第5話「スピカの能力」
スピカの衝撃のシーンを目撃してから数分後、俺らは血とか言葉にならないほどグロい死体がある所から少し先に進んだ、なんかちょっと広い空間の隅に、スピカと並んで座っていた。ほぼ密着状態で。
本当はもう少し離れて座っていたいんだが、スピカより先に、地面に腰を下ろしてしまった時点で、もうすでに遅かった。スピカはさも当然のように、俺の隣に遠慮なく座った。いやもっと遠慮してくれて構わないんだよ?
まあ幼女なんぞに遠慮なんてないか。だがこのままじゃ、精神が全く休まらないんだが。当のスピカは、まだエネルギーが有り余っているらしく、俺の横でしきりに体を揺らしている。
「な、なあ、スピカ、あれって、何なんだ?」
スピカが何も喋らなくて、何だか辛かったので、俺は恐る恐る、スピカに聞いて見た、本当のところ、スピカは一応、俺の妹ということになっているので、俺がスピカを怖がる理由はないのかもしれないが、やっぱりあんなのを見てしまったら、こんな可愛いスピカでも、魔獣レベルで怖い。
「あー、あれー?あれは確かー。《結晶》と《破壊》だったかなー。」
また、誰かに聞いた単語をそのまま行っただけな感じで、スピカは答えた。
「それって、何なんだ?」
俺は続けて問う、破壊なんて幼女に似合わぬ物騒なのもを聞いてしまったからには、もう全部聞き出してやろう、と俺はそう考えていた。相手のことを知るのは大事なことだからな、ってアホ師匠も言ってたしな。
「えっとー、左手でなぞったものは右手で壊せるよー?それより休憩まだするのー?わたしそろそろ出発してもいーと思われるんだよー。」
何だか変な言葉使いは気にしないとして、まだここで休み始めてから5分も経っていないんだが、俺とスピカでは時間の流れ方が違うらしい。そしてさらっと物騒なことを言ってくれた、何だよそれ、俺はもう、考えるのをやめたくなってきた。だが、もう少し聞いておきたい、だってな、今の説明じゃ、その能力が凄まじい事しか伝わってこなかったからな。
「もう少し、話していかないか?」
「えー、そんなの外に出でからいくらでもできるじゃん!」
じゃあ外に出るのもいつでもいいじゃん。と言いたいところなんだが、スピカがはさっさと外に出たいらしい。俺は結構真面目な話をしたいんだが。どうやら休憩はここまでらしい。スピカはすでに立ち上がり、出発する気しかしない顔で俺の顔を見ていた。俺は死にたくないので、全体的に重い体をスピカのために頑張って起こした。
「ほーら早くー、外の世界が待ってるぜー。」
そんな、少し背伸びしたようなことを言いい、愛くるしい笑顔でくるくる回っているスピカ。
この調子なら、俺は殺されないか。
なんてひっそりと安堵しながら、一応ギウスの冥福を祈り、俺はスピカの小さい背中を追う。
俺の中に生じている疑問、何故スピカはあんな場所に一人でいたのか、何故あんなヤバイ能力を持っているのか、何故、ギウスを殺すのに、
一切の躊躇もなかったのか。そして、何故俺は、兄になったのか、疑問は多いが、今はただ、外に出たがるスピカを追った。本当に、さっきのことなんて夢だったんじゃないかと、俺は思う。それぐらい、ありえないんだよなあ。
ーーー
そういえばギウスの死体、あのバラバラの感じ、どこかで見たことがあるような…。