プロジェクト・マグチェンジ
エイリアンの磁力式銃の基本的な構造としては我々がいままで試作してきた物と大差はない。
しかし、彼らのそれは未知の物質で製造された上、制式配備され戦闘証明された後の物であるようだ。
これらの銃には大小様々な改良がなされており、これらのアイデアを模倣することで我々はより安定した実戦レベルの磁力兵器を手に入れた。
コイルアサルトライフル「メテオ」とコイルハンドガン「ダストテイル」が最終試験を終え、審査を待っている。
特筆すべき点としてほとんどは技術的には我々にも製造可能だが未発見であった物質で構成されていた。
試作にも成功しておりゆくゆくは大量生産も可能になるだろう。
並行進行していたプロジェクト・グレーマターとの協力がなければこうも順調にはいかなかっただろう。
まず前提として、単純な威力では現行の火薬式より明確に優れているとは言えない。
人間が使う以上反動に上限があり、高速になるほど抵抗を強く受けて減速しやすくなる。
また、出力を上げれば発熱も増す。
射撃はコイルガン方式を採用しており高温超電導液を利用しているのだが、高温と言っても超電導にしてはの話であり発熱は大きな問題である
試作品はコイル部を高出力ラジエーターと共に魔法瓶で隔離することで超電導を維持しているが、出力を上げれば熱対策もより大掛かりな物になるだろう。
費用対効果と反動を考慮しテストに参加した兵士の意見を取り入れた結果単発では5.56x45mm NATO弾と同程度に落ち着いた。
磁力式になった結果、弾薬に火薬や雷管を収める薬莢が不要な点から弾薬はよりコンパクトで軽量で弾頭のみと言ってよい。
さらに薬室での爆燃を必要とせず、磁力を発射だけでなく装弾機構にも利用して可動部品を減らしている。
火薬式に比べて構造の大幅な簡略化がなされた結果、本体重量は半分ほど軽量化した上で強度は増している。
これらは銃本体の耐用年数の延長、弾薬含めた生産性と保存性と運搬性の向上を期待できる。
磁力式は火薬式より運動エネルギーへの変換効率が良く、ロスとなったエネルギーも熱となる割合が多いため反動が減少している。
つまり、精度と連射速度の両方が向上し、銃本体もマガジンも軽量化した上で装弾数、携行弾数が増加している。
それらの結果同じ条件の射撃でもより多い命中弾を期待でき、結果として威力が向上したように感じられる。
射撃場とキルハウスでのメテオ‐89式比較では平均して36.2%の命中率向上、最大22秒のタイム短縮という結果が出ている。
最終試験ではウォリアーも速やかに無力化した。
欠点として、射撃の条件にこれまで通りの条件に加えてバッテリー残量が加わった。
本体に主電源用、マガジンに射撃用のバッテリーを内蔵する。
バッテリーによって重量が増したが問題視はしていない。
元々軽すぎる事によって信頼性への疑念を招いていた上、重くなってなお同種の銃の中では軽いからだ。
また、マガジン数本分の連射をすると冷却能力を上回り熱を持ってしまう。
すると高温超電導液の電気抵抗が高くなり、効率は下がり多くの熱を発生させる。
超電導しなくなる前に安全装置が働くがそのころには主電源用バッテリーも大量に消費してしまっているだろう。
常に指切りを意識し、本体が熱を持ったら射撃は控えるように。
バッテリー切れには常に注意してほしい。
また、射撃時に強い電磁場を形成する必要から発砲音が抑えられたとはいえ適切な装備をした者には発砲者の位置は明瞭であり、ステルス性があるとは言いにくい。
総合すると磁力兵器に移行すれば兵士への負担を減らした上で戦闘能力の向上が期待できる。
注意
最終試験の実戦中に銃撃によりメテオが破損した例がありました。
その後、内部から高温超電導液が漏れた状態で発砲したことで感電し重篤な熱傷を負いました。
内部から液体が漏れた場合は危険なので新しい物と交換する事。
また、破損した銃は念のため安全装置をかけておき、他の者にも分かるようにしておく事。