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名のない物語  作者: 夜桜
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第五章…「それぞれの場所で」4

明けまして、おめでとうございます。

今年も、よろしくお願い致します。


大変お待たせしました。


誰もが目の前で起きた出来事に、一言も発せずにただ呆然と目の前の未確認生物を見つめていた。

だがそれも一瞬であり、背後から迫っていた4つの触手にいち早く気づいたのは、後から来たヒグラたちであった。

ヒグラ・夜桜・魅颯により、3つの触手は切られ、最後の1つはアユトによって撃ち抜かれる。

パァン!と発砲音を聞いたサクノは、はっと我に返りそして迷いなく言う。


「一旦距離をとるわよ!最初の地点に戻って!!」


『了解』


サクノの指示に、呆然としていた他のメンバーもはっと我に返り、警戒しつつ距離をとり始める。

が、こさめだけが動こうとせずサクノはすぐに駆け寄り手首を掴んだ。


「こさめ、一旦距離をとるわよ」


「…………」


「こさめ……お願いだから、これを使わせないで」


そう言ってサクノは、返しそびれていた何かあった時ように書いてもらっていた、サブ契約書を見せた。

それを見たこさめは、一瞬目を見開くがすぐに無表情に戻り、片ひざついて決まりごとのように口を開く。


「サブ契約書を確認、現契約者は生存不明のため成立します。

現契約者の生存を確認可能になるまで、あなた様は私のマスターです。

……ご命令をどうぞ」


「……一旦ここから離れるわよ」


「はい、2代目の(セカンド)マスター……」


命令を受諾したこさめは、静かに立ち上がりサクノ・結媠と共に未確認生物から距離をとる。

最初の地点に戻ってきた第一級たち、サクノは人数確認をし、夜桜はアキラの無線に何度か繋げようとするが繋がることはなかった。

ユユとアユトは、第二陣と先程の未確認生物の監視に勤め、残りは人数確認が終えたサクノと共に色々な作戦を建て直しにかかる。

その作戦会議には、降りる時に自動カメラモードになっていたカメラが、再び状況を見ていたサメユキを映し出して、話し合いに参加していた。


「状況は把握している、アキラが未確認生物に食われた瞬間もしかと余の目で確認しておる……だが、1つだけわかったことがある

こさめもわかっておるのだろ?」


「はい、陛下……マスターは生きております」


『!!』


こさめの言葉にその場にいた誰もがきゅっと、唇を結ぶ。

それを聞いたサメユキはうむっと呟きながら頷き、画面の向こうに映る第一級たちの顔を見ながら口を開く。


「貴様らもわかっていると思うが、契約している者同士の場合は、どこにいるのか又、死んでいるか生きているかがわかる……この場には2人もアキラと契約している者がおる、そいつらの言葉を信用できないとは言えないだろう?」


サメユキの言葉に誰もが何も言えず、頷くことすら忘れ、サメユキを見つめ続けた結果、サクノはため息をはいた。


「わかりました……では、作戦はアキラの救出及び未確認生物のサンプル確保でいいですか?」


「うむ、それで()い……それと、これはあくまで追加である、夢々忘れるなよ」


その言葉を最後に、プツンとカメラは切れて再び自動カメラモードに切り替わる。

それを黙視したサクノは、再度ため息を吐いてから気持ちを切り替えるために咳払いを一回する。

それがまるで合図であるかのように、一瞬してその場にいる第一級たちの視線を集める。


「任務が1つ増えたわよ、大本は変わらない……だけど、アキラの救出及び未確認生物のどこでも構わないわ、サンプルの確保が追加……夜桜、無線は繋がった?」


「いえ」


「こさめ、テレパシーは?」


「はい、繋がらないというよりは届かないが正確かと」


「無線は無効、契約のパスも無効……ふふ、これだから未確認生物と出会うと楽しいのよね」


不適な笑みを浮かべながらサクノはそう呟く。

それからすぐ、サクノの顔からは笑みは消えてまるでお人形の様に、無表情へと変わる。


「各員、そろそろウォーミングアップは終わりよ、これからは本気でヤりに行くわよ」


『了解』


サクノの言葉に一斉に返事を返し、妃柳とアユト以外は手に持っていた武器を放り投げて、光の粒子に変わる変わりに新たに召喚した武器が手元に現れる。


「さぁ、私たちを怒らせた断罪の時間よ」


サクノの言葉に、まるで安全ピンか何かが外れたかの様に不適な笑みを浮かべる者や、お人形の様に無表情になる者や、うきうきし始める者がいた。

そんな第一級たちを見つめながら、こさめはそっと左の耳に付けたウサギ型のプラスチックステンドを少し触ってから、サクノに近寄る。


2代目の(セカンド)マスター、未確認生物がこちらに近寄ってきます」


「わかった……結媠も感じた?」


「いえ、お姉様……私の怪物を感知する範囲はこさめ程広くありません」


申し訳なさそうに結媠が言うと、サクノは首を横に振って、そっと結媠の頭を撫でる。

それからすぐに切り替え、叫ぶように告げた。


「各員!未確認生物がわざわざ自分から出向いてくれるらしい!戦闘準備!

