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名のない物語  作者: 夜桜
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第一章…「学園」2

チュンチュンと聞きなれた小鳥たちの囀ずりに目が覚めたアキラは、寝ぼけた眼差しで少しだけ開けたままのカーテンを見た。

隙間から入り込む光が足元で目を閉じていたこさめの顔を照らしていた。

こさめを起こさぬよう、ゆっくりとベッドから降りようとしたのだが、モゾモゾと動きすぎてこさめはゆっくりと目を開く。


「おはよう、こさめ」


「はい、マスター……おはようございます」


最近、こさめの行動レアをよく見るようになった気がする。

一昨日では、ポークバーガーを食べたり、知らない人と話したり、今日もまたこさめが眠っていたかと聞かれてしまえば微妙だが、目を瞑って一休みした所を見れた。

契約をしてから早1年経つが、今までそんなことはなかった。

嬉しい気もするが、不安でもある。

ベッドから降りたアキラは、リビングに行き時刻を確認。

学園に向かうにはまだ早すぎる時間だっため、朝食にする。

今回は簡単な、軽く焼いた食パンの上にガッツリ焼いた目玉焼きを乗せたものと適当に引きちぎったキャベツを水洗いしたものである。

大人しく朝食にするのも良いが、今回は学園に関するパンフレットに目を通しながら朝食にする。


「お人形遣いになるための教育をする場……学年は1年から3年制、1年はこの世界に対する知識が、2年からは自動人形を使った練習又はお人形との契約、3年は契約したお人形で実技や簡単なミッションなどをする

