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プロジェクト・グレーマター

エイリアンの未知の素材は様々であり、そのいくつかには新元素なのかもわからない物すらある。

未発見の、闇に包まれた物質をダークマターと呼ぶ。

未知から既知への境界線上にあるこれらはグレーマターと呼称する。


ようやく一つのグレーマターの調査が終わったが、その間に発見されグレーマターに分類されたサンプルは以下の五種だ。

・シールドクリスタル

緑色に透ける非常に強固な装甲材からはサイキックエネルギーが検知されている。

加えてエネルギー保存の法則に反したかのように外部から加えられた運動エネルギーを減少させる性質を持つ。

・オモイカネ

このエイリアンの集積回路として働く金属塊は同じ金属のはずだが場所によって導電性が変わる。

それによって微細な回路を成しているが、詳しい条件は不明である。

・ネットワークメタル

非常に柔軟で頑強な軽量合金。

詳細は下記の通り。

・ヴォイドガス

異様に軽く、赤く発光するガス。

サイキックエネルギーが検知されている。

フロートアイやエイリアンのアンテナから回収された。

エイリアンの光学兵器の発光を解析したところ、ヴォイドガスが使用されている可能性が高い。

・スマートハード

瞬時に多様にして複雑な構造を作り上げるエイリアンの携帯端末。

エイリアンが実際に我々の規格の端子を見たのは第一次降下が初めての筈だが問題なく接続してみせた。

こちらは未確認だが彼らの手のひらに収まるキューブからモニターやタッチパネル等に変形したという報告が複数ある。

何らかのナノマシンと考えられている。


この内、原理を解明され量産可能と言えるのはネットワークメタルだけである。

奇跡的なほど速やかに計画が進んだが、それでもエイリアンに対抗するにはペースが遅すぎると言わざるを得ない。

更にこの数倍の新素材が最低限の解析すら間に合わずに倉庫で順番を待っている。

こうした状況では研究部門と製造部門から人材と設備を集めた素材解析を専門とするチームの発足が求められるのは当然だろう。

専門チームの結成こそがプロジェクト・グレーマターであり、今回のネットワークメタル解析は予算のための実績作りと問題の洗い出しを期待して行われたに過ぎない。

その様な試運転でありながら大きな成果を得られた事は僥倖だ。

ネットワークメタルの詳細を知ればどれ程の成果か理解してもらえるはずだ。



エイリアンの道具や建造物には銀色の軽い合金が多く使われ、配合に違いはあれど基本構造は共通している。

我々はこの軽量合金をネットワークメタル(NWM、他部門では製造部門発のウェーブメタルの呼称が一般的)と呼んでいる。

その由来は芯材となるノードを中心に一定の周波数の交流の下で立体的な網目構造を形成する性質からだ。

この網目構造をとったネットワークメタルは非常に高い弾性限を持つ上で岩石と同等の弾性率で持つ。

石材並みに変形させにくいのにゴムの様に大きな変形でも降伏しないと言うと分かりやすいだろう。

加えて鉄の約三倍軽い。

この異様な物理的性質からグレーマターとして扱われたが、我々の知る元素と加工法の組み合わせで製造できる合金であった事は驚きだ。

エイリアンの装甲の隙間を埋める副装甲としても多用されることから分かる様に防弾効果も期待できる。

岩石程度と聞いて防弾素材としては頼りない印象を受けるかもしれないが、頑丈過ぎる素材は弾頭は受け止めても緩衝できず、素通しした方が被害が少ないこともある。

セラミックプレートは破壊される事で緩衝するのに対し、ネットワークメタルは変形する事で緩衝し再び元の形に戻る。

二発目以降への防御効果で大きな差が出ると期待されている。

様々な形に加工できる点も見逃せない。


大雑把な作り方も残しておく。

まず二度のメカニカルアロイングを行う。

熱で融解させるのではなく複数種の金属をナノスケールで機械的に粉砕、混合する事で合金化する方法だ。

我々ではナノスケールだが、彼らは原子スケールでのメカニカルアロイングが可能なようだ。

二度目は一度目で作ったアモルファス合金を壊さない様に慎重に行う必要がある。

こうして出来上がるのがノードメタル73である。

ネットワークメタル自体は溶かして混ぜるだけなので既存の合金工場でも作れる。

微細で偏りなく散っていれば強靭な網ができ、逆に欠片等の不純物が混入する原因にもなる等、ノードメタルの質が最終的な品質に大きく影響する。


接合材としては網目構造の作り方が重要である。

網目構造に移行する際、氷と同じ様に整列する事で隙間を作り体積が増加する。

この性質を利用し圧縮したのちに網目構造をかなり早いペースで形成させる。

初期の網目構造に加われなかった分子が網目構造の中で網目構造を作ろうとした結果、絞り出される様にして紐状になる。

この紐は複雑に捻れている上、絞り出される過程で破折と結合を繰り返して初期の網目構造と噛み合う様に網目構造を作る。

二つ目の網目構造は形成される時に僅かな隙間まで滑り込み、食い込む。

この時の密着度は高く、二次的結合として作用するほどである。

エイリアンは母材にこの二つ目の網目構造が絡み付きやすい構造を作ることで機械的接合と二次的接合の両方として使う。

ネットワークメタルは柔軟であるので二つの材料間に強度差があったり強い振動が想定される時も接合材を厚くすることで緩衝材となり得る。


ネットワークメタルは大きな可能性を秘めた材料だが、現在我々がネットワークメタルを本格的に利用するには不足している。

それは生産設備が実験設備と製造部門の試作品のどちらかしか無かったために生産量が限られていることが理由である。

共同で研究していた製造部門は量産化に注力し、ペーパーカンパニーの一つを利用し工場を建設中である。

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