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最強アバターを引き継いで異世界転生  作者: 間宮 林太郎
第1章 プロローグ編
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第5話 魔晶迷宮の罠

「ここって、もしかして………迷宮、みたいな?」

 

森の奥に突き進んで目の前に現れたのは、入口が広く開いた石の門。その威圧感に、俺はちょっとたじろいでしまった。

 

「そう、みたいだけど……こんなところに迷宮があるなんて知らなかった。もしかしたらここから危険な魔物が溢れてたのかも」

 

ベルも驚きを隠せないようで、目を丸くしている。

 

ベルによると、この世界にはいくつかの魔晶迷宮というものがあるらしい。


魔晶迷宮にはその迷宮自体を機能させている核があり、それを魔晶石と呼ぶのだそう。

 

魔晶石は、禁忌とされる無属性魔法をそれぞれ封じてある。そして魔晶石に魔力を流し込むことによって、魔晶石に封じられている無属性魔法を使うことができるのだ。

 

だが、魔晶石があるのはたいてい迷宮の最深部。しかし現状どんな迷宮でも難度はあまり変わらず、攻略はほぼされていない。

 

つまり迷宮は、魔晶石を求めて攻略するために潜るのではなく、そこに寄生する魔物などの討伐や、魔晶石の魔力でできた鉱物の採取などが主なのだという。

 

聞いてみたらちょっと世知辛い迷宮事情だった。

 

「じゃあ鉱物採取をすれば、それなりにお金になる可能性があるってこと?」

 

「そうそう。魔物の討伐はギルドの依頼とかじゃないとお金にはならないけど、鉱物や薬草ならどこでもそれなりの値段で引き取ってくれるはず!」


「おお!」

 

別にお金に困っているわけではないのだが、この先何があるかわからないし、お金は少しでも欲しいところ。

 

俺とベルは、慎重に迷宮へと足を踏み入れた。



 

 

 

 

「…………意外と暗くないな」

 

迷宮の石門を潜ると、そこには下りの石段が現れた。先が真っ暗で見えない状態だったため、視界の悪さが気になっていたが、どうやらそんなに暗くなかったようだ。

 

「普通の人間なら、多分真っ暗だと思うよ?」

 

「そうなのか………」

 

そう言われると、いよいよ自分が普通ではないことが指摘されているようで複雑だった。

 

だが俺はあまり気にしないようにして、慎重に一段一段降りていく。

 

しかし、そこでふと重要なことに気づき、後ろを歩くベルを振り返った。

 

「…………ち、ちなみにさ、俺特に何も考えずに迷宮入っちゃったけど、ステータスとか大丈夫かな………?」

 

「んー、でも人里近くの迷宮はそんなに難度が高いものはないはずだよ?」

 

ベルが言うに、本当に高難易度の魔晶迷宮は普通魔界に多く、人間界の魔晶迷宮はそれほど難易度は高くないらしい。

 

それでも十分高難易度なんじゃないかとは思うけど………………まあ魔晶石の起動を目的とすれば話は変わってくるだろうが、鉱物をちょこっと拝借して帰るくらいなら問題ないとのこと。

 

俺たちは着々と石段を下り、魔晶迷宮の下層にたどり着いた。

 

こちらも、あまり暗くは感じないが、地上と比べてなんだかひんやりとしていた。


フロアの広さは二十畳くらいだろうか?暗くはないといいつつさすがに隅々までは見えない。


「魔物がいるかもしれないから、一応魔剣に戻るね」


「あ、ああ」


ベルが消えて魔剣に入ると、俺は剣を抜いて構えた。


グゥゥゥゥ……………


「っ!」


すると呼応するかのように、前方から小さな唸り声が聞こえてきた。


転生後初めての戦闘、初めての魔物だ。俺は本能的に足が竦んだ。危険とは無縁の日本で生きてきたのだから当然だが、やはり怖いものは怖い。


だがせっかく転生したのだ。こんなところで死ぬ訳にはいかない。いや、死にたくない。


強く魔剣を握り直すと、魔剣からベルの切羽詰まった声が聞こえてきた。


『アルト!前!』

  

ガルルルッ!

