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3.学園の森の実験

 涼しげな風が頬を通り抜け、木々の葉がサーッと音を立てるのが少し遠くから聴こえる。

 学園の()という名前ではあるが、そこまで木々が鬱蒼としている訳では無い。学園に近付くに連れ木々は少なくなり、開けた草原が広がる。


 ――よし……!


 少し広い場所に魔術陣を描き、陣の中心でぐるりと見回す。

 魔術陣は、円や直線上に描かれた大量の記号や式を使った『術式』を複数組み合わせて構成される。出来上がったそれは幾何学模様の芸術品だといつも思う。


 起動させた魔術陣は術式の発動順に線をなぞる様に淡い光を放ち、陣中に配置している緑色の宝石へとその光が吸収されると――そのまま光は消えてしまった。


「あああっ!! 吸収されるだけじゃダメなのに……!」


 思うように成功しない。

 魔力を帯びた緑色の宝石に手近にあった小石を当てながら恨めしく睨みつける。


 【植物から鉱物への魔力付与及び魔法付与魔術】が今回の実験の主題だ。

 以前から結果を認められた部分の【植物から鉱物への魔力付与魔術】は、植物から『魔力』を集めて、鉱物――今回は緑色の宝石――にその魔力を与える魔術。この魔術部分については上手くいっていると思う。

 問題の【魔法付与】は、魔力を得た鉱物が人の代わりに発動する『魔法』――今回は防御魔法――を取り付ける魔術。この追加した部分が上手くいかない。

 直ぐに発動しないように、発動条件――物理的衝撃――も付けている。

 つまり、実験がもし成功していれば、この宝石に小石がぶつかった時点で防御魔法が発動していた。

 私はもう一度基本から考え直す。


 『魔力』は(エネルギー)そのもの。『魔法』は魔力(そのエネルギー)を使って動く道具…か…。


「――あれ? 魔法を発動させる為の魔力が足りない……?」


 魔法を発動させる為の魔力はほとんど調べられていない。魔法は個人で使用されるものの為、各魔法に必要な絶対的魔力量など誰も気にしない。それこそ、魔術を使わない限り、魔法を使っているだけでは一生気にしない人が大多数だろう。走る時に今どのくらいの体力を使っているかなど気にしないのと同じだ。

 しかし、魔術においては魔力を定量的なものとして使用し、術式に織り込まなければならない。今回はその必要な魔力量を間違えて捉えていた可能性が高い。基礎的な間違いに少し心が折れかけるけれど、原因がわかりそうなのでそんな事を気にしている時間はない。


 原因さえ分かれば後は試すのみ……!


 検討した新しい術式を手近にある紙に走り書く。そして、改良された筈の魔術陣を使()()()ところを探さなければならない。

 今回の術式は周りの植物から魔力を吸収するので、1箇所に留まり魔術を繰り返すと植物の魔力が枯渇し、魔術を行っても全く魔力を得ることが出来なくなる。これが学園の森を広範囲に封鎖した残念な理由だ。

 安全の為、学園側には近づかない様に森の奥へと移動する。


 開けた場所に着き、少し休憩をして、改良版の魔術陣を描いていく。

 次の式は植物から吸収する魔力も吸収範囲も増やした。


 ――お願い――!


 願いを込めて魔術陣を起動すると、先程よりも強い光が発せられる。

 その光が広範囲に広がり、光の一部が魔術陣に置かれた宝石へ吸い込まれる。その度に宝石は魔力を帯びる。

 しかし、その光は止むどころか、急に強さを増しながら宝石に向かい、遂には宝石が砕け散った。


「あっ!! ……いけない……っ!」


 代わりになる予備の鉱石を探すも間に合わず、行き場を失った光と砕けた宝石から放出された魔力が一気に私へ押し寄せる。無理やり私の体へ放たれた魔力がねじ込まれていく。


「――やっ、……ぁ……――――!」



 私は意識を手放した――。


小難しい説明が続きますが、もう少しで出て来ます。お付き合いよろしくお願いします

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