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プロローグ ~遠い記憶~
「おいでよ! レイリー!」
幼い少年が綺麗な髪を風になびかせ草原を駆けて行く。
「まって! まって! にいさまっ」
レイリーと呼ばれた銀色の髪の幼い少女が必死にそれを追い掛けるが、草根に足を取られ転んでしまう。足を擦りむいてしまったようだ。
大きな淡いピンク色の瞳が涙で潤んでいる。
「うぅ……まってって、いったのに……」
「ああっ! ごめんっ! ほら――」
少年は慌てて駆け寄り、少女を抱き起こした。そして、擦りむいた膝に手を当てる。
キラキラと少年から光が湧き出し、少女の膝を癒していく。
「にいさま、ありがと!」
少女が少年に抱きつくと、少年から発せられていた光が少女に吸い込まれる。
少女の柔らかく長い髪がフワッと辺りに広がると、周辺の野草の花が一瞬にして咲き乱れた。
「ふふ。これは、おれいだよ」
少女は花を1輪摘むと、少年の髪に差し込む。
「レイリーのまほうはいつもキレイだね」
少年は宝物を見るように優しく柔らかく微笑む。
2人は立ち上がり手を繋ぐと、光が2人を包む。キラキラした光を零しながら、今度は一緒に走り出した。