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The World Break  作者: つっちー
Episode1 破村壊斗
2/6

能力取得

...ここはどこだろう。



目が覚めるとそこは真っ白な部屋だった。



僕はその部屋の真ん中で黒い椅子にすわっていた。



『なんでこんな所に...』



『君が望んで来たんでしょ?』



気が付くと僕と同じくらいの背丈の男の子が目の前に立っていた。



黒いパーカに黒いGパン。



フードを被っていて顔が良く見えない。



黒に身を包んだ彼はどこか自分に似ているように思えた。



『僕が望んで?』



『そうだよ、君の意思で君はここに居る』



僕の意思?僕の意思は『ただ平穏に暮らしていたい』だ。



面倒ごとに巻き込まれるのはゴメンだ。



『それは君の意思じゃないよね?』



僕の意志じゃない?そんなことは無い。



『僕は君であり、君は僕だ。だから意思も伝わる』



『訳分からないこといわないでくれ。君が僕だというならそういうファンタジー系の話は信じない事くらい知ってるだろ?』



『そうだったね、今は信じなくていい。そのうち僕が必要になる時が来るよ


...必ずね』



黒い男の子はそう告げると僕に背を向け遠ざかっていった。



『待ってくれ!必要ってなんだ!そもそも僕の意思が違うってなんなんだよ!!』



その叫びも虚しく響くだけ。



黒い男の子は振り返ることなくフッとその姿を消した。



...彼はいったい。








...きろ。



...きろって!




『起きろよ!!!』



『うわ、びっくりした!!!』



アレ、此処は教室か...



『珍しいなお前が学校で寝るなんて。昨日徹夜でもしたのか?』



『いや、特に夜更しはしてないよ。ただ授業が退屈すぎて睡魔に負けたみたいだ』



僕を起こしたコイツは


糸田造瑠イトダツクル


面倒見がよくてポジティブな性格で小学校からの付き合いである。



僕の数少ない親友だ。



『そういえば壊斗、寝てる間に夢でもみたのか?なんか少しうなされてたぞ』



『うん、夢なのかな?まぁたいした事じゃないよ』



『ならいいんだけどよ』



そう言うと造瑠はこっちに背を向け黒板を板書し始めた。



アレは夢だったのだろうか...それにしてもなんだがリアルすぎるし。



少し気がかりだけどあの夢は心の片隅に置いておこう。



そして僕も授業に集中するのであった。





キーンコーンカーンコーン♪

1日を終えるチャイムがなった。




『やっと終わったー。毎回思うんだけどさ一日って長いよなー』



造瑠が伸びをしながら僕に問いかけてくる。造瑠にとっては一日の授業が苦痛で仕方ないんだろうな。



コイツ頭悪いから...(笑)



『毎回思うんだけどさ、ここの高校結構頭良くないと入れなかったけどさよく入れたよね、造瑠頭悪いから落ちると思ってたのに』



『おい、なんてこと言うんだよ!まぁ俺は勉強せずにスポーツ推薦で入ったんだけどな(笑)スポーツの場では能力の使用は禁止されてるし。ランクもそんな関係ないよ俺はバスケでてっぺん取るぜ!』



造瑠は馬鹿だけどスポーツ、特にバスケに関して天才級に上手い。本人いわく考えずに直感で動いてるんだとか...



まぁ、確かにその方が造瑠らしい。



中学時代は造瑠の活躍もあって全国ベスト8の成績を残している。充分立派な成績だと思うのだが造瑠は当時めっちゃくちゃ悔しそうに泣き叫んでいた。



本人は本気で優勝できると思ってたらしく部活を引退してからも練習を欠かさず高校に入学してすぐにバスケ部で成績を残し、1年生でレギュラーを獲得している。



相当燃えている。



『そのバスケに対する情熱を勉強面に向けてほしいもんだな。そうすればお前もBランクからAランクになれるのにな』



『ランクなんて関係ないって何がBランクだよ馬鹿馬鹿しい。そういうお前だって早くSI-DOを開花させればAランクになれるだろ。Aランクの人間を差し置いていつも成績トップだろ?頭は良いのになんで開花しないんだ?』



