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俺んとこ来ないか?

 十数分後、集まった男女に私はめまいがした。

 50人超……!!!

5年間を共にしてきた私が判断するに、腕には間違いないが、主にお人好しで単純で、およそ悪党などには向かない奴らが集まっていた。


「傷痍軍人は基本的に竜使いの騎士の任を解かれるんだ。再就職しようとしても騎士の仕事しか知らないしさ。戦闘魔術しか知らない文官も要らないと言われた。ギョレムが嫌な奴だなんてみんな判っていたけれど選択肢がなかったんだ。」


メーユ王宮人事部は、なんてことを……!

私は檻に入った女の子たちに誘拐されたことを忘れるよう、一人ひとり魔法陣を描いている。

 疲れてきたなーと思ったタイミングでノーリッヒが代わってくれた。

 ノーリッヒは魔法陣を考えるのは苦手だが、すでにある魔法陣を真似して魔力を込めるのは上手い。おまけに魔力は膨大だ。

 

「……職があればいいのよね?」

「当り前だ!」


 みんなは声をそろえた。


「農作業や労働が嫌だなんて言わないわよね?」

「戦場に比べればなんだってマシだろ」

「よし決まりだわ」


 ギョレムは裸のまま拘束してそこらへんに転がした。

 運が良ければ生きながらえるでしょう。


「ウチ来ない?」


***


「ファルス、あんた王宮の結婚式をすっぽかしたわね!……って、この人たちは?」

「母さんが欲しがっていた人手よ」


 美容領地化しつつあるといっても、私の領地は元々食物を作る領地である。土地の民は代々受け継いだ作物を作る片手間にしか動けない。母さんは美容品を生産開発するペースに人員が追い付かないと嘆いていたではないか。


「教えれば化粧水を作れる魔法使いもいるわ。野営が多かったから野草や薬草にもかなり詳しいわよ。畑も十分耕せる。母さんもトシなんだからちょっと楽をして頂戴」

「ええ?ファスルの母上?姉にしか見えないぞ!」

「あらやだウフフ、皆さんこそいい身体をしているわね」

 

 50人強のイカツイ元従軍者を相手にして少しも動じない母さんはやはりただ者ではないが、とにかくお互いに好感触のようだ。良かった。


「とりあえずみんなご飯とお風呂、どっちがいい?着る物はお金を渡すから買いに行ってよ」

「両方だ!風呂を貸してくれるのか?この人数では食料も足りないだろう?」


 50人強という人数にちょっと迷ったが、汗と皮脂汚れまみれのままここにいてもらっても困るし、方々から腹の音が聞こえてくるくらいはお腹が空いているんだと分かっている。


「風呂は数人ずつ交替で入ってもらいましょう。その間に数軒ご飯屋さんに問い合わせて特急で持ってきてもらうわ……というか、寝泊まりするところはあるの?」

「金がないからみんなほぼ野宿だが……」


 メーユ王宮人事部~!!!

 私と母さんがバタバタしていると、王宮から父さんが帰ってきた。

 

「全員この狭いうちで風呂に入ってご飯を食べなきゃならないことはないだろう。空きのある宿屋を数軒借りられるならそうしよう。その後公共風呂に入ってきてもらえばいい。身体を清めて服を買って着替えてもらって、食事はヘンリエッタの顔が利く店で皆で食べないか?歓迎会だ」


 事情を聞いた父さんが、サクサクと手配を進めていく。

うう、父さんかっこいい!

 

「どうしようもなく空腹な人は、まず屋台で買い食いしてからでもいいわよ。金なら出すから」


 私が言うと、ワッ、と50人強が歓声を上げた。

 

「国の宝なんてもんになって、偉くなっちまって変わったかと思ったけど、お前が相変わらずで良かったよ!えらく綺麗にはなったけどな!」

「そういや今日は結婚式だ。王宮に行かなくて良かったのか?」

「バカ、ファルスはサーリーム様が好きだったじゃないか」

「ああ、行けるわけないか。可哀相にな」

「……なっ!」


 私は赤面し、両親はびっくりしている。

 そんなに私の気持ちはバレバレだったの?!


「あんな目で見つめていたらなぁ。気づかない方が不思議ってもんだよ」

「特にお前は分かりやすかったからなぁ」


 などとからかうみんなにお金を押しつけて追い払おうとするが、両親の視線から逃れることができない。

 

「ファルス、本当は王宮勤めも辛いのではないかい?」


 父さんがいたわりに満ちた声で言う……いたたまれない!

 「平気よ」「何でもないのよ」「もう過去のことなのよ」と繰り返す私に母さんが言い放った。


「……それならなおさら、今夜はメーユ王国で一番の美女に化けて王宮に行きなさい!『ファルスに手を出せばよかった』とサーリーム様を悔しがらせるのよ!」


 ……は?

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