帰り道
九月になったというのに、残暑が厳しい。日中はまだ半袖でも過ごせるくらいの暑さだ。
保育園の門の横で咲きかけているコスモスが風に揺れている。二人の園児がそれぞれの母親とともに門の外に向かって歩いていた。宏幸と彩、二人とも年長組だ。
「母さん、今日ね、僕ね、泥だんご作って遊んだんだよ」
「そうなの。うまくできた?」
「うん。小さいのも大きいのもたくさん作ったよ」
宏幸は母親に今日あったことを嬉しそうに話している。彼が着ている服やズボンは泥だらけだ。
「でもね、僕より彩のほうが上手なんだよ。小さくてきれいなのを作ったんだよ」
宏幸がそう言ったとき、彩は照れたように下を向いた。宏幸ほど汚れてはいないが、彼女の服やズボンもまた泥だらけになっている。
「でも宏幸も上手だよ。いろんな大きさのだんごがたくさんできてたもん」
「宏幸くんはたくさん泥だんごを作ったんだね。彩はきれいな泥だんごができたのね。二人とも上手にできたのね」
女の子の母親は微笑みながら話す。彼女の笑顔の中にはどこか品の良さのようなものが感じられる。
保育園からお互いの家まではそう遠くない。このあたりは閑静な住宅街で、今日もまた穏やかな雰囲気に包まれている。
しばらく歩いて、いつも別れる十字路まで来た。この十字路をまっすぐ行けば宏幸の家、右に曲がれば彩の家へと道は続いている。
「じゃあね、彩バイバイ」
「明日も一緒に遊ぼうね。バイバイ」
二人の園児は、互いに別れを告げて母親とともに家路をたどった。