『そんな事僕に言われても分かんないよ...』



そう、僕は人以上に知力は高い。多分理解力が桁外れなんだと思う。自慢する訳では無いけど生まれてこの方成績1位の座を譲ったことは1度もない。



しかしいくら賢くても能力が無ければBランク。だから諦めはついている。



知能では勝っているし何時か能力も開花するだろうと思っているから今はただ平穏に暮らせればそれでいいさ。



『まぁ、いつか能力者になれるだろ。じゃ俺は部活に行ってくるな!お前も頑張れよ!』



そう言って造瑠は颯爽と教室から出ていった。



『相変わらずポジティブな奴』



そう呟いて僕も教室を出た。






SI-DOの開花。



人によって個人差はあるが一生SI-DOが開花しない人もいるらしい。




ちなみに造瑠は中学の時にSI-DOを開花させ、造形物を別の造形物に一瞬で作り替える能力を手に入れた。



造瑠はその能力を『"造形変化マターメイク"』と呼んで必要な時に能力を使用している。



その能力を使って自宅付近の空き地にでっかいバスケコートを作ってそこで自主練習をしている。



能力を悪用しない辺りは造瑠のいい所だな。



本人はバスケ以外にも物を改造したりするのが好きで昔の口癖は『なんでも作れるようになりたい』だった。



多分造瑠の願いが能力として現れたんだと思う。



そう思うと願いがない僕はSI-DOが開花しないんだなと納得してしまう。



願いか...特に無いんだよな。




『やぁ、壊斗まってたよ。一緒に帰ろ』



学校の校門で待っていた少女が僕に声をかける。幼馴染の時崎鏡花トキザキキョウカだ。



『鏡花、幼馴染だからって僕と一緒に帰るのは不味いんじゃないか?鏡花AランクだしBランクの僕と一緒にいたらなんか損しないか?』



『損なんてしないって。壊斗は考え過ぎー』



軽く笑いながら僕の肩を叩く。



僕の隣で歩いてる鏡花は容姿端麗で頭もよく、スポーツも程よくこなせる。簡単に言うと完璧美少女だ。



故に鏡花はすごくモテる。高校に入学してすぐに複数人の男から告白されてるらしいのだが、『あなたに興味ありません』と相手の心を折るような発言をして全部断っている。



そんな難攻不落の彼女と一緒に帰えれる僕はある意味幸せかもしれない。



『てかさー壊斗はなんで能力開花しないの?やっぱり明確な願いがないから?』



『それがわかったら苦労しないよー鏡花は願ったら能力開花したのか?』



『多分そうかなー?あの時はそうなって欲しいって必死で思ったから。そしたら今の能力が使えるようになったって感じ』







鏡花の言うあの時とは、今からちょうど二年前。忘れもしない出来事があった。




その日は鏡花の家でテスト勉強をしている時だった。当時僕らは中学2年生で幼く今みたいに状況判断能力も乏しい小さな子供だった。



鏡花の両親は共働きで帰りが遅くその日も僕と鏡花の2人だけだった。そんな時窓ガラスをかち割って空き巣が家に侵入してきたのだ。



そして間が悪い事にそのタイミングで僕らは2階の鏡花の部屋から1階のキッチンに飲み物を取りに行ってしまったのだ。



空き巣も人がいるとは思っていなかったらしく僕らを見るなりいきなり襲いかかって来たのだ。多分パニックに陥っていたのだろう...



その空き巣は持っていたナイフで僕の腹を刺しそのまま窓から逃亡した。




『なんでっ!!なんで壊斗がこんな目に...なんで...意味わかんないよ!!』




鏡花が泣きながら叫ぶ。彼女の涙がポタポタと落ちる。




その様子を僕は虚ろな目で眺めていた。




あー意識が朦朧としてきた...すごく眠い...俺死ぬのかな...




