漆、山街。
遅れました。
「ぬう」
どうも、嫌な予感から逃げれたは良いけど山の中で迷子、僕です。
この身体、本当に無茶苦茶です。
殴れば木は折れ、跳べば山を越し、暑さも感じず、素手で崖に穴を開け.......
神は優しすぎますな。腕も脚も復活させた上でこれほどの.......。
まあそんな感じで楽しくやってたんですが、はい、迷子です。否、遭難です。
せめて集落ぐらいありませんかねえ、人間の気配すらしません。
南の島よりひどいですね、あっちは敵とは言えど人はたくさん居ましたから。
腹は減らない、眠くならない、特に疲れもしない。あんまり困って無いんですよねえ。
いっそ自然に囲まれて暮らしてみますか。木の実もありそうですしね。
まあ面倒な気がするのでしませんが。
にしても、本当に人間じゃ無くなったみたいですね。もう七日間くらい歩きっぱなしなのですが、全く問題が発生していません。脚が壊れる事も無いという。
ビーッ
音が鳴りました。
何か踏んでしまったのでしょうか?でもこの音は.......
「掛かった!帝国兵だ!」
「囲め!」
やっと人の気配がしたと思えば、何だか火縄銃を向けて来ました。
火縄銃を向けた人達は、小柄で毛むくじゃらの老人の様な人達でした。
変な格好な上に敵意ありすぎですね、ここらへんの人は皆物騒ですね、こいつらも妖怪ですかね?
というか火縄銃って時代おかしくないですか?暴発しやすいと聞きますが?
「貴様に恨みは無いが、部品を頂こう」
「隊長!準備できました!」
「よし、撃て!」
どん、と派手な音の後、僕に真っ直ぐ弾が飛んできます。
これ全部頭に向かって来てるんですけどどうしましょう。
「やったか?」
カンッ
乾いた音がして、弾が落ちました。
どうやらこの身体は弾丸も弾くらしいです。これは酷い。
「なん.......だと?」
「ちぃ、帝国兵共は化物か!?」
「逃げろ!急げ!」
その一声で皆一斉に駆け出します。
逃げ足が非常に速く、目的地がしっかりしているというのが判断できます。
.......追いかければ町か何かに着くのでは?
走って追いかけます。この身体は疲労が無い様なので、何処まででも行けます。
思いっきり踏み込ん
地面が抜けました。
「?」
落下していきます。
空はどんどん遠ざかり、やがて視界が開け、地下に見えたのは
街でした。
天の川の様な物がキラキラと街の中を流れ、列車が走り、至る所から蒸気が上がっています。
地下だというのに畑の様な物が見え、天の川のお陰か明るく、電気が通っていました。
間違いなく、街でした。
「へ?」
僕はある家の屋根をぶち抜いて、着地しました。