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最強アバターを引き継いで異世界転生  作者: 間宮 林太郎
第1章 プロローグ編
1/6

第1話 ノリのいい神様

「ここは……どこだ?」


こんなテンプレ過ぎるセリフは、さすがに天変地異が起きようとも吐くことはないと思っていた。


しかしながら自分を取り巻く現状があまりにも突飛であると、テンプレというのはこれ以上なく非現実な光景に沿うようだ。


とりあえずここは、白い。上も横も下も、全てが白いモヤのようになっている。


分かりやすく言うと、視力が壊滅的に悪い人がメガネを奪われた時みたいな視界。


ここはつまりあれだ、死後の世界的な何かだ。


最後の記憶は、クラクション音と異常に眩いカーライトなのだからまず間違いない。


『あれ、やっと気づいた?』


「うおっ」


どこからともなく降ってきた声に、止まってるはずの心臓が跳ね上がる。


視界の中には誰も見えないから、もしや神様的な何かか?


『うん、神様的な何かだよ』


「あ、すみません………」


心の中が聞こえてるタイプなのか………。


『随分と冷静だね?死後の世界的な何かなのに』


「そのネタ引っ張るのはやめてください………」


というかそこから聞いてたんですか。


すると頭上からくすくすと笑いをこらえる声が聞こえた。


『ごめんごめん、最近退屈でね。さて、本題に移るんだけど、ここはまさに君が言うように死後の世界。ちなみに僕は神様だ』


うわ何その自己紹介。ちょっとやってみたい。


『ということで、君に一つ質問。君は不慮の事故で死んでしまった訳だが、何か悔いはあるかい?』


「悔い………?」


『そう。まあ君の答え次第で、これからの君の運命は大きく変わることになる、とだけは言っておこうかな』


え、それってもしかして、答えによって天国か地獄かどちらか決められるってことか!?


『どうとってくれても構わない。ただし僕は君の思考が読める。悔いとして真っ先に出てきたものを拾わせてもらうよ』


え、ちょ、神様チート手強い。


にしても、人生の悔い?


死んだ人は基本的に悔いしかないと思うが。


『悔いには、その人の人生の全てが見えるんだよ。何が一番大事だったのかがね』


俺が一番大事だったもの………。


三十路過ぎで独身の俺にとって、一番の楽しみは休みの日にするMMORPGオンラインゲームだ。


他に金を使うところもないから、俺はアバターに金をつぎ込みまくり、いつの間にか重課金ユーザーとして確固たる地位を築き上げていた。


何万円か…………なんて怖くて途中から計算をやめたけど、あの重課金アバターが消えるのは、結構きついな………。


『…………アバター?』


神様の若干引いた声で我に返る。


「い、いやいや!違います違います!俺にはもっと高尚な悔いがあるんです!」


人生で一番大事なものが重課金アバターとか嫌すぎる!


いやまあ事実ではあるんだけど!


『なるほど…………アバターね。それは良い案だ』


これは本気で地獄行きか………と半ば諦めていたが、何やら神様の様子がおかしい。


「あのー………アバターがどうかしました?」


一人で何かを納得している神様。


怖いからちゃんと説明して欲しい。


『いや、こっちの話だよ。さて、君の悔いもわかったところでそろそろ時間だ』


ゴーン、と鐘のような音が鳴り、ぼやけていた視界がさらに見えにくくなる。


「お、俺これからどうなるんです!?」


『目覚めたら全てがわかるよ。君ら日本人の得意分野だろう?』


じ、地獄での社畜労働ってことですか!?


と、声に出そうとしてももう何も出ない。


『まあ健闘を祈るよ、アルベルト・デュークエンド・シュバルツ君?』


うおぁぁぁぁ俺の黒歴史、厨二的ユーザーネームをぉぉぉ!


あの神様、性格がかなり悪いらしい。


しかしそれを境に神様の声すら聞こえなくなり、意識が段々闇に沈んで行く感覚を覚える。


ああ……最後に変更不可のシステムいじって名前変えてくれないかな…………。


厨二病を乗り越えた大人なら誰しも持つ、黒歴史抹消という切なる願いを最後に祈り、俺は完全に意識を手放した____







ぱたん。


本を閉じる、乾いた音が静かに響く。


『…………さて、僕ができることはここまでだ。これによって世界がどうなるかは、誰にもわからない』


もちろん、神であっても____


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