頭が真っ白になるような感覚に襲われた。走馬灯なのかな?今までの思い出が鮮明に蘇る。




『お願い神様!時を戻して!!壊斗の身体を戻してよ!!戻ってよ壊斗!!戻ってよ!!!

お願い...』



彼女の瞳から涙がぽつりと零れた。その時だった。




鏡花の手から暖かな光が溢れ、僕を包んだ。




薄れていた意識が回復していく。鏡花が何をしてくれたのかも理解出来た。これは鏡花の能力。彼女は能力を開花させたんだ...



意識が完全に回復した時だった辺りに散らばっていた僕の血液は綺麗さっぱり無くなっており、刺された腹の傷も完全に塞がっていた。と言うよりも刺さる前の状態に戻っていた。




『時崎鏡花、貴方は対象の生物や物体の時間を1時間まで巻き戻せる能力を手に入れました。マザーBCは貴方の進化を認めます。本日この時をもって貴方はAランクです。おめでとうございます。』




無機質な機械音が部屋に響いた。




『やったじゃないか、鏡花これで君も...』




その時だった。僕が言いたい事をいう前に鏡花が抱きついてきた。




『よかった...』




小さな声で彼女はそう言った。






以上が彼女の能力が開花した時の出来事だ。




『この能力のおかげで壊斗も救えたし私この能力に感謝してる。

"逆再生(リスタート)"って言うんだよこの能力。造瑠くんも"造形変化(マターメイク)"って名前付けてるし私も名前つけたんだー』



そう言ってニコっと彼女は笑った。



(可愛い...)



そんな彼女の横顔を見ながら僕らは帰宅道を歩いていた。




『ねぇ、壊斗。』



『どうしたの鏡花?』



『そこの公園寄ってかない?久々にブランコ乗りたくなった』



『唐突だな(笑)。別にいいけど…』




そう言うとやった。と嬉しそうに公園目掛けて彼女は走っていった。




夕暮れ時だった...



夕日に照らされて黒い影が2つゆらゆらと揺れていた。



(こんな穏やかな時間がずっと続けばいいのに...ずっと平穏であったかい毎日が...)



そんなことを考えながらユラユラ揺れる自分の影をぼんやりと眺めいた。



『ねぇ、壊斗...』




沈黙を裂くように鏡花が口を開く。




『別に私は壊斗がBランクのままでも気にしないよ。昔からずっと一緒だし、これからもずっと一緒だよ。だから自分がBランクだからって私と距離とか置かないでね。約束だよ』




心を読まれたような気がした。




確かにそうだった。自分はBランクだから彼女には釣り合わない、一緒にいる価値はないとさえ思いかけていた。




鏡花とは幼馴染。それ以下でもそれ以上でもない。



けどそう思っていたのは僕だけだったらしい...。




『フフッ...分かった。約束するよ』




軽く笑いながら僕は彼女にそう告げた。



『さて、帰ろ壊斗。』




ブランコから降りて軽くスカートを叩く。彼女はそのまま僕から離れていった。その時だった。




『鏡花ァ~、俺をフっておいてそんなBランクのクズと一緒に居るとか泣けてくるなおい。』



その声が聞こえた時だった。鏡花が何者かに後ろから取り押さえられた。



『何するのよッ!離して!』



『嫌なこったな、俺の女になるなら離してやってもイイけどなぁー』



『なる訳ないでしょ!いいから離しなさい!』



『なんだ、ダメか。ならしょうがないな...』



男がニヤリと不敵な笑みを浮かべた。嫌な予感がする。



走れ、鏡花を守れ!!



本能がそう告げた。



『やめろぉぉ!!鏡花に手を出すな!』



そう叫び地面を蹴り走り出す。右手に力を込めて拳を握る。



男との距離が近づく。残りあと5歩くらいの距離だ。その時だった。



ゴスッ!!



