表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

魔王は琵琶湖で静かにサーフショップをやりたい

作者: 毛蟹葵葉

ギャグのリハビリで書きました。

面白くなかったらすみません。

なんてことだ…。




私はその場で膝から崩れ落ちるという経験を初めてした。


私が今いるのはよくわからないところだ。そもそもここは私の住んでいる日本ですら無さそうだった。


「あ、あの、勇者様?」


戸惑うように目の前にわらわらといる人集りの甘いマスクを被った男…。

たぶん王子さまっぽい奴に声をかけられた。


「何ですかここ?」


私はようやくそれだけを口に出すことが出来た。思考回路はショート寸前だ。

立っているのは謎の魔方陣の上だった。


たぶん、恐らく、間違いなく勇者として異世界に召喚されたやつだと思う。



「ここは、君たちの世界で言う異世界という場所だ…。その、魔王を倒してもらうために呼び出したんだ…。」


甘いマスクの王子…。メロンでいいや。


メロンが丁寧に説明してくれるがそんなことどうでもいい。



なんでこうなったの?



そんな事よりも…。


浜名湖にある遊園地のコーヒーカップを調子に乗ってくるくると回しまくっていたけど。


まさか…。


脳震盪を起こしてる間に異世界召喚されるなんて不幸あってもいいだろうか…?


私はこんな娯楽も糞もないようなところで魔王なんか倒すつもりなんて毛頭ない。

というか、他力本願な奴らに手を貸すつもりもない…。


私はメロンの説明を遮ってハッキリと言った。


「え、嫌だ。自分ですればいいじゃん。」


「そんな…!かつての勇者はそんな事一言も言わないで女性なのに魔王の討伐に行ってくれたのに…!」


メロンは美しい顔を歪めて涙を流しながら訴えかけるが、私からしたらいい大人が情けない。

メロンは顔だけは美しいから恐らく歴代の勇者の同情を買って討伐させようとしたのだろう…。


本当に心根が腐ってるな…。


私はそう思った。


「うるさい。私も女だけど…。行けって言うの?行かないよ。帰してよ。自分勝手に本当に呼び出して迷惑…。」


「何だとこの女。下手に出ていたら偉そうに…。歴代の勇者と違って色気も何もないから、魔王の供物にもならなさそうだがさっさと向こうへ送れ!」


メロンは別人のように美しい顔を肥溜めのように汚く歪ませて私を罵り出した。


「うるせぇ。大人が他力本願で情けなくないのか?色気がないだぁ?」


私が睨み付けながら凄むとメロンは冷や汗をかきはじめた。


「そ、そうだろう。胸もない子供が!」


そう、私は子供だ…。

だってまだ高校二年生だもん。


「子供をそういう目でお前は見ているのか変態…。」


冷静に考えるとそうなるが…。

私の一言にメロンの周りにいた人集りが慌てたように一気に離れた。

たぶん、心当たりがあるのだろう。


「ち、ちが…!早く魔王のところへ送れ!」


メロンは顔を真っ赤にさせて地団駄踏むように私をどこかに送れと叫び出した。


メロンのくせに顔をリンゴのように真っ赤にさせた男が視界から一気に消えるのを見た。




パッとテレビのチャンネルが変わるように私は全く別の場所に居た。

恐らくここも日本じゃないだろう。


「……。」


薄暗くゴーストハウスのような埃っぽい部屋の中に居た。


そこには大きなソファがひとつだけ置いてあって、その真ん中には一人の男が座っていた。


年齢は二十歳そこそこで、肌や髪の毛は雪のように真っ白で、瞳はピジョンブラッドのように輝かんばかりの赤さだった。


すっごい美形…。

あのメロンなんて鼻糞程度の綺麗さだった。


その男は私を見た瞬間、驚いたように目を見開いて軽くのけ反っていた。


ビックリしていても美形は美形なのね…。


私はぼんやりとそんな事を思った。



「き、君は…!?」


私はやや、慌てたようにその男に声をかけられた。


「えっと、魔王ですか…?勝手に勇者として呼び出されましたけど、何も危害を加えるつもりはありません…。」


さっきとはうってかわり思わず敬語が出てしまったのは魔王(?)が美しいからだった。


「君は…。日本人か…?」


魔王の突然の質問に私は


「は、はい。」


「に、日本に連れていってくれ!」


魔王は私に食いつきそうな勢いですがり付いてきた。


「な、なぜ?」


なんで日本に行きたいんだこの人は…?

アニメが観たいとか?

カラオケに行きたいとか?

トイレをウォシュレットにしたいのか?




