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チート幼女の世界征服 -迷宮で見つけた幼女が最強過ぎる件-  作者: 亜蜜絵乃
第1章「幼女は世界を征服するらしい」
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第9話「小さな小さな化け物」

俺はその後、飯を食いそのまま再度寝始めたスピカを横目に、これからのことについて真面目に考えていた。

とりあえず、スピカは完全に化け物だ。あの問答無用に生物を破壊する能力なんて、聞いたことがない。街一つを焼き尽くす魔導師や、城を斬ったとかいう騎士のとかの話は聞いたことがあるが、それは膨大な魔力や、精巧な技術、そして長いモーションがあってこそのものだろうに。スピカのそれは、モーションや技術なんて鼻で笑える程のものだろう。


それだけならいい、ただ膨大な力を持っている、それはいい。問題なのは、スピカが世界征服を目指していることだ。常識なんてまるでないような化け物幼女が、世界を手に入れるために頑張ったら、それはそれは大変なことになるんじゃないか?もしかしたら、この国なんて、簡単に滅びてしまうかもしれない。


俺は、すぐ横で小さな寝息を立てているスピカを見つめた。

ーここでこいつは、殺してしまったほうがいいのではないか。

そんな考えが俺の頭をよぎる。

俺はナイフを取り出そうと、リュックへと手を伸ばす。


「ん、う〜ん。」


「うおっ…と。」


手を伸ばした瞬間、スピカが寝返りをうった。俺はナイフを取り出し損ねた。もう一度取り出し、スピカを殺すこともできたが、今日はもう、そんな気分にはなれなかった。俺はリュックの中から、ナイフではなく寝具を取り出し、そのままスピカの隣で寝た。


ーーー


ウィズとスピカが完全に寝静まった頃、その付近を、三つの影が、二人を狙って近づいていた。

その影は、魔獣ではなく、人間だった。ウィズ達のような迷宮帰りの財宝所持者を襲う、冒険者狩りという名の盗賊、それが今、ウィズ達の寝込みを襲おうとしていた。


「さて、そろそろだな、炎上結界が近い。今日もたっぷり稼ごうぜ?」


「油断するなよ、結果を張っているからといって、弱い奴とは限らない。」


炎上結界というのは、専用の魔力結晶を火の中に放り込むことによって、使用者の魔力消費なしに、魔獣を寄せ付けない結界を張るアイテム。これで、夜の魔獣から身を守る、というわけだ。しかしこのアイテムには、重大な欠点があった。それは、人間には炎の煙で、その場所を特定し、さらには簡単に破ることもできる、それを利用しているのが、彼ら盗賊というわけだ。


「んーっと、人数は二人、ん?一人はめっちゃ小さいなぁ、なんだよこれ。」


盗賊の一人が小さな声で、もう一人に見えているものを伝える。


「そんなことはどうでもいい、俺が聞いているのは、罠がないかとか、そういう事だ。」


「起爆式の術式とか、そういうのは見当たらねえな、結晶も置いてないし。」


いつもなら、起爆式の魔力結晶を置くことを忘れないウィズだったが、不幸にも今日は、置くのを忘れて寝てしまっていた。


「ならいい、いくぞ。」


「了解。」


その声を合図に二人の盗賊は結界内に入り込む。もしターゲットが起きてしまった時のために二人が短剣を抜いた瞬間、


「うーん、だーれー?」


スピカが、目を覚ました。


「ちっ……起きたかどうするよ、子供だぜ?」


「どうもこうもない、見つかった以上、仕方ないだろう。」


そう仲間に言われ、盗賊は片手で持つ短剣をくるくると回しながらスピカに近づく。


「そーゆーこった、悪いねお嬢ちゃん、死んでくれ。」


そう言い放ち、スピカの首に向かって剣を振る。だがスピカは、何一つ気にしていない様子で、剣に向かって左手を振る。


「なっ……⁈」


剣が、盗賊の手首まで結晶のようなのもに覆われる。さらにスピカは、畳み掛けるように、右手で剣にデコピンをした。


「え?何を……ったああああ⁉︎手が…手がないいいいい⁉︎」


盗賊の手首は、剣とともに四散した。突然の激痛に叫ぶ盗賊、だがスピカはさらに追い討ちをかけるように再度左手を振る。痛みに絶叫する盗賊の声が、一瞬にして消え去る。そしてそのまま、スピカは容赦なく右手を振る。


「お兄さんたち、わたしを殺そうとしたわるーい人だね。」


「ぐっ……。」


盗賊の一人はバラバラになった。人一人分の血液が地面に撒き散らされる。残った盗賊は、想定外過ぎる事態に呻き声を上げ、その場から本能的に撤退しようとした。


「待ってよー。」


スピカはそう言いながら、盗賊の肉片を数個上に投げ、左手で結晶化させ、今度は自分の長い髪を持ち、結晶に当てる。空中に留まっていた結晶は、髪に触れたことで、逃げる盗賊に向かって加速する。


「んなっっ……⁉︎」


後ろを振り返った盗賊は、迫ってくる結晶に気づき、驚きの声を上げ、同時にそれを避けようとする。結晶の一つは、盗賊の頭をかすめ、その奥にあった気に刺さる。だが残りの結晶は盗賊の肩と心臓を、貫いた。


「う……がはっっ…」


盗賊はその場に倒れこむ。スピカは苦しむ盗賊の所へ寄っていく。


「もう死んじゃいそうだねー。」


「お、おい。お前は何な…んだ。見たとこ…ろ、只者ではないよう…だが。」


盗賊は、消え入りそうな声で、スピカに問う。

スピカは手に付いた血を舐めながら、笑顔で答えた。


「えっとねー、わたしは、あなたたちが、神殿の秘宝とか、帰らずの理由、とか呼んでいる者だよー。」


「でー、あとは……あれ?もう死んじゃった。まーしょーがないか、心臓潰しちゃったからねー。」


スピカは、なんの感慨もなさそうに、盗賊の死体を後にした。

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