鈍い音と共に自分の腹に物凄い衝撃を感じた。



『なっ...ん...で』




あまりの衝撃でその場に崩れ落ちる。



『能力。"物体移動(オーガオペレーション)"

俺が動かしたいと思った対象物を自在に操る能力だ。俺の能力でそこにあった大きめの石をテメぇにぶつけたってわけよ。』




直径20cmくらいある石が目の前に転がっていた。恐らく俺に勢いよく飛んできたんだろう。そんな物をまともにくらったらんだ。この痛みも納得する




『鏡...花...から...離れろ』



掠れた声でそう呟く。痛みに耐えながら鉛のように重たい身体を起し、再び男目掛けて走り出す。




『渋てぇな...もう一発喰らっとけ!』




男が再び能力で石を飛ばしてきた。



だか、甘い。目視で確認できる速度だ。これなら!



石が目前まで迫った刹那、身体をくねらせて紙一重で石を交わす。



男はすぐそこだった。迷うことは無い。



右拳に力を入れ思い切り振り抜いた。僕の右拳は見事男の左頬を打ち抜き、その衝撃で男がよろける。



すかさず右足を上げ足の裏で男の腹を蹴り飛ばす。それと同時に鏡花を抑えていた左腕を解き彼女を救出した。




『てめぇ、Bランクの癖にAランクに逆らうとかいい度胸してるじゃねぇか。

いいだろう格の違いって奴を見つけてやるよ』




ニヤリと笑いながら男は再び能力を使う。




『アンタも懲りないな、その能力は見切った』




『それは移動する物体が岩だったからだろ?これならどうだ?』




男がそう言うと同時にゴゴゴッと地響きがした。



なんだ...つぎは何を...




『壊斗後ろっ!』




鏡花声に反応しすぐさま振り返る。視界に映ったのは根っこごとごそり抜けて宙に浮いているこの公園で一番大きな杉の木だった。




『これはお前も避けられないだろ、覚悟しろ』




その瞬間、放たれた矢の如く木がこっちに真っ直ぐ突っ込んできた。




...不味いな










あれ、地面と空が逆さまに見える...




気がついた時にはもう遅かった。僕の身体は宙を舞っていた。杉の木をモロにくらい吹っ飛ばされていた。




そのまま地面に叩きつけられ背中を強打した。杉の木をくらった衝撃と地面に叩きつけられた衝撃で身体中に激痛が走る。




やべぇ...骨2、3本折れたかも




『無様だな、能力者に勝てるわけないだろ?そのまま死んどけ』




男がそう告げると再び杉の木が僕の視界に映った。



あぁ、死ぬのか...クソみたいな人生だったな...能力も開花せずにAランクになれないなんて腹立たしいな...




