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3ー6 完全敗北のワケ


 その時、異変に気付いてギルドに駆け付けたのは、俺だけじゃなかった。

 ギルドメイドの一人にして、ノベスールで俺達の案内を引き受けてくれた、小世界の巡回者、イオ。

 ギルドに乗り込む寸前に、何か良からぬ予感を察して買い出しから急いで戻ってきたという彼女とばったり再会。俺は手短に事の状況を伝えてから、万が一の為に、俺自身の破片(・・・・・・)を彼女に託した。

 そして、もしも俺が再起不能に陥った場合は、その破片とシーナたちを連れて、別の小世界へと逃げ出すように要請しておいたのだ。

 どうやら、イオは要請通りに動いてくれたらしい。

 俺が目を覚まして身体を起こすと、傍らには気を失ったシーナとキュロロの姿があり……イオは、相変わらず無気力そうな表情で俺のことを見下ろしていた。


「…………俺……敗けた……?」

「ついでに……ギルドも、全滅した……多分……あの時、ギルドにいた人……誰も、生き残っていない……」

「…………ごめん……」

「……第三皇女は、強い……逃げるのが、精一杯だった……」


 そう言って、イオは気遣ってくれるが……あの一瞬で受けたショックは、とてつもなく大きい。


 非人の力がありながら────一瞬の内に、完膚なきまでに、敗けた。


 何が、非人だ……。

 何が、神にも等しい存在だ……。

 目の前でシーナが危険に晒されていたというのに……これでは、初めて第三皇女と戦った時と、何も変わらないではないか。

 熱く苦しい感情が、胸の奥から込み上げてくる。

 それが形となって零れ落ちそうになった時……傍に転がっていたシーナが、俺の服の裾を弱々しく掴んだ。


「……シーナ……」

「……」

「……ごめん……辛い目に遭わせて、ごめんね……シーナ……」


 気を失っている様子のシーナは、答えない。

 だが、彼女の姿を見た時、俺は込み上げてくる感情をグッと堪えて、優しく、壊れないように、彼女の頭を撫でた。

 心の中で、何度も、何度も謝りながら……。

 せめて、彼女の前では情けない姿を見せないように……せめて俺だけは、彼女の逝く先を遮ることがないように……。

 すると、そこへ……。


「ツムギ様……!?」

「オイオイ、一体ドウシタッテンダヨ……?」


 遠くの方から俺の名前を呼ぶ声と共に、何者かが二人で駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。

 その身長差のあり過ぎる男女の姿を見た時、直ぐに、ここがどこの小世界なのか理解する。

 小柄な女性の方は、リネット。

 隣の大柄な巨人は、エルミリオ。

 ここは、人間とコクモノの領域で分かたれている小世界……。


 ────第三領域最前防衛地区の『セデ村』だった。





─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─





 無人となったギルド本部から外へ出ると、一人の女性が丁重に片膝を地面について私のことを迎える。全身が包帯に覆い尽くされていて外見は分からなかったが……その佇まい方には見覚えがあった。


「む、お前は……ロラントか?」

「第三皇女様、お久し振りで御座います。まさか、生きている内にもう一度お目にかかれるとは……」


 世界粉砕以前からそうだが、相変わらず清々しいくらいの礼節さだ。

 『へブロス』の者共は、私を前にすると大抵怯える。一体、人のことをなんだと思っているのか……こちらが呆れるくらいにビビって竦み上がり、報告すらマトモに出来ないのが大半だった。

 その点、私の真正面に跪いて、物怖じもせず、堂々と構えられるだけの胆力を見せるのは、『へブロス』の中でもロラントくらいだろう。


「御託はいい。顔を合わせた以上は、お前にも働いて貰う。いいな?」

「はっ、有難き幸せに御座います。このロラント、第三皇女様の行く先ならば、何処へなりとも」

「そうか。ならば、行くぞ」

「はぁい」

「フィリと言ったか、お前も来るつもりのか?」

「あはーっ、あたしも『へブロス』の一員ですからぁ。それで、第三皇女殿下ぁ。どちらまで行かれるつもりでぇ?」


 このフィリとかいう女は、よく分からん。

 少なくとも、私の知る『へブロス』の中に彼女は居なかった。粉砕したこのペデスタルで、彼女が何の為に『へブロス』に加入したのかは不明だが……まぁ、さして興味はない。

 私はロミアとフィリに背を向けて歩き始めた。

 標的は……最初から、たった一つだけなのだから。


「シーナを追うぞ────外れた道は、私が正す」


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