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20.レイリアナの行方

 

「ヴァシーリ! 報告を」

「申し訳ありません……。レイリアナ様は花売りの少女と共に、何者かに連れ去られたと思われます……」


 シエルラキスがレイリアナを追い掛けて行くと、ヴァシーリが強盗5人を捕縛している所に遭遇した。

 ヴァシーリからの報告を受けると、シエルラキスの表情が見る見る険しくなっていった。シエルラキスは剣を構え、ヴァシーリへと突き付ける。


「其方がついていたにも関わらず……!」

「シエル様っ!?」


 後から追ってきたエアラムザがヴァシーリとシエルラキスの間に割って入った。

 ヴァシーリはその場に跪き、首を垂れると、恐れながら早急にお伝えしたい事がございますと告げた。


「処分は後ほどいくらでも受けます。ですが、今はこれを! レイリアナ様から預かったものです! すぐこれをお伝えしなくては!」

「レイリアナからだと?」


 ヴァシーリが提示したのは、昨日の実験中に渡された音声保存鉱石だった。レイリアナから彼女がいなくなった時にシエルラキスへ伝えるようヴァシーリは命を受けていた。


 捕縛した強盗らしき者たちを兵士へ引き渡すために、エアラムザは一旦その場を離れた。


 再生用の魔術陣が施された布を敷き、ヴァシーリは直ぐに魔術陣を起動し、音声再生を行った。保存時間が足りなかったのか、いくつか石を預かり受けていた。


『おそらくビドテーノ侯爵令嬢の(はかりごと)です』

『わたくしが連れて行かれる先はビドテーノ侯爵領地の鉱山街』


 ここから先は緊急性はないものだとヴァシーリは再生を戸惑う。

 レイリアナの音声を聞いて興奮が落ち着いてきたシエルラキスが、全て聞くと言ってヴァシーリに要請した。


『ヴァシーリもエアラムザも私の護衛騎士です。勝手はなさらないで欲しい』

『わたくしは大丈夫です。皆で証拠を必ず掴んで下さい。待っております』


 そして、最後のひとつはシエルラキス個人にと預かったものであった。それでもシエルラキスは今すぐに聞きたいと再生する。



『シエル様。本当は……こわいのです。信じています―――シエル――』



 シエルラキスはその音声を聞くとすぐに、ヴァシーリにビドテーノ侯爵領地へ行く準備をしろと命令を下した。


  早く助けに行かなければ……!


 強盗を引き渡したエアラムザが合流し、3人は出発の準備の為に宿へと向かった。



 宿に着き早々に出発の準備を終えると、ヴァシーリは魔術陣とその起動方法を彼に伝え、いつでも好きな時に聞いてくださいと音声保存鉱石を渡した。

 シエルラキスはその鉱石をとても大事に見つめ、届けてくれて感謝するとヴァシーリに伝えた。彼女は右手を胸に当て騎士の礼をし、その場を下がった。


 3人は宿に繋いでいた自分たちの馬に騎乗すると、直ぐに馬を走らせた。


  無事でいてくれ……!






 レイリアナは目元は隠され、口元は覆われ、足枷と手枷をされ、荷馬車の荷車に転がされていた。隣には花売りの少女が同様に拘束され、横たわっている。


  ――どの辺りかしら……。


 向かう先は鉱山夫の宿場だと、レイリアナを攫った強盗達が話していたのが聞こえた。なるべく証拠を集めないといけないと思っていても、いざとなると恐怖が勝る。


 コルーンで花売りの少女を追い掛けて路地へ迷い込んだレイリアナは、ヴァシーリが少女を捕まえた後、その背後に人影が現れるのを見た。レイリアナが危ないとヴァシーリに声を掛けようとした瞬間、レイリアナの背後に控えていた別の強盗が、彼女を気絶させていた。そうしてレイリアナはそのまま連れ去られてしまったのである。


 レイリアナが気が付いたのは、コルーンを出てしばらくして強盗が荷馬車を乗り換えた時だった。反応したらまた気絶させられてしまうかもと考え、気を失ったフリをしていた。


 ――鉱山街へ着く前に、なんとかしないと……。でも、かなりの人数が――。


 レイリアナが状況を整理しようと考えを巡らせていると、近くで強盗達の声がした。どうやら、荷馬車に何人か同乗していたらしい。目隠しをされている為、周りの状況がいまいちわからなかった。


「どうせ鉱山夫にやるならここで俺達がやっても変わらないだろ」

「まだ街まで時間もあるしなぁ」

「顔は傷つけない方がいいのか?」


 レイリアナは全身の血の気が引いた。彼等がじりじりと近付いて来るのがわかる。


  ――な、何を言っているの……。


 これ取っていいかと盗賊のひとりがレイリアナの目隠しを外した。レイリアナは意識が戻っている事を知られないように、目を閉じたままだが、恐怖で気が触れそうだった。


「おお!! 上級品じゃないかよ」

「貴族様だって言ってたぞ」

「貴族だって言ってもピンキリだな。依頼人の女も貴族だったけど、全然違ったな」

「たしか、ビドテーノ領の娘だぞ」

「あれがねぇ」


 レイリアナはその耳で依頼人の名を確認した。

 やはりビドテーノ公爵令嬢ジョカリタの仕業であった。何もかも予定通りだととレイリアナが思考を巡らせていると、ゾワゾワゾワと全身に悪寒が走った。


「んん……っ!」


 ――――ガッ!!!


 レイリアナは自身の足に自分のものではない何かが這い回っているを感じ、咄嗟に手枷のついた両手を振り回した。手枷はレイリアナの前にいた男の脇腹に当たった。

 もう気を失っているフリなどしていられないので、レイリアナが目を開けると男が3人こちらを見ていた。


「いったぁ! ……おい、こいつ起きてるじゃねーか!!!」

「あはははっ! 嫌がられてるじゃん」


 お前ら押さえておけよと殴られた男は笑っている男に命令し、レイリアナの両手を頭の上に押さえつけた。レイリアナはめいいっぱい抵抗するもビクともしなかった。


  なにか――どうしたらっ……!


 レイリアナは対応策を必死に探した。体術も剣術も出来ない。魔術を使いたくても陣を書けない。魔法は……。


  ――魔法! 今のわたくしには魔力があるもの!!


 レイリアナは攻撃魔法とされている火の魔法をイメージする。しかし、魔法は全く発動する気配がない。


  どうして!? 前に回復魔法は出来たのに……!


 レイリアナが苦悩している間にも、男達はレイリアナを(もてあそ)ばんと服に手を掛け、無理やり紐解いていく。レイリアナは嫌悪でいっぱいになりながらも、体を捻り、節操を守ろうと必死で抵抗した。


「っ……! んんーっ!!」

「このっ! 暴れるなよっ!!!」


 レイリアナの抵抗に苛立った男が、彼女の頬を殴ろうと拳を振り上げた。それを見たレイリアナは目を見開いた――。


  ――そうだ……守る――!!!


 レイリアナは出来うる限りの魔力を込め、防御魔法を思い描いた。




 ――――パァァァ……ッ――――!!!




 レイリアナの思いは届き、目を開けていられない程の光が彼女を包み込んだ――。


ヴァシーリの戦闘シーンを省いてしまいましたが、機会があれば書きたいです。

解決までもう少しお付き合い下さい!

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