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そして私は初めて夜空を見ました

 そして私は初めて夜空を見ました。

美しくも儚く、今にも消えてしまいそうな<星>の粒々。


 そして夜空の下にはお父さん、お母さんが居る<海>という場所が広がっていました。

<海>には<月>と呼ばれる星の光が反射してとても幻想的で綺麗でした。


 さらに<海>の反対側には<街>と呼ばれる人間のお家が沢山ありました。

どのお家も暖かい光が灯っていてほっこりします。


 …それもこれも全部お姉さんが教えてくれたことです。

お姉さんは私の知らないいろんなことを知っていました。


 「お姉さんは博識なんですね。」


 「ふふん。そうでしょう?でもこの世界には私の知らないこともあるんだよ?」


 その言葉に私は戦慄を覚え、お姉さんの方を見上げます。

……しかしお姉さんはどこ吹く風といった感じで私の方に振り向いてくれることはありませんでした。


 でもそれが心地よかったのです。

 でもそれが暖かかったのです。


 さてそれからも未知の連続です。


 名前だけは私も知っていた<車>と呼ばれる速く移動できる箱に乗り込み、お姉さんの自宅に向かいます。


 ふかふかとした椅子に体重を預け外を見ると色とりどりの光で装飾されたお店があり、色んな服装の人々で溢れかえっていました。


 この人々の中にもしかすると悪いけどかっこいい男の子が居るかもしれないと思い、頑張って探します。

…けれどもそれらしき人は見当たりません。

ちょっぴりがっかりしてしまいます


「今、くーちゃん、例の彼探してたんでしょう?」


「……っ!バレてしまいましたか…」


「バレてしまいましたね~」


 私は落ち込んでるというのにお姉さんはどこか嬉しそうににやにやしています。


 そんなお姉さんにムッとしたのでお姉さんに無言の圧を送っておきます。


 …が、やはりお姉さんはどこふく風といったふうで、前を向いています。

 ですがお姉さんのにやにやはまだ止まっていません。


 「くーちゃんが探してる彼、私知ってるかもしれない。」


お姉さんは続けます


 「くーちゃんって人見知りとかあんまりしない方だから結構人前でもふわふわしてたんだけど、一人だけくーちゃんが避けようとする人が居たからさ。あのときは分かんなかったけど、あれ、くーちゃんの照れ隠しだったんだね。可愛い」


 クスリと笑うお姉さんの言葉に羞恥心が全身を駆け上がります。


 きっと今の私の顔は蛸さんのようになっているはずです。


「で、だね。ここで大事なお知らせがあります。」


 かしこまった様子で正面を向きつつお姉さんが微笑みます。


 「くーちゃんの愛してやまない彼は、うちの水族館で月末にやってる水生生物講座に毎回参加してるんだよ。よっぽど海の生き物が好きなんだね。」


 海の生き物が好き。ただでさえドキドキしていた胸がよりいっそう高鳴ります。


 月末になれば悪いけどかっこいい彼に会えるかもしれません。それもまた私の胸を高鳴らせます。


 ところで…

「今日は何月何日なのですか?」


「12月3日……くーちゃんには申し訳ないけど気長にまとっか?」


 なんてお姉さんは言っていますが別に私にとって悲しいことではありません。

私は人間の世界について無知なので悪いけどかっこいい男の子に会うまでにお勉強をしておきたいと思ったからです。


 あと27日。それくらい学習すれば私も人間の世界にもっと馴染めるはずです。


 ただそうなると新しいお家が必要になるわけで……


 といっても知り合いの人間は今のところお姉さんしかいないので、明日からも泊めていただけるようにそのうちお話しましょう。


 それからお姉さんのお家につくまではただひたすらに手を見ていました。

白いけれどクラゲの頃みたいに透き通ってるわけじゃないみたい……

指は五本あってどの指も先の方に甲羅のような爪がついています。


 さて<車>は速度を徐々に落としお姉さんのお家の前に停止しました。


 玄関でお姉さんに借りてた靴を脱ぎます。他にも靴があったのでここに置くのかな?と思った為です。

 お姉さんも玄関で靴を脱ぎ電気を着けてくれます。

 

「お疲れ様~。好きなところでくつろいでていいよ。晩御飯作っちゃうから」


「あ、私もお手伝いしましょうか…?」


「大丈夫、大丈夫!くーちゃん疲れてるだろうし。」


ということらしいのでありがたくふかふかなソファと言われる椅子に座ります。


 考えてみると昨日の今頃はクラゲとして前のお家でふわふわしていた頃です。

まさか人間になってるなんて夢にも思いませんでした……


 晩御飯を作っているお姉さんの方向からトントンと金属と木が当たる小刻みなリズムが聞こえます。


「あ、テレビ見る?……そこの黒い棒の上の赤いボタン押したら電源はいるよ」


えっと、赤いボタンが付いてる黒い棒…


 「あ、ありました」

 

 ボタンを押すと同時に背後から音が聞こえてきます。

振り返ると黒い箱だったものの中に人が居ました。

このボタンは魔法のボタンなのでしょうか?


とりあえず暇だったのでテレビと呼ばれた物を見ることにしましょう。


「さて続きまして、あの大物俳優、神谷(かみや)晴俊(はるとし)さんがスタジオに来ています!」


 大きな拍手と共に四十歳くらいの見た目の男性が入ってきます。

前に見た覚えがあるのですが、私の知ってる人間は二人しかいないので水族館に来ていた人に似ていただけかもしれません。

 

そういえばお姉さんの名前はなんなのでしょうか?


「お姉さんの名前ってなんですか?」


「んー、私ー?そっか言ってなかったんだね~。私は若奈(わかな)美南海(みなみ)っていうんだよ。」


「若菜美南海さんですね…分かりました!」


 お姉さんの可愛い素敵な名前。

きっとお母さんやお父さんに着けてもらったのでしょう。


 考えてみれば私は名前がありません。

クラゲは漢字で海月と書くそうです。私自身結構気に入ってる漢字なので、海月と書いてうづき……なかなかいい感じな気がします。


 一人で名前を決めているとお姉さんが料理を持ってきてくれました。

まだ温かく蒸気が登っています。


「……これは?」


「にくじゃがっていう料理だよ~。私の得意料理なのだよ。」


「そうなのですね。…ではいただきます………はむっ」


刹那、体に雷が落ちました。いや、正確には雷が落ちる程に<にくじゃが>はおいしかったのです。


「お気に召したみたいでよかった」


 ちょっと熱いですけど、口にかきこむ手が止まりません。

……お箸は初めて使ったにも関わらずある程度はつかいこなせました。

 お蔭で苦労することなく<にくじゃが>を食べることができます


 

本日二作目!

これ以降は毎週木曜日の17時から24時までに毎週一本ずつ投稿していきたいと思います。

拙い文章ですがこれからもよろしくお願いします!

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