僕は死を覚悟して、目を閉じた。その時だった。




スパンッと何か切れる音がしてズドオォンンと何か巨大な物が崩れるような地響きが聞こえてきた。



恐る恐る目を開けるとそこにはでっかい剣を持ったアイツが立っていた。




『ヒーローは遅れてやって来るもんだろ?またせたな。造瑠様の登場だぜ』



『ッフ…頼んでないよ』



『ひでぇな!せっかく助けてやったのに!感謝くらいしろよ!』



『悪かったって、ありがとう』



『立てるか?』




そう言うと造瑠が手を伸ばしてきた。僕はその手を取って痛む身体を無理に起こす。



『せっかくかっこいい剣持ってるのに悪いがその剣鉄屑に変えてくれ、あの男の能力で操られるぞ』





わかった。と頷き大層立派な剣は見るも無残な鉄屑に成り果てた。



『んで?勝算はあんのか?』



『ある。能力は見切ったし大きな木や物体はほとんど見当たらない、それにお前もいるしな』



『そんだけ自信があるなら行くぞ!ただし鏡花ちゃんに身体を戻してもらってからだ。鏡花ちゃん』



『うん!"逆再生(リスタート)"』





いつの間にか鏡花が後ろに居た。暖かな光が僕を包み込む。身体の痛みは和らいでいき僕の身体は元に戻っていた。




『さて、覚悟は出来ているか!クソ男』



『いい加減うぜぇ、消えろ!"物体移動(オーガオペレーション)ッ!!"』




先程切断した杉の木が2本同時に真っ直ぐこちらに向かってくる。





やはり予想通り...あいつの能力は多分自分の手の延長線上にあるなんらかの物体を一定方向に動かすだけの能力、最初の石も杉の木も真っ直ぐにしか飛んでこなかった。


それに本気で僕らを殺す気ならもっと大量の物体を飛ばせばそれでカタがつくはずそれをしないということは恐らく動かせるのは最大二つまで。



『造瑠!奴は一定方向にしか物体を動かせない!お前は"物質造形(マターメイク)"で木を木片に作り替えろ』



『くっ、何故バレた!?』



『その様子だと僕の考えは案外間違ってなかったみたいだな。造瑠やっちまえ!』



『あいよっ!』





そう叫ぶと造瑠が前に出る。



ガバッと両腕を広げて飛んでくる2本の杉の木のを手のひらで受け止める。いくら二つに切ったとは言えまだ結構な大きさはあるけど大丈夫か...?






ザクザクザクッ!!!






ほらみろ!細かい枝とかめっちゃささってるじゃないか!!





『いってぇええ!!!クッ、"物質造形(マターメイク)ッ!"』





痛みに苦しみながらも造瑠は一瞬にして木を木片に作り替えた。





『お、おい大丈夫か?』



『だ、大丈夫だ!速くそいつを倒してこい!』



『任せろ!』




そう叫び、つま先に力を入れ地面を蹴り、走る。





『クッ、クソ!"物体移動(オーガオペレーション)!"』



『くどい、見飽きた』





真っ直ぐ石を飛ばしてくるが目線や手の位置から飛ばす方向はおのずと予測できる。


首を横に倒し意思をかわす。





『能力に依存しっぱしのアンタが僕に勝てるわけないだろっ!!』




右手に力を込める。精一杯の力を込め全力で振り抜く。



僕の右拳は男のアゴを直撃し、その衝撃で男はその場で崩れ落ちる。



『くっそ、BランクがAランクに逆らったらどうなるか...9階層担当の十死弾が黙ってないぜ...せいぜい死なない事だな...うっ』





男は最後にそう言い残し気を失った。





(十死弾がこんなガキの喧嘩に首を突っ込むわけないだろ...)





『壊斗!やったな!ぃっちち...』



『あぁ、ありがとうな...って言うと思ったか!バカ野郎!あんなでかい木ちょっと触れて"物質造形"発動させればよかったのに』




『いや、なんか真正面から受け止めた方がかっこいいかなって...テヘペロ』



『可愛くねぇんだよ!あーもう鏡花、わりぃこのバカの手治してあげて』



『はぁ!?誰がバカだ!バカって言うやつがバカなんだよ!バカ!バーカ!』



『はいはい、造瑠くんも壊斗もそのへんにしときなよ、じゃあ治すよ"逆再生(リスタート)"』





優しく暖かな光が造瑠の手を優しく包む。造瑠のボロボロだった手のひらはみるみるうちに元に戻っていく。




『相変わらずすごいな、ありがとう鏡花ちゃん』



『どういたしまして、さぁ帰ろ』



『だな。鏡花、造瑠帰えろぜ』





うっしと言いながら立ち上がって公園を後にしようとする時だった。とその時...





『おいガキ、なんか忘れてないか?』





聞き覚えのない声が聞こえた、その刹那身体に何らかの衝撃を感じ気がつくと公園のブランコの柱に背中を打ち付けられていた。




『くっ、はっ..』





視界が眩む。重たい瞼を持ち上げ周りを見渡す。目の前には漆黒の制服に身を包んだ茶髪のおっさんが立っていた。見た目は30代前半くらいか。漆黒の制服の胸には十死弾のエンブレムのバッチが付いていた。何故僕は吹っ飛ばされてたのか、何故十死弾がいるのか状況を整理していこう。



だが、そうさせまいと言わんばかりに

この男が口を開く。





『お前アレだろ、十死弾はガキなんか相手にしないとかそう言う考えだったろ?甘ぇーよBランクは男だろうと女だろうとガキだろうとジジぃだろうと...