並びに、サンプルとアキラの救出が終わり次第、全力を出してよしとする!!」


『了解!!』



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



時は少し遡り、第一級たちのカメラを切り替えた後、サメユキはストンと椅子に力なく座る。

何度か試したアキラに魔力を少し流してみるが、通じている手応えを感じない。


「やはりダメか」


悲しそうにそう呟きながら、家臣と共に音声付きの映像を見る。

現在映像では、それぞれが本来の武器に変えていた。

それを見た家臣の一人が、嫌味たらしく言葉を吐き捨てた。


「最初から本来の武器にしとらんからこうなるのだ!」


「貴様!彼らを殺すつもりか!!」


「本当の事だろう!!」


「それは違いますよ……陛下のお人形、アキラは最後まで戦い抜くために敢えて本来の武器で行かせなかったのです……」


()さぬか!貴様らは、静かに見ることすらできぬのか」


家臣たちが荒ぶっていく中、サメユキが制す。

一番戸惑いたいのは私だ!っと口から出そうになる言葉を飲み込み、キッと鋭い瞳を家臣に向けた。

それにより、大分落ち着きを取り戻した家臣たちは『申し訳ございません』と口を揃えてそう謝罪する。


「………うむ、ここでグダグダ言っていても仕方がなかろう……余たちは安全な場所で、彼らは死と隣り合わせの場所である。

全ての判断は、彼らに任せた方が良いのである……余たちができるのは、ここで音声付きのカメラを見て、結果を見るのみである」


そうサメユキは言ってから、部屋の扉に向かって歩き出す。

それを見た女性の家臣がそっと近寄る。


「どうかされましたか?」


「疲れたから自室に1度戻らせていただく」


「畏まりました」


そう言って女性の家臣は、頭を下げて見送る。

サメユキはそのまま部屋を出て、廊下の中央にひかれた赤い絨毯の上を、ヒールを鳴らしながらしばらく歩いた。

が、その歩みも遅くなり、壁際にふらつきながら移動してそのままその場にへたり込む。


「なぜ、私はあの戦場にいないのかしら……彼らと同じお人形遣いなのに………あぁ、どうして」


「…………!陛下!陛下!?具合が悪くなられましたか?」


たまたま通りがかった仕事をしていたサメユキ専属のメイド・ユンが、心配そうに駆け寄り声をかけた。

ユンが駆け寄ってきたことに気づいたサメユキは、まだ自室に着いてなかったのだと思い出す。


「……………ユン、私を……自室に連れていって頂戴」


両手を広げ、子供のように歩けないアピールをする。

それを見たユンは、微笑み「はい、いいですよ」と優しく声をかけてサメユキを、お姫様抱っこをして自室まで連れていく。

サメユキの自室に着いたユンは、まずサメユキをベッドの上に下ろしてから、気持ちを落ち着かせるためにハーブティーを入れて持っていく。


「どうぞ陛下、ハーブティーですよ」


「ありがとう、ユン……貴方は仕事に戻ってちょうだい」


「ですが_____」


「何かあったら呼ぶから、安心して」


優しく微笑んで見せると、これ以上はいたちごっこだと判断したユンは、白いエプロンが付いたロングスカートをつまんでお辞儀をしながら「失礼致しました」と言い渋々部屋を出た。

自室に残ったサメユキは、ユンが入れてくれたハーブティーを飲み干すと、本が大量に入った本棚の前に移動した。


「………許さないわよ、私のお人形を、私のアキラを奪うのは」


そんなことを呟きながら、とある本3冊を傾ければ、音もなく本棚は横に移動する。

本棚の裏にある木製で作られた1つの隠し扉。

その扉の向こうに自然と入って行ったサメユキは、部屋の電気を入れた。

パッと照らされた部屋には、ふかふかな絨毯の上にある1つの椅子付きの机。

壁を埋め尽くしたあらゆる角度のアキラの写真。その写真の中には、幼少期の写真までが含まれていた。

机の上に置かれた1つの小さな箱。

大切な物を入れておくのに、ぴったりなぐらいの大きさ。


「………渡さないわよ、私のアキラを……だって私はまだアキラの全てを手に入れてないだもの……」


真顔でそう呟きながらサメユキは、ゆっくりと小さな箱を明けながら何かを呟く。


「契約者・サメユキの名のもとに、眠りを解き、我が願いを叶え給え……■■◼■■◼■■」


サメユキの言葉に答えるかのように、小さな箱の中が光、そして徐々に光は消えて小さな箱の中身が露になる。

それを見たサメユキは、不適な笑みを浮かべながらそれを撫で回す。


「さぁ、あの子達に1度だけの手助けをして差し上げましょう……【天罰】(ジャッジメント)


