魔力経穴
電波がよろしくなくて、遅くなりました〜。
わたくしは、動きを止めた私兵Aの背後に回り、頸の魔力経路を狙います!
魔力経穴、天魔柱へ──!
「ぐっぐわああああっ!!!」
返し針で、私兵Bの腕を狙います!
手魔三里!
「ぎゃあああああっ!」
ああ、知ってるお顔の私兵さん、お二人ともごめん遊ばせ!
「くっ! 貴族令嬢が、暗器を使うだと……!」
カルッカ殿下の、驚愕の声が聞こえます。
「いえ、ただの刺繍針ですわ。嗜みですのよ?」
わたくしの針スキル『影縫い』は、鍼のスキルと針のスキルを組み合わせものです。
魔力の篭った刺繍針で影を刺し、その場に縫い止め、動きを止めます。
仕上げに、魔力経穴に鍼を刺し、治療するのですわ。
「ああああああっ! なんてことだっ!!
──凝りがっ!
長年悩まされていた、首の違和感が、重さがない!
羽のように……っ! 軽いっっ!」
私兵Aさん。
「俺の、腕の痺れが……。取れてるのがわかる……。何をやっても、どれだけ金を積んでも、ダメだったのだが……。」
私兵Bさん。
ふふっ、早速効いたようですわね?
「お二人とも、私兵となったのは、殿下の諜報であり、盾であるため。何よりも、怪我や年齢で、動きにくくなった体を役立たせるため、と聞きましたわ。」
「「我々の事情まで、把握されてたのか!」」
「わたくしは、殿下の命令に逆らえないあなたがたに、治療行為をしたまでですわ。
何も敵対行為はしておりませんの。」
そうですの、ちょっと足を引き止めてるだけですわね!
あっ、あら! 私兵のお二人、涙を流しておりますわ!
と、不意に。ざわ、ざわ、と大広間がしております。
「一体、何の騒ぎだ?」
「あ、兄上!」
あら。第一王子、ウィルーロ=マヤ=ロダ=サッマン様がお越しになりました。
「カルッカよ。其方が先に向かい、皆に挨拶をするとのことであったが、これは何の騒ぎであるか?」
「ウィルーロ様〜! こわかったです〜。カルッカ様が突然わたしを連れて来まして〜!」
んんん? 凄いです、スティラは流石『花』の者!
切り替えが早いですね! わたくしでなければついていけませんわ! カルッカ殿下も茫然としてます!
「ス、スティラ、どういう事だ!?」
もう少し続きます〜