これでは巻き込ま令嬢ですわ〜
わたくし、王室の王太子レースに、傍観者の位置で、巻き込まれておりますわね。
頬に手を当て、首を傾げます。
そもそも、婚約破棄的な騒動は、予想しておりましたの。
カルッカ殿下とスティラ、いえ、カスティア様、ですわね。
傍から見れば愛妾候補のまま、卒業式を迎えましたが、突然わたくしの王子妃教育の下地がボリュームアップしましたわ。
反対に、カルッカ殿下の王子教育は据え置き、王太子教育の下地の量は、あからさまに減っておられました。
「直りなさい、カスティア。我が姪よ。」
大広間の貴族達も一斉に、姿勢を楽にします。
ふらついてる方が、ちらほら、いらっしゃいますわね。
帝国ゲッペルのカスティア様と言えば、我が国で言う、宰相位に当たる方のご令嬢ではないかしら?
王妃陛下とは、叔母と姪の関係ですわね。
ゲッペルでは、役者や王家の影のような真似も、令嬢がなさるのでしょうか。
そうですわ、王家の影!
はた、と思い付いたもの、さらに壇上では会話が始まっておりますの。
「母上! どういうことですか!」
「王妃殿下、どういうことでしょうか。」
カルッカ殿下とウィルーロ殿下ですわね。
はて、てっきり、カルッカ殿下の王太子候補を取り下げて、わたくしとウィルーロ殿下との婚約を新たに結ぶのかと予想しておりましたのに、ずいぶんと読めませんわ。
わたくし、傍観していて良いのでしょうか?
「姉上、姉上。」
王家の影と言えば、貴族学院内で、カルッカ殿下を見守っておりましたわね。
時に学院生に、時に教師に扮し、あるいは天井に潜み。
もちろん、わたくしの様子も見られておりましたから、男爵令嬢であった、スティラ=イーバ=アマカーを迫害するなど、もっての外。
この成人の儀において、何かしら事が起きれば、わたくし、王家の影の方からの証言を使わせていただこうとも思ってましたもの。
「大広間にいる、大人達の様子が、おかしいです。」
壇上では、カルッカ殿下とウィルーロ殿下が王妃様に詰め寄って、護衛に止められておりますわ。
そういえばカスティア様は、我が国へ留学生として来られてるとの、公式記録は有りましたが、王妃様の離宮に籠られて教師を呼び寄せてるとか聞きましたが。
すっかり、騙されていたということですわね。
「姉上、姉上!」
あら? グイスの顔が、とても近いですわ。