色々な考えがぐるぐると回るが答えは見つかりそうになかった…。










「その…。琵琶湖でサーフショップやりたいんだ…。」








魔王は顔を恥じらう乙女のように赤らめて私に、トイレを我慢する子供のようにモジモジとしながら照れ臭そうに答えた。



「は…?」



真っ先に思ったのはこれで、なんでサーフショップやりたいんだよ…!と私は心のなかで突っ込みを入れてしまった。



「俺、こんなに肌が白いだろう?外に出ればきっとこんがりと小麦色の肌になると思うんだ…。いつも不健康そうに見られるから、なんか勘違いされて…。」




魔王は恐らくメラニン色素なんて無さそうだった。

不健康以前にこの男ほど日光の似合わない男はいない気がする…。


彼の場合小麦色の以前に火傷しそうな気がするのだが…。


そして、勘違いされて何をされたのか私はとても気になって息を飲んだ。



「な、何をされたのですか…?」




「一応魔王なんだけど、何かあるたびに怖い女の子を人間がこっちに送ってくるんだ…。突然襲いかかられて、服を…。くっ…。」


魔王はそれ以上は語らなかった…。


恐らく歴代の勇者に襲われたのだろう。逃げ切れたのかは恐ろしくて私には聞けなかった。



「そうなんですね…。」


「だから、小麦色の肌になったらきっと健康的に見えて人間と仲良くなれると思うんだ…!」


いや、小麦色の肌になってもきっと根本的にあの連中と合わないと思うが…。

それをいったら彼は傷ついて泣きそうな気がした。


それに根本的な問題としてどうやって元の世界に戻るつもりなのだろうか…?



「はぁ…。どうやって琵琶湖に行くつもりなんですか…?」


「君を元の世界に戻す転送装置があるんだ…。君と一緒に帰れば。なんの問題もない…!」


え、そんな便利な物があるの…?


まぁ、異世界だし何でもありか…。

私はそう結論付けた。


でも、私が戻るのは問題ないが、魔王は目的を達成できたらどうやってこちらにもどるつもりなのだろうか…?


「小麦色の肌になってどうやってこちらに戻るんですか?」


「それは…。」


魔王は困ったように俯いた。



「とりあえず家に帰りたいんですけど。着いてくるならハッキリと今決めてください。」


早く決めてくれないかな…。

私はぼんやりとそう思いながら魔王を見ていた。


「あぁ…。よし、行くぞ…。」



魔王は私の心配をよそにあっさりと決めてついていくと言い出した。


え、大丈夫なのか?



「帰れないかも知れませんよ?」




「大丈夫だ…。その…。ウォシュレットというものを体感したい…。」



恥じらいの乙女魔王は顔を赤らめてそんなことを言い出すから、私は可愛いなと思ってしまった…。



「よし、これで君の元の世界に戻れるはずだ…。」


転送装置はどう見ても便座だった。

ウォシュレット機能つきのそれにしか見えなかった。


魔王は息を飲みながらなぜか私に抱き付いてきた。


「あ、あの…。何か?」


「一人用なんだ。すまない。」


そう言いながら魔王は私の首筋に顔を埋めた。


「あぁ~。処女の匂い最高…。」



は…?



「今まできた女はみんなセクシー系でどうも食指が動かなかった…。処女じゃなくても君なら結婚してもいい…。してほしい…。むしろしてください…。」


魔王は突然そんな意味不明な事を言い出した…。


「あ、あの…?」


「あ、すまない…。もし、無事に転送出来たら…。その…。」


魔王はなぜかこの段階で死亡フラグを突然たて始めた。


さっさと帰ろうよ…。結婚とか冗談だろう…?


そう言いたくなるのを抑えて魔王を睨み付けた。


魔王はトイレを我慢する子供のようにモジモジと内股になりながら顔を伏せた。



「よし、魔法の発動の言葉は…。『オーシャンパシフィックピース!!!』」


何だそれ…!?

琵琶湖でサーフショップやりたいのになんで海なんだよ…!


私の突っ込みの言葉を吐き出す前に、私達の視界は真っ白になった…。




「っ…。」



それを感じたのはほんの一瞬で終わった。


「おい…。大丈夫か…?」


私はコーヒーカップで脳震盪を起こして倒れこんだ場所に居た。


私に声をかけたのは魔王だった…。


「え…!?」


「無事成功した…。」


魔王は満面の笑みでこちらを見てきた。


「良かったですね。」

苦笑い混じりで彼を見ると、鼻息荒く私の手を握りしめた。




「琵琶湖行ってくる…!ヒッチハイクで…!」




「そこは魔法使えよー!」





私の叫び声が遊園地に響いた。

書ききって言うのはあれですけど、パンチの弱い終わり方で自分でも頭を抱えています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