第15話「城内に響く轟音」
太陽は沈み、月が昇る頃。
王城は休む事なく厳戒体制が取られ、万が一の危険に備えていた。
だが王城で雇われている兵士たちは、はっきり言ってみんな暇だった。
ここ数年は、城で大きな問題が起きた事はない。皆、平和に越した事はないと思っているが、それとは別に、普通に退屈していた。
「ねえ、そこの兵士さん…寝てはダメですよ…?」
王城の裏口警備の兵士に、黒髪の幼い少女が話しかける。
「……はっ……。えっと……申し訳ありませんシャウラ様!警備をしてる身分で、居眠りなど…」
少女の声で目を覚ました兵士が、慌てて深々と頭を下げる。
「次から気をつけてくださいね…何かあった時、自分のせいで大ごとになったら、とても辛いですから。」
「は、はい!」
少女の名はシャウラ。
この国の最強戦力、毒牙のシャウラ。
今はこうして王城に雇われ、見回りをしている。
見た目は少女だが、かつては血に塗れた戦場を駆け回った経験も有る彼女の言葉は、兵士の心に、重たくのしかかった。
ーーー
「さてっと……。来てみたはいいけど……これをどう攻略しろと…。」
俺はスピカと、王城の裏側から、この馬鹿でかい城を見上げていた。
王の力を示すのに、これほど手っ取り早いのもないだろう。
さっき城の周りを一周してみたが、侵入可能な経路は俺の見立てでは一つもない。どこもかしこも警備兵だらけだからなぁ。
スピカの性格……というか幼さなら、王様をなんとかして、それでどうにかしようと思ってたのだが…。
当然ながら城の警備はガッチガチだ。
「なあスピカ、これどうやって攻める気なんだ?こんな警備の中侵入しても、捕まる気しかしないんだが。」
俺がそう言うと、スピカはニコッと笑って、
「こうすればいいんだよ!」
と言って、左手を城壁に向かって振りかざした。
一瞬にして、城壁の一部が結晶化する。
……ちょっと待て、結晶化ってことは……?
「おい待て!正面突破は流石にマズい…」
俺の言葉は届かず、スピカは躊躇なく、右手を振った。
ードガーーン!!!
と言う、盛大な爆発音と同時に、城壁に穴が空いた。その先では、この辺りを警備してたと思われる兵士の死体が転がっていた。
ーやっちまったぁ……。
これで俺も、立派な犯罪者だ。まあ、元から仕事上ちょいちょい法に触れるような事はして来たが、これはちょこっと規模が違い過ぎる。
「おい!!!なんだ!!!何事だ!!!」
ほら、もう兵士が寄って来た……
せめてなんか仮面でもかぶってくればよかったかなあ。
まあでも、後戻りができなくなった事で、俺の中で、なにかが吹っ切れてしまった。
王様達には悪いが、ちょこっと征服されてもらおう。
俺は背中の剣を抜きながら、心の中でそう言った。