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第3話 護衛の仕事は金次第

「馬を貸して下さい」



先ほど、オオカミに追われていた少女は、開口一番にこう言い放った。




********



オオカミを倒した事を安堵し、後方を見やると、後ろから追いかけていたと思われるカナと、その後ろに、馬から降りた少女がいた。


先ほどは、一瞬すれ違っただけなのでわからなかったが、よく見ると、下手したらカナより年下ではないかと思われる幼さだった。


馬がよほど限界だったのか、思いのほかすぐ近くで座り込んでしまっており、少女も茫然とした表情で立ちすくんでいた。


真っ先にユウリが少女に駆け寄り、そのあとをトウマとエリーが追いかけた。


ユウリが少女に向かって、「大丈夫か? ケガはないか?」と尋ねたところ、少女は、はっとした表情になり、遅れて冒頭のセリフをトウマに向かって言い放った。


トウマが身に着けているものや年齢から、真っ先に話しかけていたユウリではなく、トウマに話しかけてきたのだとトウマは判断した。


少女は、自分にセリフに再びはっとなり、


「助けてもらったお礼も言わずに申し訳ありません。先ほどは助けて頂きありがとうございました。あいにく、持ち合わせがほとんど無いので、大したお礼はできませんが、追って改めてお礼に伺います。


しかし、今は、急がなければならないのです。 お礼も出来ずに、さらなる貸しを要求することになりますが、出来れば馬を貸して頂けますでしょうか。


ご覧のとおり、私の馬は、道中で疲れ果ててしまい、これ以上連れて行くことは出来ません。 急ぎ、森を抜けもう一山越えるために、どうしても馬が必要なのです。」


と早口で捲し立てる。


少女の言葉に、トウマではなくユウリが答えた。


「お礼なんて別にいいよ。 お礼欲しさに助けた訳じゃないんだからさ。 それよりも、困っているなら、事情を聞かせてくれないか?

今は嵐だからモンスターも少ないけど、この辺りは決して安全ではないし、俺らで力になれることなら手伝うよ?」


ユウリの発言に少女がどう答えたものか悩んでいるところに、いつの間にか近くに来ていた大剣の男が答えた。




「やめておけ。そもそもこんな嵐の中で、こんな子供がこんな場所にいる時点でロクでもない事態なのは間違いない。


それに、着ている服の素材が一般家庭にあるようなものじゃない。一般家庭でもなく、そのくせこんな幼い女が乗馬の教養がある時点で相当な位のお嬢様だろう


そういえば、つい先日、先代が病死して即位したばかりのアストレア王が、この山の向こうに大量発生したインプの討伐に向かったらしいが、アストレア王は大変優秀な代わりに改革派として知られているがゆえに、古い重鎮たちとソリが合わないらしいな。王都で不穏な動きでもあったのだろう。


そのアストレア王の娘が確か15歳くらいだったはずだ。」



なぜそれを!?と言わんばかりの少女の表情に、ユウリがトーンを上げて話し出す。



「王室のお嬢様ならなおさら助けなければいけないだろう! おい、あんた! そこまでわかっていてなぜ助けようとしない!!」



大剣の男は静かに言い返す。


「この世の全員が善人だと思うなよ。 見たところ、その娘は本当に今は大したものは持ってなさそうだ。 


俺はタダ働きはしない主義でな。


たしかにアストレア王の娘を助けたとあれば、確かに褒美は良さそうではあるが、それはあくまでもアストレア王が王都で起きたであろうと思われる反乱を抑え込めた場合に限りだ。


散々手伝った挙句、タダ働きになったら、目も当てられないぜ。」




大剣の男の話は、存外にアストレア王が王都に戻ってこれない可能性を仄めかしており、王女と思われる少女は俯いてしまう。



大剣の男はさらに続ける。


「それに、ここ最近は、モンスターや野生の獣の活動が活発になり、以前よりも強い個体が発見されるようになったと聞く。


先ほどのオオカミが良い例だ。


もうすぐ、嵐も過ぎ去りそうだ。 今すぐ出たって、山を超える前に、寝起きで空腹のモンスター達に囲まれるのがオチだぜ。


お前たちは、ここでひと悶着が収まるまで大人しく待ってて、アストレア王の器量に任せた方がよっぽど確率は高いんじゃないか。」



お前らはここを動くな と語る大剣の男に対し、ユウリが感情的に反論しそうになるが、トウマがユウリを目で制し、ユウリが口を紡ぐのを確認してから、大剣の男を見据え口を開いた。



「確かに、このあたりは、本来、比較的穏やかな地区ですが、最近では、モンスターの出現率も上がっていると聞きます。


オオカミ1匹倒せない私たちでは、整備が行き届いていないこの山を越えることはできないかもしれません。


しかし、あなたがいれば別ではないでしょうか?


