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第3話「協力者?」

よく考えれば、あの犬頭は別に私を馬鹿にしたわけではないし、襲って来たのもこの肉体が欲しいから、だった。相手の問題がこちらの生死に関わる以上、反撃するのは当然のこと。だけどあの何かにすがるような顔(実際は影なので顔が見づらく、そんな気がしただけ)は鮮明に思い出せる。それにしてもあの声はなんだったのか。なんとなく聞き覚えがある。

ご主人様(マスター)、前。」

考え事をしつつもだいぶ歩いたらしく、さっきは見えなかった黒い壁の目の前まで来ていた。幅は普通のビルくらいで、形はビルそのものだった。

「アマネ、影って生物以外も真似するの?」

「はい。影はもともと意思を持つものではなく、生物の形をとった時点で初めて意思が宿ります。まあ、私たち光も似たようなものですが。」

なるほど、要は真似するものに左右されるのか。全く影は謎が多い。

ご主人様(マスター)、つけられてます!」

そう言ってアマネが私に憑依し、あの体の軽さが戻ってくる。

後ろを見ると、いくつか影でできた車や建物が見えるだけで、生き物…を模倣した影はいない。

「えーと、誰かいますか?」

「わぁーっ!」

「のわっ!」

「どー?ビックリしたー?」

…頭の回転が追いつかない。


少し先にあった車(の影)が突然飛び上がり、小さな人型になって驚かして来た。その人型はよく見るまでもなく影。しかし今までと違って亜人でもものでもなく、ほぼ完璧に人を模倣していた。

肩まで伸びた灰色の髪に、これまた少し濃いめの灰色のパーカー。肌は浅黒いものの色が付いており、多分アマネの言ってた力のある悪魔だろう。多分小学校低学年くらいの歳の少女だった。多分レイジが好きなやつだ。

レイジのロリコン属性については知っている。すまし顔してゲームでは幼女アバターを使いこなし、たまにスマホの待ち受け画面が、まあ、そんな感じになっていた。

「オネーサン、さっきの悪意って、オネーサン?」

ハッと我に帰ると、少女の影は至近距離で話しかけてきた。

「悪意?」

「そ、悪意。」

人形っぽさのある無機質な、だけどとびっきりの笑顔で言ってくる。妹か何かのような親しげな感じで悪い気はしない。それに上位の悪魔に敵対されるわけにもいかない。

ところで『悪意』とは…


影の少女は嬉しそうに、私を見つけた経緯を話してくれた。

影は感情のないやつが多くて退屈していたこと、感情を持つ自分がなぜか力を得たこと、人間は『愛』と『悪意』が大好きなこと…

「それでね、妹を捜してたら、オネーサンからすごい悪意を感じたんだ、それでね…」

彼女の言う『悪意』とは、『復讐(ネメシス)』のことだろうか。どっちにしろ、あまり好ましくなさそう。

「気になって、ついてきちゃった!キャハハ♪」

影のわりに明るい笑顔で言う。

…ん?

「あれ、さっき妹って言った?」

「言ったよー?私の妹ねー、私と似てるの。でも気持ち悪いくらい真面目でね、ずっとシータの言うこと聞いてるの。」

…なんか知らない単語まで出てきて、頭の整理が追いつかない。

〈今シータって言いました?〉

私の中のアマネが反応する。シータって誰?

(ねぇアマネ、シータって誰?)

〈はい、シータっていうのは、一言で言うとラスボスです。〉

ラスボス?

〈全ての影を統べる、もう何千年も生きてる最強の悪魔です。〉

へぇ、んでこの子の妹はそいつに心酔してるのか。

「シータね、なんか石版(カギ)って言うのを集めてるの。あ、シータの声だ!」

それだけ言うと、この子は目を閉じてしまった。たまにうなずいている。

…つい違和感もなく普通に話していたが、よく考えれば相手は影で、レイジを連れ去った側にいる。もしかしたらこの色彩のない世界で初めて、この人間のような親しげな少女に会ったことで安心したのだろうか。

ふと、彼女は目を開いた。

「オネーサン、シータがね、人間の女を見つけたら殺せって言ってたの。体は殺った影がもらっていいって。」

…マズイ。多分犬頭を殺したことで、ラスボスに目をつけられてしまった。まさかこの子も…

「うーん、オネーサン殺しちゃうと、あの悪意見れないなー。だから私、オネーサン殺さないね!フフッ♪」

不幸中の幸いか、この子は…その『悪意』とやらがある限りは…味方かな。それにしても、こいつとかこの子とか、なんか呼びにくい。おそらく『悪意』を見るまではついて来そうだし、名前はあるのだろうか。