楽園には必要ねぇんだ。


Aランクに逆らう奴は尚更な。破村壊斗、お前は執行対象だ大人しく死ね』





執行対象?僕がか?





『冗談じゃないッ!!僕は誰よりも優れた知能を持っているんだ!学園の奴らも僕の頭脳には敵わない!能力が無いだけで...僕はッ...こんなの間違ってるッ!』



『いい事教えてやるよ破村、それは言い訳だ。SI-DOも開花できない人間がSI-DOを開花して能力者になった人間より優れていると思うか?


答えはNOだよ


だからお前はここで死ぬ。死ぬ前に冥土の土産だ...聞きたいことあったら言ってみろ全部答えてやる』




そう言うと男はタバコを取り出し吸い始めた。周りに白い煙が立ち込める。

大人の余裕と言うのか自分に絶対的な自信があるのか。今の所僕を殺すことはないようだ。



僕は口を開いた。




『聞きたい事は3つ。一つはアンタのプロフィールだ。』



『OK。

俺は黒の十死弾、九城炎魔(クシロエンマ)の親衛隊隊長。九瀬徹(ココノセトオル)だ。』




すぅーと口から煙を吐き再び火のついたタバコを咥えた。タバコを咥えたままで喋り始めた。





『んで、二つ目は?』



『アンタの能力はどんな能力なんだ?』





暫く沈黙が続いた。



流石に答えてはくれないか...まぁ当たり前..『大砲だ、掌から大砲をブッパなす能力。弾は気弾とかそういう系』



言うのかいッ!





『俺はこれを"掌の砲台(ハンドキャノン)"と呼んでる。さぁ最後の質問はなんだ?』





僕はふぅーと軽く息を吐き真っ直ぐ相手の目を見つめる。そして少し間を置いて口を開く。





『アンタを...ぶっ殺す方法』



『プッ、ハハハッ..面白いこと言うじゃねぇか。けど悪ぃな今のお前には万に一つも勝ち目はねぇよ。

死んどけ』





徹のおっさんはスっと右手を構えた。バンッと激しい音と共に見えない衝撃が僕を襲った。身体は衝撃で後方に吹っ飛び2、3度地面に叩きつけられた。




身体が軋む。色々な所から出血している。かろうじて立てそうだが...もう戦う力も残ってない。死ぬのか。つまんない人生だったな...



絶望が僕を襲う。意識が薄れていく。





僕は......








目が覚めるとそこは真っ白な部屋だった。



僕はその部屋の真ん中で黒い椅子にすわっていた。





『...今朝の夢と同じ。ここはあの世か?』



『違うよ、まだ君は死んでない』





気が付くと僕と同じくらいの背丈の少年が目の前に立っていた。



黒いパーカに黒いGパン、あぁ、また君か。



黒い少年はゆっくりと話し始めた。





『君は平穏に暮らせればそれでよかった。けどAランクのクズに逆らったがばかりに十死弾に殺される訳だ。そして平穏な暮らしは二度と帰って来ない。



哀れなものだ。



そこで聞きたいんだけど君はどうしたい?』



『僕は知能が高くなんでも出来るから生きていけると思ってた。



けど違ってた...



能力者には勝てない。



僕らBランクは一生Aランクに支配されて生きていかなきゃ行けない。



そんな世界...



そんな世界なら僕が...



僕がぶっ壊してやるッ!!!』



クスっと笑うと黒い少年は嬉しいそうに僕に近づいてきた。そうして僕の胸に手を当ててくる。




『君の覚悟、しかと受け取った。僕は君のSI-DOだ。君の覚悟に答えて開花することにするよ。さぁ受け取っておくれ』





彼がそう言うと白い霧になった。



やがてその霧は僕を包み込み、霧は僕の胸に吸い込まれていった。





これが君の覚悟に相応しい能力。





破村壊斗。君の能力は...





"世界をぶっ壊す"能力だ。





さぁ、行こうか。





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