試験開始
「着いた…」
とうとう着いてしまった試験会場に。
これから試験を受けようとしている面々がここに集合している。
やっぱりみんな年上なのだろうか…。
僕よりもガタイが大きい人ばかりだ。
僕は今からこんな人たちと試験合格を目指して争うのか。
ある1人が集団に近づいてくる僕のことを見た。一瞬見たかと思えばすぐに目を逸らした。
すぐに興味が失せたような目だった。
僕は眼中にないってか…。
別にいいさ、眼中にないならないで、誰にも邪魔されずにゴールを目指すことができる。
絶対ゴールしたあと俺を舐めたこと後悔させてやるからな!
そして僕はすぐに試験の手続きの列に並び、手続きをすぐに終わらして試験開始を待った。
おお、どんどん人が集まってくるな。
僕も結構後からやってきた方だけど、それでもまだこんなに人が来るのか…。
ざっと今200人くらいぞろぞろやって来た。
もしかして今日は例年よりも参加者が多いって事はないよな?
でも明らかに1000人は超えてる気がする…。
ってやば!どんどん人がこっちに押し寄せて来た。
ギュウギュウ詰となっている。
なんだこれ!毎年こんな感じなのか!
僕はガタイの大きな人に視界の半分以上を遮断され、見えるものといったら空だけだ。
「では試験の説明に入る!」
遠くで声が聞こえた。
そして一緒で周りの人達が静まり返る。
もしかして試験監督か?
この状態どうにかしないのかよ!
潰されて死にそうなんだけどー!
「知っての通りお前らには私たちが作った結界、仮想スキュラの大森林に入ってもらう。そこでお前らは一直線に向かい、ゴールを目指すだけだ。当然中には魔物も潜んでいる。そこで魔物と対峙し、死ぬこともあろう…」
おいおい、まさかこの状態のままスタートするわけじゃないですよね?
流石にこの人数でいきなり走り出したら、人1人死んでもおかしくないぞ?
「死んだとしても私たちはお前らの死体は拾わない。遺族にも届ける事はしない。もしそれが嫌ならば、今すぐここから立ち去れ」
周りの表情はどんどん凍りついている。
試験内容は知っていたけど、いざ試験が始まりそうになるとやはり空気が張り詰めてるな。
そうだ、これはただの試験ではない。
人が死ぬのだ。簡単に。
もしかしたらこの中の半分も帰ってこれないのかもしれないのだ…。
なのにこいつらは帰らない。振り返らない。
怖いけど逃げたりしない。
そうか、こいつら覚悟はすぐにできているんだな…。
「…ふん、今年は1人も立ち去らないか。お前たちは勇敢だ。もうすぐ試験は始まる、最後に私からのお願いだ」
「合格できなくても絶対に生きて戻ってこい。生きることを諦めるな、以上だ」
「!」
試験監督は最後に悲しそうな顔をした。
生きることを諦めるなか…。
きっと何回も何回もこの試験を繰り返して、生きて帰ってこれなかった人たちが大勢いるのだろう。
だから合格できなくても帰って来てほしい。
また強くなって受ければいいのだと。
多くの人が固唾を飲んだだろう。
それほどまでにこの試験きっと恐ろしいのだろう。
スキュラの大森林の再現。
見た事はないけど、誰も近づくことができない魔物の生地と言われている。
僕の父さんだって近づこうとしない。
そんな危ない場所に1000人以上が放り込まれる。側から見たらただの大虐殺だ。
普通こんな試験はおかしい。
もっと別の試験はないのかと言う人もいるだろう。
けどきっと英雄とは死ぬようなことの連続なのだろう。
僕たちもつい最近死にかけたことがあった。
そして実感した、世界にはあんな恐ろしい奴がいるのだと。
それを考えたらスキュラの大森林などただの踏み台でしかない。乗り越えなきゃいけないのだ。どうしても守りたい人がいるなら。
こんなところで挫けてはいけない。
「では結界を用意する」
4人の教員が4箇所に位置し、僕らを四角で囲んでいる。
始まる、もうすぐ僕たちは死地へ送り込まれる。
「ご武運を祈る」
「結界「スキュラ」!」
そして僕たちを囲んでいた4人の姿は消え、世界は一変した。
最初は真っ白な世界、そして1秒も経たないうちに真っ白の世界は消え、そこは草むらの中だった。
「こ、ここが…」
ここがスキュラの大森林?
周りには木だらけ、草もあって匂いも臭い。
目の前には大きな道があって奥は暗くてよく見えない。
僕たちはこれからあの先を進むのか?
しかし、さっきこらなにか変な匂いがする。
草むらの中の匂いだけじゃない、なにか腐っている匂い?とでも言えばいいのか。
匂いの正体は全くわからない。
けど、もう始まってるのだ、前に進まなければ…。
「う、うわぁーーー!!」
「うわ、なんだ?」
後ろから人の叫ぶ声が聞こえた。
魔物がもう現れたのか?
どこだ、一体どこに…。
否、現れたのではなく、既にそこにいたのだ。
腐った人間の死体が…。
「!?」
これが匂いの正体?
これが人間が腐っている匂いなのか?
人間の死体は原型をとどめていなく、ハエがたくさんこびりついていた。
一体いつの死体なんだ?
これが一年も前の死体とは思えない…。
「おえぇっ!」
後ろにいた奴が嘔吐し始めた。
他にもちらほら吐いてる奴がいる。
僕は…初めて死体を見たはずなのに何故か平気だった。
気分は悪いが、それしかない。
もしかしてあいつの死のオーラを感じ取ったから、もう死には慣れてしまったのか?
多分そうなのだろう。
あんな経験はこの中できっと僕以外にいない。
しかも僕に関しては2回も死んでいる。
今更人の死体があるからなんだというのだ。
僕はゴールを目指して前に進むだけだ。
あの中で僕だけが前に進み始めた。
それを見ていた人たちは、一番最初に歩き始める僕を見て、すぐに動き始めた。
吐いていた連中もまだ気分が悪そうだが、自分たちが何をしに来たのかを思い出したのか前に進み始めた。
そう僕たちは、今スキュラの大森林にいるのだ。ここからこれ以上の悲惨なものを見せられるかもしれない。
覚悟していたことだ。
そして僕は、僕がゴールするためには誰かを見殺しにしないといけないのだ…