………寮は女子寮、男子寮、特別寮の3つに別れている。

特別寮とは、1年また2年の時点で既にお人形を所有している人のためのもの。

又、男女混合である。」


なかなか色々と細かく書かれたパンフレットを音読していると、こさめに肩を軽く叩かれる。


「マスター、お時間になりました」


「あれ、もうそんな時間か……なら荷物を持って行こうか」


こさめに言われて時刻を確認すれば、確かに出発の時間になっていた。

だが、まだパンフレットを全部読みきれていなかったため、持っていくことにした。

学園がある場所は第一国の更なる上の小さな島にある。小さな島と言っても、小さい島が2つくらいは入るくらいの大きさのため、他の島よりは少し大きい。

そこに行くには、決まった出入口を通る必要がある。

そこの出入口に向かうには、まずバスの乗り継ぎを2回程、それから徒歩で5分もかからずに到着。

出入口には兵が2人立っていた。

アキラはその兵たちに事情を説明し、中に入れていただく。


「ではお気をつけて」


「ありがとうございます」


最後に簡単にそう受け答えをして、アキラとこさめは学園の玄関に踏みいる。

出入口から入って少ししてから円型のエレベーターが見えてくる。最大10人まで乗れるらしい円型のエレベーターに乗り込み、開けるボタンと閉めるボタンだけがある。

当然閉めるボタンを押すと、無音で閉まり少しすると動き出す。


「人間用のエレベーターなんて初めて使った」


エレベーター内を見渡しながらアキラは呟く。

こさめも興味を持っているのか、小さくなっていく第一国をガラスにベッタリくっつきながら眺めていた。

それからすぐに優しい音でポンッと鳴る。

どうやら着いたらしい

無音で開かれた扉を通り、本格的に学園のある敷地内に足を踏入、辺りを見わたす。

円型のエレベーターを降りてすぐに目に入るのは壮大な庭である。

第一国から第四国に咲花がそれぞれの国に別れて花壇に入れられ、名一杯花を咲かせていた。

そんな壮大な庭の更なる奥には3階建て屋上つきの学園が目に入る。

城のようにデカくて、装飾などが豪華。


「……迷子になりそうだ」


ボソッとアキラは呟きながら、右を見た時また別の建物が3つ目に入る。

恐らくあれがパンフレットに書かれていた女子寮、男子寮、特別寮なのだろう。

他にも色々と見て回りたいが、とりあえずは学園長に挨拶をしてからにしよう。

そう考えればまず庭を通り、建物に入る。

中に入ってすぐ、学園内図が目に入る。

アキラとこさめは自然と案内図に近づき、学園長の部屋を確認する。

どうやら学園長室は3階の右の端っこにあるらしい。

この学園は3階建て、1階から3年・2階は2年・3階は1年と学年が低い順になっているらしい。


「まだ他の生徒が来るまで時間があるし、学園長に挨拶したら校内を見て回るか?」


「マスターがそうしたいのでしたら、私はそれに従うのみです」


こさめはいつもの回答で答える。

なら、校内ではなく敷地内を散策しようと決めてから学園長に早速挨拶しに歩き出す。

途中寄り道をしかけたが、何とか学園長室に辿り着き、2回ノックをする。

「どうぞ」と扉の向こうから聞こえ、アキラは「失礼します」と言いながら学園長室の扉を開けると、そこには数人の男女がソファーに座りコーヒーや紅茶をそれぞれ飲んでいた。


「陛下から聞いているわ……あなたがアキラくんとこさめちゃんね」


「こんな若いとは」


「アキラくんは本当にお人形なの?人間に見えるわ」


「ほんとにね~」


教師たちがそれぞれ呟くなか、アキラは平然と学園長の質問に答える。


「はい、ボクと後ろにいる子がアキラとこさめです」


「ふむ、どれ程の腕なのか試させてくれる?」


学園長は満面の笑みを浮かべたままアキラに模擬戦を提案する。

アキラは壁に掛けられた時計の時刻を確認すれば、生徒たちの登校時間は1時間後であった。

別に生徒たちがいなければ実力を隠す必要もないと判断したアキラは、頷いて見せた。


「ありがとう、では模擬戦の相手は私でいいかしら?一応この学園内では一番強いと言えるのだけど?」


「ボクは誰でも構いません……こさめも模擬戦をするのでしょうか?」


アキラの質問に学園長は、指を口元に当てながら「そうね~」と悩んでいると、1人の教師が手を上げる。

アキラとこさめは自然と手を上げた教師を見るが、一瞬脳が停止する。

手を上げたのは、アキラと同い年か少し下のこさめくと同い年くらいの少女であったからだ。

少女は分厚い本を大切そうに抱き締め、眠たげな眼差しは学園長を見つめる。


「あら、どうしたの?ミュアン」


ミュアンと呼ばれた少女は口を開くどころか、固く口を閉ざす。

その代わりと言うように、浮遊する一冊の本が学園長の前で開かれ、真っ白だったページに文字が書かれる。

それに目を通した学園長は、驚きの表情を見せる。


「ミュアンがこさめちゃんの相手をするの!?」


学園長の言葉に小さく頷くミュアン。

アキラとこさめは首を傾げてから訪ねた。


「彼女がどうかしたんですか?」


「アキラくん、こさめちゃんの相手はそこに座る最年少でこの学園の教師になったミュアンがすることになったわ」


「?それがそんなに驚くことですか?」


「そりゃあ、ミュアンは自分からまず手を上げたことがなくて……どういった魔法を使うのかすら私は知らないのよ」


(……あれ、この人この学園の学園長なんだよね?)