「君ってさ、名前はあるの?」

「ないよー♪」

そっか、ならばすることは一つ。

「名前つけよう。」

「名前?いいのー?」

〈なんでその考えに至ったんですか⁉︎〉

(うーん、なんとなく。アマネに名前つけたのもこんな感じじゃん)

〈まあ確かにそうですけど、まだ味方かどうかわかってない相手に…〉

「よし決めた!黒成分多めだから、アマネにならって『クロネ』でどうだ!」

瞬間、目眩。視界が暗転した。




レイジの体を得た影は、自分と姉とを繋ぐ『糸』が切れたのを感じた。シータ様の指示もあり、最近はなかなか会えなかった姉だが、そろそろ捜し出して会いに行こうと思っていた。この新しい体を自慢して、一緒にお茶(の影)でも飲んで、そして…

『糸』が切れたということは、姉は死んだか、それとも何かと契約したか。

…まさか、あの自由奔放な姉が?この時になって、影はようやく自分が動揺しているのに気づく。契約もないとしたら、姉はおそらく誰か人間に気に入られ、『名付け』をされてしまったのかもしれない。悪魔と天使にとって、それは人間との強い絆を示すもの。長く会っていなかった姉との細い繋がりが消えても不思議ではない。


影は次の目標を定めた。その人間を殺し、姉を取り戻す。姉を奪ったものには、それ相応の苦しみを与えねばならない。今の彼女にとって、『石版(描き)』なんてどうでもよかった。




目を覚ますと、見た目対照的な2人が覗き込んでいた。

「おはよう…ふわぁ」

「おはよー!」

「前言いませんでした⁉︎光や影にはそう簡単に『名付け』なんかしていいものじゃないんですよ⁉︎私の加護がなかったら今頃干からびてミイラになってましたよ⁉︎」

えーと、何があったのか…

眠い。

「こら、立ってください!レイジさんを捜しに行くんでしょう!」

その言葉で目が覚めた。そうだ、ここ『深淵の世界(タルタロス)』じゃん!なんで寝てたんだろ。

「前も言いませんでした?私の『名付け』の時もそうでしたが、これにはかなりのエネルギーを持って行かれるんですよ!」

あー、そうだった。そういやそんな話もあったな。そういえばクロネは、なんか存在感ました…気がする。色合いがより鮮やかになった気がするからか。

「クロネ。クロネ?クロネ!」

クロネは嬉しそうに名前を連呼している。なんだか妹みたいでかわいらしい。今度はアマネに絡み出した。

「アマネ〜、私クロネだよー!」

「ホントに鬱陶しいですね!上位天使の力をもって浄化しますよ‼︎」

「クロネ知ってるよー。アマネ攻撃できないでしょ〜♪」

「ダァァァァ‼︎」

久々に盾を取り出したアマネがクロネを追いかけ回してる。絶対武器には向いてないだろうけど…

ふと、近くのビル影の陰に視線を感じた。隠す気もなくずーっと見ているようだ。あの様子からするに多分敵だけど、なんで襲ってこないのだろう。

不意に、そいつが影に沈み、消えた。




時は少し遡り…

上位悪魔のウルヴスは、例の人間を観察していた。見た目は人間のマッチョな男を模倣しており、その見た目どうりパワーを生かした戦闘が得意なのだ。

しかし、そんなウルヴスを凌ぐパワーの持ち主もいる。それがまさに、ターゲットと親しげに話している影、シータ様の娘様の姉様なのだ。本気で暴れれば、こっちが多少傷ついてもあの女を殺すことはできる。でもシータ様の娘様の姉様を傷つければ、ウルヴスの未来はない。

どう襲うか迷っていると、あの女が言った。言いやがった。

「『クロネ』でどうだ!」

その時女は倒れたが、問題はそこではない。

あいつ、シータ様の娘様の姉様に『名付け』しやがった!

しかもなんか天使出てきた‼︎

コイツはヤバイ、あの女何者だ、と思いさらに観察することにする。

たったの3分ほどで女は起きた。

「マジかよ…」

いくら天使のエネルギーをもってしても、生まれつきの上位悪魔に名付けして3分で起き上がるヤツは普通いない。間違いなく、アレは敵にまわすべきではないと感じ、ウルヴスは戻ろうとすると、あの女はこっちに気づいた。

とりあえずその辺の普通の影を装い、『影移動』する。

ていうかこれって任務放棄か?

だいぶ長くなっちゃいました。

次回は戦闘要素入れようと思ってます。

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