 

ベルが叫んですぐ、いきなり現れた一匹のハウンドが、突如として俺を目掛けて飛びかかってきた。

 

「うわっ」

 

情けない声を上げ、それでもなんとかしようとして____気がついた。

 

とても遅い。ハウンド、というより周りの世界すら時の流れが減速しているかのように見える。

 

これが走馬灯の前触れなら勘弁して欲しいが、どうやらそういう訳でもないらしい。

 

ならば____

 

「はぁっ!」

 

バシュッ!

 

俺は減速して見えるハウンドを、剣を振り上げ斜めに叩き切った。それは幻影でもなんでもなかったため、肉を引き裂く感触が剣から直に伝わってくる。

 

それに準じて血飛沫が剣と手にかかり、不快感で一瞬顔をしかめた。が、それ以上に、魔物をこの手で倒せたという驚きが勝った。


『まだ来てるよ!』


「…………っ!」


ベルの声で我に返り反射的に辺りを見渡すと、さらに六匹のハウンドがこちらにゆっくりと向かってきていた。

 

ガルルルッ……


倒れふした仲間ハウンドには目もくれず、ハウンド達は唸り声を上げて俺を威嚇する。


「……………はぁ」


俺は落ち着いて、剣を構え直した。


グルアァァァ!


俺の敵対行動に反応したのか、左にいたハウンド二匹が飛び上がる。が、遅い。俺は剣を振り上げ、続けざまに切った。


ザシュッザシュッ!


ハウンドの死体が転がり、俺はバックステップで後退する。


『アルト、戦い慣れてきた?』


「まだちょっときついけどな………コツは掴めてきたかもしれない」


幸い、俺を警戒してなのか四匹のハウンドはなかなか近寄ってこない。


元々慎重な性格なのだろう。


しかしここから四匹を同時に相手するとなると、ちょっと厳しいな。


「ベル、このハウンドを一気に片付ける魔法って使えるか?」


『もちろん!』


俺の意図を察したのか、ベルは魔剣から出て杖を構えた。


グゥゥゥ…………ガルルルッ!


いきなり現れたベルにハウンドは若干たじろぎ、そしてさらに警戒を強めた。


「水聖の民よ、汝降り注ぐは凍てつく氷槍『アイシクルランサー』!」


ベルが呪文を唱えると、杖の青い宝石が光り、氷の塊を形成し始めた。


グルァッ!


「くっ!」


バシッ!


まずいと感じたのかベルに飛びかかろうとするハウンドを、俺は地面を蹴った勢いでなぎ払う。


ベルが出たことで魔剣の威力が落ちているため、不安定な体勢から切るのは不可能だったようだ。


咄嗟にベルを見やると、ちょうど氷の塊から無数の小さな刃が発射されるところだった。


キャインッ!


ドサッドサッ


氷の刃は次々と体に刺さり、高い唸り声を上げながらハウンド達が音を立てて倒れていく。


「おお………!」


あっさりとハウンド四匹を倒したベル。


さすが悪魔、というか魔法めちゃくちゃかっこいいな!


俺も後で何か覚えたい。


「とりあえず周囲に魔物はいなくなったみたいだね」


「………ああ」


ベルの言葉に安心して、詰めていた息を吐き出す。


鉱物とか薬草とか近くにあるだろうか。そう思った俺は、しゃがみこんで壁の下の方を触る。


一応コケとかよく見る名前がわからない細い葉の雑草とかは生えてるけど、薬草っぽいものは見当たらない。


まあ降りてきたばかりのところにいきなりあるのはおかしいよな。


次のフロアへの道を見つけるか、と立ち上がろうとした時、突然俺の手が壁にめり込んだ。


ガコッ


否、何かを押した。


「へっ?」


気の抜けた声が意図せず出る。嫌な汗が背中を流れる中、俺とベルは目を開けていられないほどの眩い光に包まれた。






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