黒幕登場!
わたくしがグイスと、あらら? おかしいですわね? と顔を見合わせておりますと、壇上では、ウィルーロ殿下、スティラ、カルッカ殿下の声が、段々と大きくなっておりました。
「くっ、なぜ契約書を出した!?」
「ほほほほ、今更もう遅いですわ〜。」
「スティラ!? 兄上と、手を組んでいたのか? 騙したのか!?」
どうも、スティラが余裕ですわね。
ふと、周りを見渡せば、大人達は呆然としてるのか、ぼんやりとしたお顔。
グイスのような入学前の子達の方が、興奮した様子で、王子殿下方を見ております。
あら? また、金管のファンファーレが、高らかに鳴りました。
壇上奥、扉がゆっくりと開きます。
「静まりなさい。」
王妃様です。
カルッカ殿下の母であり、正妃である、カルメラ様です。
カルッカ殿下よりも少し濃い翠の目、白金の髪を高く結い上げ、成人の儀に相応しい、黒のパリュールを着けております。ド=ラヤークの国旗の色ですわ。
あの宝石は、セレンディバイトですわね?
魔力で、内側から透けるように輝いておりますの。
と。スティラが、カーテシーをしましたわ!
完璧な美しいカーテシーを、王妃様に向かって!
まさか……!
「ウィルーロ第一王子、カルッカ第二王子。お久しぶりですね。さて、男爵令嬢スティラ=イーバ=アマカー。皆に分かる様に説明なさい。」
「かしこまりまして。私は、麗しのカルメラ王妃殿下の忠実なる下僕、帝国ゲッペルのカスティアでございますれば。王妃陛下におかれましては、この儀にて、次代の王太子を見極める、最終試験の場を用意せよとの御命令賜り、帝国歌劇『追放の断罪劇〜もう遅いのはお前だけ〜』より、役を演じる事を御提案いたしました。これは、王太子教育の下地も兼ねております。」