0.プロローグ
____魂たれ、魂たれ
朝の清々しい陽光の注ぐ場所で、遠くから、そんな声が聞こえる。
いつもは鳥たちの声が聞こえるのだが、今日は不思議と聞こえてこない
____魂たれ、魂たれ
同時に聞こえる、カーンと金属を打つ音。
この辺りには、工場等は無かった筈だ。
____魂たれ、魂たれ
頭に直接流れ込む、この言葉。
目も、口も、腕も、脚もつぶれた今、使えるのは、耳しか無い。
そこに、ずっと、途切れる事も無くその言葉は流れ込む。
____名付けよう
それは、自分に語りかけている様だった。
まるで、可哀想な子供を宥めるような声。
潰れ、見えなくなった目に、大きな光が広がる。
____貴様の名は.......
七十年前のあの日々、いつやって来るのかと、怯え続けたそれ。
遂に来たか、と、僕は安堵の息を漏らそうとするが、息を吐く口はもう無い事に気付く。
長く、何も成せなかった人生だった。
看取る者も居ない、大勢を殺して来たのだから、当然の結果だろうか。
来世があると言うのなら、平和で、静かで、豊かで.......
____クロガネだ。
そして、お迎えがやって来た。
どうなっても知らん