学園長の言葉に思わずそう考えてしまったアキラは、とりあえずこさめにそれでいいか確認をすることにする。


「情報が少ないがそれでいいか?」


「はい、マスター……命令は全て完璧に」


それだけを言うと、それ以外口を開くことがない。

それを確認したアキラは、学園長の方を見て頷いた。


「わかりました、では模擬戦用のフィールドに転移します……他の教師たちは客席に飛ばします、いいですね?」


「はーい!」


「わかった」


「わかりました」


3人の教師は返事をし、残りの数人の教師たちは頷いて見せた。

それを確認した学園長は、パチンと指を鳴らすと一瞬の浮遊感に教われたがすぐに地面の感触が伝わってくる。

アキラとこさめは辺りを見わたす。

模擬戦用のフィールド内は、広々としていて、安全を確保するためか壁が高い。

フィールド内から観客席を見れば、数人の教師たちの頭だけがギリギリで見えた。

他にもフィールド内には数台の浮遊するカメラと、模擬戦相手の学園長とミュアンが立っている。

時間も惜しいので、早速アキラはこさめに訪ねる。


「こさめ、どの武器を使いたい?」


「……はい、マスター…では、疾風雷電(しっぷうらいでん)をお貸しください」


「珍しいな、それを使うなんて」


「はい、マスター…あの方は侮ってはならないと感じました」


今のこさめは普段見せないくらいに頭を回転させながらシュミレーションをしている。

だが、表情は晴れるどころか暗くなる一方だった。


「【コネクト】疾風雷電」


アキラはこさめの要望通り、スピード特化の武器である疾風雷電を自分の手の平に召喚する。

それをこさめに渡すと、こさめは少し困り顔でアキラに訪ねた。


「マスター、もし私が負けても怒りませんか?」


どうやらありとあらゆるシュミレーションをしたが、いい結果は出なかったらしい。

一度こさめは敗北を学ぶのもいいが、今回アキラを驚かせたのはこさめが困っていることだ。

それがどうしたと他の人は言うだろうが、常に側に寄り添い、常にこさめの戦い方を見てきた。

そして最大の説得力があるのは、最近のこさめは契約してから1度も見たことがない又、滅多にお目にかかれない表情をしだしていること。

別にそれが悪いわけではなく、アキラにとっては喜ばしいことだ。

この学園はもしかすると、こさめを大きく変化させるいい環境なのかもしれないとアキラは考えながら、こさめの頭に優しく手を乗っける。


「怒らないし、怒る理由もない……存分にこさめの力、疾風雷電の能力、ボクの魔力を持っていくといいさ」


「はい、マスター……勝利をあなたに」


最後にそう言ったこさめは、振り向くことなくミュアンが立っている場所の少し距離を離した真っ正面に立つ。

それぞれの位置に着いたことを学園長は確認すると、再びパチンと指を鳴らした。

すると一対一ができるように、間に透明な壁が出現する。

半分に割れた模擬戦用のフィールド、声は普通に届くと学園長は言う。


「声は届く、だけどその透明な壁には触れないで……そこには見えない電流が流れているから、気をつけるように」


「わかりました……ルールは?」


「ルールは簡単よ、相手が本番では死ぬような攻撃を寸前で止めること」


「わかりました」


アキラは学園長のルール説明に頷いた後、こさめを見れば、こさめもそれでいいと頷いて見せた。また、ミュアンの方を頷いて同意する。

ルールが決まったことにより、4人の中心となる頭上で大きな数字がカントダウンを始めた。


「おいで、暴虐龍(ぼうきゃくりゅう)


「【コネクト】爆烈華(ばくれっか)


学園長が召喚した武器は、黒がベースに綺麗に赤色で模様が(えが)かれた槍。

槍の先には刃があり、真逆の方では水晶のような小さな玉が付けられていた。

そしてアキラが召喚した武器は、150センチのハンマー。

パッと見とても重そうに見えるハンマーを、地面にゴンッと軽々と持ち上げて置く。

赤がベースのよくよく見れば黄色で小さな小職がされていた。

開始5秒前。

武器の用意をしていなかったミュアンがとても小さく囁いた。


「……【オブジェクト】未来書・言霊」


「…………あれは」


「【オブジェクト】って、まさか」


ミュアンが召喚した武器を見た学園長は、大昔や昔、最近読んだ武器に関する書物を頭の中であさり始める。

だが、アキラにはミュアンが囁いた言葉が聞こえており、衝撃を受けて目を見開く。


「こさめ!気をつけろ!相手は【オブジェクト】シリーズの1つを所有する者だ!」


アキラのその言葉と、少しずれて開始のブザーが鳴るのであった。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

次回も読んでいただければ、幸いです。

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