先ほどの戦闘の内容は見られませんでしたが、あっという間に2匹を屠ったあなたの実力は、その立派な大剣と相応なのでしょう。


タダ働きはしないとのことですが、ウチの村の特産品は如何です?


なにもない村に見えますが、酒と家畜はなかなかの物ですよ。


酒と肉は、あなたが食べても良し、街に戻って売っても良し、上等な馬は連れて行っても困ることより得することの方が多いと思います。」




トウマの発言に先に反応したのは、大剣の男ではなく、ユウリだった。


「おい、トウマ、なんでこんな得体のしれない男にそこまでしなくちゃならないんだよ!?


こんな金目当てのやつ、放っておいて、俺たちだけでも王女様を助けようぜ?」



捲し立てるユウリを制したのは、トウマではなくカナだった。


「ユウリ、動かないで。」


カナはユウリの動きを制し、ユウリがオオカミにやられた左肩に手を当て、周りには聞こえない程度の声で小さく呟いた。


すると、ユウリの肩のキズがあっという間に回復していく。


ユウリがカナに 「ありがとう」と告げると、大剣の男が、珍しく驚いた表情で呟いた。


「それ、回復魔法だけど、陰系統か?」


急に自分の事を触れられたカナは、一瞬驚いた顔になり、俯きながら小さな声で返事をした。


「そ そうです。 魔法に関する適正が高いみたいで。トウマの本でしか知識は無いし、使えるのは陰魔法だけなんですけど・・・」


カナの返事に、大剣の男は、さらに驚いた表情になった。


「そうか。さっきの戦闘でも術の気配がした時、てっきりそっちのお坊ちゃんだと思ったが、そちらの御嬢さんの方だったか。


いまどき、街の術屋に行けば、術を覚えるのは難しくないから、陰魔法自体も珍しくはないが、陰魔法を独学で使えるのは聞いたことがないな。」


大剣の男の独り言のような呟きに、トウマが答える。


「僕も魔法の適正は低くないみたいですけど、カナみたいに独学で使えるほどの才能はないみたいです。


今度、街に行ったときにでも、覚えようとは思ってるんですけどね。


それよりも、先ほどの条件で、お嬢様の護衛は如何ですか?」



大剣の男は、 フンッと鼻を鳴らした後、ぶっきらぼうに答えた。


「そっちの喧しい坊やの言う通り、こんな得体のしれない男を王女様の護衛にしちまっていいのかい?


それに、特産物の話、お前の独断で決められるのかよ。」


「特産物の話は、僕が話せば問題ありません。


それに、王女様と思われる悲鳴が聞こえたとき、真っ先に外に向かった走っていった貴方を、僕は信用することにしました。」


相手を安心させるためか、トウマはにっこりと笑いながら大剣の男の問いに答えた。






しばらくの沈黙のあと、大剣の男は呟いた。


「ハヤトだ」



トウマは、それが名前を告げられたのだと理解するのに数秒かかった。



続けて、ハヤトと名乗った男は告げた。


「いいか、ピクニックじゃないんだぞ。


命が惜しければ、俺の言うことをちゃんと聞け。


俺の言うことを聞かないやつは置いていくから、そのつもりでいろよ。」



ユウリが、何を偉そうにとか、ブツブツ言っていたが、実力は認めているのか、大っぴらに反対はしなかった。


どういう事情で、これからどうなるのか、全く見当もつかないが、ひとまず戦力的にはなんとかなりそうだと思い、トウマは安堵の溜息をついた。

今までに比べ少し長くなりました。


次回もまだ会話パートが続きます。

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