第12話「賢者の予測」
「おいラケル君、テメエ誰がロリコンだって?」
俺は奥の部屋にラケルを連れ込み、速攻で尋問を始めた。
「なんだ、君にロリコン疑惑がかかっているのは事実じゃないか、あーんな完全完璧な幼女を連れていて、よくそんなことが言えるなあ。」
こいつの頭大丈夫か、頭の中偏りすぎだろ。
「いやいやいや、幼女を連れている人間をすぐにロリコン認定してんじゃねえよ。もっと他の可能性も考えて見たらどうだ、お前一応賢者だろ⁉︎」
「いや?普通の人間ならそんな馬鹿みたいな疑惑をかけたりしないさ、かかるのは、君だけだ。」
俺はそっと、背中の剣を抜き、部屋の隅にある明らかに大事そうな箱に向かって、剣を構えた。
「おいちょっと待て、待て待て待て待て待て!落ち着けウィズ!それを斬ろうとするなああああ!」
「お?予想以上の反応だな、じゃあ俺のロリコン疑惑を取り消せば許してやるよ。」
俺はそう言いながらヒョイヒョイと、剣を上げたり下げたりして、ラケルを煽った。なにこれ超楽しい。いつも余裕ぶったラケルが慌ててんの見るのって超楽しい。
「わかったわかった、取り消す!だから剣を下げろクソ馬鹿が!」
「へいへーい。」
これで俺のロリコン疑惑を晴らすことができた。めでたしめでたし。
「まったく……危ないことをしてくれるな……あれ、君の剣が少しでも触れていたらこの店は吹っ飛んでたんだぞ?」
「は?どういうこった、なんなんだよあれ。」
「特注品の地雷魔法陣だ。魔導書の形をしているが、触れると死ぬ。」
なんでそんな物騒なものをこんな簡易な箱に入れてんだよ。下手したら転んだ先にあって自爆とかもありえるんじゃないか?俺は特注地雷の箱を睨む。どう考えても危ないよな…。
「そんなことより、だ。本当にあの子はなんなんだ?君、結婚とかする奴じゃないだろう。」
やっぱりそこに踏み込んでくるか。まあ妥当だろうな。俺だって久しぶり会った知り合いが幼女を連れていたら、そりゃあ何があったのか気になるだろうな。
「ああ、あいつか、あいつは俺の妹だ。」
「はあああああああ⁉︎」
ラケルは咆哮をあげた。まあなんとなく予想していたが、ここまでのオーバーリアクションは求めていない。というか、うるさい。
「おいどういうことだ⁉︎君に妹がいるなんて聞いてないぞ⁉︎というか、君の両親は君が5歳の時に死んだんじゃなかったのか?え?どう考えてもあの子の年齢一桁台だろ?おかしいじゃないか?」
ラケルはさらに叫びながら俺の肩を揺さぶってくる。ちょ、めちゃくちゃ激しいんだが、脳が、脳が揺れる。
「落ち着け、落ち着けって、義妹っていう線を考えろよ!」
「んあ?ああそうか、その線があったな、といっても、やっぱり意味がわからないな、君に義妹ができるような経緯わからない。」
俺の叫びを聞き、ラケルはあっさりと大人しくなった。まあでも、ラケルが驚くのも無理はないか。
「帰らずの神殿で見つけたんだ、あの迷宮隠し部屋みたいなのがあってな、そこにいた。」
「おい、ちょっと待て、帰らずの神殿って言ったか。」
突然、ラケルの声色か変化した。つい数秒前までの賢者とは思えない気楽な口調が一変し、真剣味を帯びる低い声になった。
「あ、ああ。」
「帰らずの神殿って言えば、帰らずの理由と、神殿の秘宝ってのが有名な話だよな。」
俺は無言で頷く。この二つのことは、今更確認することもないいほど、俺たち冒険業をしているものには常識だ。こいつはなにを言いたいんだ?
「ウィズ、これは僕の勝手な予想なんだが、あの子、すごく強かったりしないか?」
「ラケル、お前はなにが言いたいんだ?お前が常人離れした思考回路を持っているのは知ってるが、流石についていけないぞ?」
ラケルが賢者たる所以である、圧倒的思考能力を使っていることはわかった。確かにスピカの強さは圧倒的で、ラケルの言葉に間違いはない。だが、ラケルはそれとは別に、何かを考えている。俺はそう感じていた。
「いや、すぐに説明する、とりあえず君は、僕の質問に、イエスかノーで答えてくれ。」
俺はその言葉を聞き、首を縦に振って、肯定の意思表示をした。
「そう、か。やっぱりだな、迷宮ないであんな幼い子が一人で生きていけるわけがない。さらに言うと、あの迷宮内で、あの子の目撃情報はない、そうなると……。」
ラケルはそこで一息つき、結論を口にした。
「あの子が、帰らずの理由、そのものなんじゃないか?」