それは、幾度か形を交えた後キュィィィィと何かの起動音をしばらく鳴らした後、再びそれは元の形に戻る。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



時は更に遡り、未確認生物に食われたアキラは現在洞窟のような場所にいた。

ゴツゴツとした岩のような表面だが、よくよく目を凝らしてみれば、岩のように見えている物は細かな皮膚の細胞であることがわかる。

蹴っても殴っても拳は痛くならず、どうやら衝撃を吸収されているらしい。


「どうなってるんだ?こいつの体の中は………」


そんな事を呟きながら、耳に付けた通信機で外にいるであろうサクノに繋ごうとしても、繋がることはない。

こさめとのテレパシーもできず、サメユキとの連絡も取れない。

魔法を使おうとしても、無効化され、当然武器を召喚することもできない。

お手上げ状態であったが、アキラは冷静にこの洞窟のような場所を警戒しながら探索することにする。

先ほどまで居た場所を出れば、枝分かれをした細道に出る。


「………えぇ、本当にどうなってるんだ……………ぁ」


嫌そうな表情をしながら、視線を何個かあった枝分かれした道の近くにあった道を見れば、奥から何かが近づいてくる音が聞こえ、アキラはすぐに壁に身を隠した。

が、生きたまま怪物の体内に入るのは人類初であり、音の正体が気になったアキラは少しだけ顔を覗かせて、音の正体を黙視する。

細道の奥からやって来たのは、恐らく顔であろう場所は4つに裂けられ、手足だと思われる場所は、何本かの触手でまるで水の中であるかのように皮膚の細胞を泳いでいた。

まさかの光景にアキラは、目を見開き危うく「キモ!」と言いかけたが何とか両手で口元を押さえて堪えることができた。

小さな怪物は、細道をまっすぐに進み、一番奥の道に入る。

それを黙視で確認したアキラは、小さな怪物が出てきた細道に近寄って、観察をする。


「ん~、やっぱり異空間も開けないか……カメラで保存したかったんだけど」


ぶーぶーとブーイングしながら不満げな表情をしつつ、この怪物の中の面白さを外に持ち出せないものか考える。

今持っている持ち物は、食われる前から召喚してあった無限刀剣舞。それだけである。

それを確認してからふと気づく、なぜ魔力が使えないこの場所に無限刀剣舞はまだ召喚された状態なのか。


「……もしかして、魔力で形作られた物は使えなくて……【コネクト】の様な召喚時のみ魔力を消費する武器はそのまま残るのか」


これは貴重な情報だが、怪物の中が絶対同じではないため、(検証が必要があるな)などと考えつつとりあえず、背後から迫っていた小さな怪物の攻撃を躱す。

刹那、頭と思われる4つに裂けた口の後ろを鷲掴みして皮膚細胞の地面に叩きつけたが、衝撃は地面に吸収されて無傷なのだろうと考えたアキラは、とりあえず無限刀剣舞を刺しておくことにする。


「……壁と地面は使えないな、なら使えるのは拳と無限刀剣舞だけか」


そう呟くアキラの周りは、小さな怪物が大量に囲むように細道から湧いてくる。

そしてまるで威嚇するように、奇妙で耳障りな鳴き声を出す。

そんな時ふと、アキラは思い出す。

会議の終わったあの場所で、1人残った男の家臣が言った言葉を_____


___人間の皮を被った、化け物だ___


別に聞きたくて聞いたわけではない。

今は人間だが、体はお人形のまま。

男の家臣が言った言葉をお人形遣いの中で唯一聞こえてしまっただけである。


「ボクらはただ、人々を守るために戦ってきただけなのに……貴方たちは、第五国にいる無差別に破壊し、人々殺す怪物と同類だとでも言うのか___っ」


そう悲しげに呟いたアキラは、どこからともなく新たな刀を取り出して、襲いかかって来ていた小さな怪物を横に切り裂く。

その時、チリッとアキラの右の瞳が紫色から赤色に一瞬変わる。

それを聞いて、見ていたのは、言葉は通じずにただ獲物又は排除しようと襲いかかってくる小さな怪物だけであった。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

次回も読んでくだされば、幸いです。

次回は、3月から投稿を開始したいと考えています。

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