雄は違和感を感じてしまうのだった。


達彦「あれ……?」

昭雄「どうかしましたか? 達彦さん?」

達彦「なぁ、昭雄くん? スタッフたちの笑い声が……聞こえなく無いか?」

昭雄「あれ……確かに私たちのラジオはそれが売りですものね?」

達彦「────?」

昭雄「でも、ほら? スタッフたちはあそこに皆……」


そして、昭雄がスタジオの外を見て何とも言えない表情になったのを達彦は見て──違和感を感じた達彦もスタジオの外を見るのだった。


達彦「昭雄くん……」

昭雄「はい──達彦さん」

達彦「動いてないよな?」

昭雄「──ですね」


達彦と昭雄は遂に静まり返ったスタジオで外のスタッフたちが静止して動かないのに気付くのだった。


昭雄「うわ──達彦さん!」

達彦「なんだ──あれは……」


そして達彦と昭雄が気付いたのに合わせてか、外のスタッフたちの顔が溶け出して──それは全身を。

全身に続いてスタジオの外の風景も溶け出していくのだった。


達彦「夢じゃないよな?」

昭雄「えぇ──夢じゃないと思います」

達彦「どうなっているんだ……」


達彦と昭雄は溶け出した向こう側のスタジオの外の景色を呆然と眺めるのだった。

そこは地獄とでもいうのだろうか──。

異界の者たちが跋扈ばっこしている景色が広がっているのだった。


???「おい──!」

達彦「え?」

昭雄「何ですか!?」


突然スタジオ内に知らない、しわがれた声が響いてくる。


???「100回怪談を話したのだろう? ようこそ! 霊界へ!」

達彦「霊界?」

昭雄「あの世って事ですかね?」

達彦「いやいや──昭雄くん、でもこれは霊界というより……」

昭雄「地獄っぽいですよね?」


そして、自分たちに気付いたのか異形の者たちが達彦と昭雄のスタジオへとブース越しに集まり始めるのだった。


???「あぁ──そうか現世では地獄と呼んでるのか!」

達彦「では地獄と?」

???「100回怪談を読むのは深い罰だからな!」

昭雄「ですが……私たちは1回しか読み上げて──」

???「関係ない! 我らが99回読み上げて……最後にお前らに100回目を読ませたんだ!」


達彦と昭雄はそれを聞いて目を丸くする。


達彦「えっと──」

???「ここは娯楽が少ない、とぼしい、つまらん」

昭雄「はぁ……?」

???「お前たちは現世での大ベテランの面白いやつらと聞いた!」

達彦「と、言いますと?」

???「お前らの魂は既に罰として地獄に堕とされた!」

昭雄「えっ?」

???「お前らはこれから……ここで我らにその罰が晴れるまでラジオを続けるんだ!」

達彦・昭雄「ヒエェェー!!」


────*


達彦・昭雄「「さぁ! 始まりました! 地獄の沙汰もラジオ次第!!」」

達彦「メインパーソナリティーはこの永遠の獄中パーソナリティー達彦タツヒコと!」

昭雄「アシスタントはこの永遠の獄中アシスタントの昭雄アキオがお送り致します!」


ヒャヒャヒャヒャ!! ──異形の者たちの面白おかしい笑い声が響き渡るのだった。


────*


【夏のホラー……知らない手紙の100回目の怪談にはご用心──】

地獄の沙汰もラジオ次第──始まっちゃいましたね!

達彦と昭雄の罪が清算される日は来るのでしょうか?

はたまた彼らは新天地を見つけたりと地獄ライフを謳歌おうかしていくのでしょうか?

ですが──皆さま。

分からない手紙……そして100回目の怪談には御注意を。

あなたにも気付かない内にコワーイあの世の案内状が届いてるかも知れないのですから。

※お読み頂き、ありがとう御座いました。

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