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第4話 少女の事情 

「一度仮眠を取り、夜明け前に出発する。」



ハヤトの一声により、色々とすったもんだの末、一同は夜明け前に出発することになった。




********





先を急ごうとする王女と思われる少女を宥め、新しい馬を取りに行く間、少女を休ませるという名目のもと、一度、一同は酒場の前に戻った。


ところが、酒場の前で6名分の馬を取りに行こうとするトウマ達を引き留めたのはハヤトだった。


「馬を取りに行くのは、一旦待ってくれ。情報を纏めがてら、とりあえず、それぞれ自己紹介を頼む。一応、戦闘における得意武器なんかも付け加えてくれ。」


ハヤトがそう告げ、酒場の中に入っていってしまった。



勝手なやつだとユウリがぶつぶつ言いながら、全員で中に入りテーブルに腰掛けると、ハヤトが口を開いた。


「俺の名はハヤト。傭兵まがいの事をしながら、各地を旅している。

武器は一通りなんでもこなすが、今のところ、一番愛着があるのはこの大剣だな。

まぁ、護衛なんかも仕事の1つだ。やると決まったからには、今回は王家から稼がせてもらうとしよう。」


ハヤトは、そう告げ、ニヤリと笑いながら、トウマに次の発言を促した。


となりで、こいつ、大丈夫かよと呟くユウリを聞き流し、トウマほ自己紹介を始めた。


「僕はトウマ。この4人の中では最年長だ。この村の長の甥にあたる。戦闘自体はさほど得意ではないけど、得意武器は片手剣になる。」


続いて他の3人も自己紹介を始めた。


「俺はユウリ。得意武器は槍。腕力、素早さ、体力ともにそこそこある。」


「私はエリー。一応、狩りを生業とする家系の都合上、使う獲物は弓だけど、あんまり適正があるとは思ってないわ。正直、素手で戦ったほうが楽よ。それと隣にいるのが妹のカナね。」


「カナは、弓か杖を使います。 それと陰魔法?って呼ばれている魔法を使います。 正直、走ったり、叩いたりっていうのは得意じゃありません。」


エリーとカナは、本来、弓に定評のある家系のはずだが、姉妹揃って、弓の適正は低いようだ。

カナの杖は、術を使えるカナに対し、少しでもカナの魔力の上げられる装備をカナにあげるべく、商業都市からトウマが特別に取り寄せたものだ。


4人が話した後、一瞬、間が空いたことで、全員が王女と思われる少女に注目した。


全員の注目が集まったことで、さらに逡巡する少女であったが、覚悟を決めるになり、一度大きく深呼吸した後に、口を開いた。


「悩んでいてもしかたありませんね。私は、私の命を救っていただいたあなた方を信用することにしました。







私の名はアリス。 現アストレア王家の当主アルトの娘です。 


昨日も、亡き母に代わり、一刻も早く王の補助をできるよう、護衛剣侍女と共に城で鍛錬に励んでおりました。」



「立派な志だが、その割には、その護衛とやらがいないようだが?」


ハヤトが皮肉げに尋ねると、


「昨日、先代の王の弟 父の叔父にあたる者が突如アルト王の側近を次々と捕え、城を占拠しました。


私も捕まる寸前であったところを、護衛であるリアが身を挺して守ってくれ、単身で逃げてまいりました。


一刻も早く反乱を父に伝えねばならないと思い、森を抜けていたところ、馬がバテてしまったのを見計らったかのように、オオカミに追われてしまいました。


この度は、助けていただき、まことにありがとうございます。


また、護衛を引き受けて下さったこと、感謝致します。

この先もよろしくお願いいたします。


しかし、事は一刻を争います。一刻も早く、出発させて下さい。」


アリスがこう告げ、トウマ達4人が頷いたところに、ハヤトが待ったをかけた。



「まあ、待て。事情はよくわかった。 しかし、アルト王は相当優秀だという噂だったが、内側にそのような火種があるにも関わらず、こんなにわかりやすい隙を作るとは、噂はしょせん噂か。


いや、もしかして・・・」


後半は、完全に独り言だったようで、ハヤトの言葉をトウマは最後まで聞き取れなかった。



悩み顔で斜め下を向くハヤトに対し、ユウリがじれったそうに声をかけようとすると、突然、ハヤトが顔を上げて一同に告げた。



「一度仮眠を取り、夜明け前に出発する。」



この発言に、アリスはもちろんの事、トウマ達も驚いた。



「なにを悠長なことを言ってるんだよ。 早くアリス様の親父さんに反乱の事を告げないと、間に合わなくなるかもしれないだろ!?


もし、反乱のせいで、親父さんが無事で済まなくなったら、褒美が貰えなくて困るってい言ってたのはお前じゃねぇかよ。」


と、ユウリが早口で捲し立てるも、


「そちらのアリスは、確かに強い意志でもって前に進もうとしている。 しかし、こんな幼い少女が、単身で夜道の森を抜けてきたんだ。


本来、舗装された道を隊列を組んで行けば、3,4日はかかる道のりだ。相当急いで走ってきたのだろう。


馬だけじゃなく、姫さん本人も疲れている。


途中でバテられて、モンスターに囲まれたんじゃ、助けるのもの助けられん。


それに、夜中にアルト王の陣営についたところで、夜襲を警戒している陣を無駄に混乱させるだけだ。


夜明け前、雨が止んでからこちらを出発し、昼前にアルト王の陣営に着くことを目標とする。


俺の意見が気に入らなければ、俺は護衛を引き受けん。好きにするといい。」


と、ハヤトは言い切った。



困惑する一同だったが、


「僕とユウリも、嵐の中の見回りの後に、オオカミとの戦闘があって疲れているんだ。


ここはハヤトのいう通り、一度休んでから出発しよう。」


あれだけの実力者で、経験豊富そうなこの人が言うのだから、何か考えがあるのだろうと思いながらトウマが告げると、一同は渋々頷いたのだった。

今回は短めです。


次回、森の中のシーンに入ります。

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